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久しぶりの領地 その1
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「やっと帰ってこれた……!」
アルスは領地の屋敷に着いたばかりの馬車から降りると、清々しい笑顔で言い放つ。
王都を出発してから丸三日かかり、ようやく到着したアルザニクス家領地にある屋敷。
行きの時とは違い、仲間が増えたこともあって賑やかな帰り道となったが、馬車の中では特段何もすることは無く、強いて言えば、領地に帰ったら何を始めにするかを明確に順位決めしたくらい。
これでやっと、領地強化に移れる……
アルスは領地の土を踏みしめながら心の中で呟く。
長かった王都滞在。
お父様との再会から始まり、エバンとお父様の衝突やミネルヴァさんやニーナとの出会い。他にも襲撃で命の危機を脅かされた事もあったな。
そして……
アルスは漆黒の長髪を揺らし、天使のような微笑みを浮かべるアメリアの顔を頭に浮かべる。
……ああ。やっぱりこの世界に来れてよかった。
これまでの出会いや出来事を思い出し、改めてこの世界に転生できたことを感謝するアルスであった。
「アルス? 何をしているんだ?」
馬車の近くで笑みを浮かべながら、クネクネしていたアルスを見つけたキルクが声をかける。
「あ、キルク王子……」
現実に戻されたアルスは恥ずかしさと焦りを押し殺しながらキルクの名前を呼ぶ。
襲撃の際にキルクを救ってから、何かと絡まれるようになったアルス。
馬車で移動の際にも突然アルスが乗る馬車に現れ、話を長時間する事もあった。
それからだよな……
キルクはムスッとした表情を浮かべ。
「む。王子は余計だ。前みたいにキルクと呼んでくれ」
アルスを戸惑わせる。
「いや、それは……」
そうこれだ。
事あるごとに名前呼びを強要させようとしてくるキルク王子。
襲撃された時のアルスには名前を気にしている余裕はなかった。その為、半ば無意識にキルクと呼び捨てにしていたアルスであったが、平常時となれば話は変わる。
キルク王子相手に呼び捨てだと?
相手は王族。いくらアルザニクス家が高位の貴族家だとはいえ、王子であるキルクを呼び捨てになど出来る訳がない。どこに他人の目があるか分からないからな。
アルスは今一度、自身の中で呼び捨ては出来ないと判断し。
「私は貴族であり、キルク王子は王族。いくら何でも呼び捨ては……」
「……駄目か?」
くぅ……。
キルクから放たれる可愛いオーラ。
またこれだ……
そこらの女などまったく相手にならないほど、何かが完成している物凄いオーラ。
キルク王子は俺に呼び捨てをさせようとし、色々と策を練ってこれまで仕掛けてきたが、自分が劣勢だと分かるとこの様に自分の容姿を盾にして攻撃をしてくる。
アルスは咄嗟に手で自分の視界を遮り、物理的にオーラを遮断する。
「い、今は……」
あっ、やべっ。
アルスが咄嗟にかけてしまった言葉をキルクが耳にすると。
「っ! 今はって言ったな! 分かった! 次に期待している!」
目を輝かせ、言いたいことを言うと、ウキウキした足取りでその場を離れていこうとする。
そして、足を数歩、進めた時。
「あ、そう言えば……」
どうしたんだ?
アルスから離れていこうとしたキルクが突然振り向き。
「これを渡すのを忘れていた」
「これは……」
キルクの手に見えるのは紐が切れたお守りのようなもの。
それを目にしたアルスはなくした物が見つかった時のような表情をする。
「アルスが倒れていたその場に落ちていたものだ。もしかしたらと思って今まで持っていたのだが……」
そのお守りをキルクは大事そうにアルスへと渡す。
「キルク王子が持っていてくれたんですね。ありがとうございます」
こんな所にあったのか。
アルスは右手に嵌めた鑑定指輪を意識しながらそのお守りを握る。
アルスは領地の屋敷に着いたばかりの馬車から降りると、清々しい笑顔で言い放つ。
王都を出発してから丸三日かかり、ようやく到着したアルザニクス家領地にある屋敷。
行きの時とは違い、仲間が増えたこともあって賑やかな帰り道となったが、馬車の中では特段何もすることは無く、強いて言えば、領地に帰ったら何を始めにするかを明確に順位決めしたくらい。
これでやっと、領地強化に移れる……
アルスは領地の土を踏みしめながら心の中で呟く。
長かった王都滞在。
お父様との再会から始まり、エバンとお父様の衝突やミネルヴァさんやニーナとの出会い。他にも襲撃で命の危機を脅かされた事もあったな。
そして……
アルスは漆黒の長髪を揺らし、天使のような微笑みを浮かべるアメリアの顔を頭に浮かべる。
……ああ。やっぱりこの世界に来れてよかった。
これまでの出会いや出来事を思い出し、改めてこの世界に転生できたことを感謝するアルスであった。
「アルス? 何をしているんだ?」
馬車の近くで笑みを浮かべながら、クネクネしていたアルスを見つけたキルクが声をかける。
「あ、キルク王子……」
現実に戻されたアルスは恥ずかしさと焦りを押し殺しながらキルクの名前を呼ぶ。
襲撃の際にキルクを救ってから、何かと絡まれるようになったアルス。
馬車で移動の際にも突然アルスが乗る馬車に現れ、話を長時間する事もあった。
それからだよな……
キルクはムスッとした表情を浮かべ。
「む。王子は余計だ。前みたいにキルクと呼んでくれ」
アルスを戸惑わせる。
「いや、それは……」
そうこれだ。
事あるごとに名前呼びを強要させようとしてくるキルク王子。
襲撃された時のアルスには名前を気にしている余裕はなかった。その為、半ば無意識にキルクと呼び捨てにしていたアルスであったが、平常時となれば話は変わる。
キルク王子相手に呼び捨てだと?
相手は王族。いくらアルザニクス家が高位の貴族家だとはいえ、王子であるキルクを呼び捨てになど出来る訳がない。どこに他人の目があるか分からないからな。
アルスは今一度、自身の中で呼び捨ては出来ないと判断し。
「私は貴族であり、キルク王子は王族。いくら何でも呼び捨ては……」
「……駄目か?」
くぅ……。
キルクから放たれる可愛いオーラ。
またこれだ……
そこらの女などまったく相手にならないほど、何かが完成している物凄いオーラ。
キルク王子は俺に呼び捨てをさせようとし、色々と策を練ってこれまで仕掛けてきたが、自分が劣勢だと分かるとこの様に自分の容姿を盾にして攻撃をしてくる。
アルスは咄嗟に手で自分の視界を遮り、物理的にオーラを遮断する。
「い、今は……」
あっ、やべっ。
アルスが咄嗟にかけてしまった言葉をキルクが耳にすると。
「っ! 今はって言ったな! 分かった! 次に期待している!」
目を輝かせ、言いたいことを言うと、ウキウキした足取りでその場を離れていこうとする。
そして、足を数歩、進めた時。
「あ、そう言えば……」
どうしたんだ?
アルスから離れていこうとしたキルクが突然振り向き。
「これを渡すのを忘れていた」
「これは……」
キルクの手に見えるのは紐が切れたお守りのようなもの。
それを目にしたアルスはなくした物が見つかった時のような表情をする。
「アルスが倒れていたその場に落ちていたものだ。もしかしたらと思って今まで持っていたのだが……」
そのお守りをキルクは大事そうにアルスへと渡す。
「キルク王子が持っていてくれたんですね。ありがとうございます」
こんな所にあったのか。
アルスは右手に嵌めた鑑定指輪を意識しながらそのお守りを握る。
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