元RTA王者、異世界ダンジョンに挑戦す~前世の記憶を頼りにダンジョンを攻略していただけなのに、何故か周りが俺を放っておいてくれません~

ガクーン

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危険度3

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 それから俺は近くにある危険度2ダンジョンをクリアしてまわったのだが。


「終わらなかった……」

 流石の俺でも1日で危険度2ダンジョン10個クリアをする事は出来なかった。

 
 辺りはもう既に真っ暗。大体7時を回ったぐらいだろう。

 俺がこれまでにクリアした危険度2ダンジョンは7個。一つ一つのダンジョンのクリア時間はそれほどかかっていないのだが、ダンジョン移動に思ったより時間がかかり、予定よりも少ない個数で今日を終える事になった。

 ゲームの時はダンジョン間の移動は一瞬だったから忘れていたが、現実では移動手段が徒歩なので近いダンジョンでも移動に10分近くかかることになる。


 別にダンジョンは一日中空いているので、今から3つまわる事も可能だろう。しかし、俺は夜にしっかりと体を休め、ベストコンディションでダンジョンRTAをやりたい男。前世でもそうだったように、急な用事が無い限り無理に夜まで攻略し続けようとは考えていない。


「うーん!」

 蓮は一日中酷使し続けた体を伸ばす。

 数か所ダンジョンを回っただけで体がバキバキだ。


 あとは何も考えないで、宿帰って飯食って寝よ。


 こうして蓮は宿に戻り、一日を終えたのだった。



~次の日~

 いつも通り、朝早くからダンジョン攻略に出かけた蓮は午前中の内に3つの危険度2ダンジョンの攻略を終え、冒険者ギルドへとやってきていた。


「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか」

「ライセンスカードの更新を」

「ライセンスカードの更新ですね。少々お待ちください」

 一日で一番混む時間帯である正午ごろに来てしまった蓮。時間にして数十分待たされた後にようやくライセンスカード更新の順番が回ってくる。


「おめでとうございます。グレード3に更新完了です。グレード3からは危険度3ダンジョンに挑戦できますが、危険度3以降のダンジョンはこれまでのダンジョンと違って攻略時間や攻略難易度が格段に変わります。もし、今までソロで攻略をしてきているのであれば、これからはパーティーを組む事をお勧めします。パーティーに興味がありましたらお客様から見て左手に見える広めのカウンターでパーティー募集の紙や、個別で募集している方などの情報が知れますので、立ち寄ってみてください。それでは、またのお越しをお待ちしております」

「どうも」

 俺は小さく頭を下げ、その場を後にする。


 パーティーか。

 数日前に出会った女性、ルミネを思い出す。

 あれからまだ数日しかたっていない。俺でさえ、数日であのダンジョンの報酬スキルは取れないだろうからルミネはまだまだ時間がかかるだろう。

 まぁ、本人にまだやる気があるんだったらの話だけどな。


 一旦、ルミネがパーティーに加入すると考えよう。

 そうなると、前衛職二人。中衛職……は俺一人でいいとして、後衛職も一人いればいい。あと、サポーターのルミネだな。


 紹介もされたし、どんなもんだか見てみるか。


 蓮は新しい仲間をボチボチ探すべきかなと考えながら先ほど紹介があった、冒険者ギルドのパーティー斡旋カウンターへと足を運ぶ。


 ここも結構人がいるな。

 沢山のテーブル席が乱雑に置かれ、その場のテーブル席が2~5人の初顔合わせであろう人達で溢れかえっていた。

 殆どが人間。ごく少数だけど、獣人やエルフ。ドワーフもいるな。

 
 ブレイブタウンは人間が多く属する国にあたるため、町を見渡しても人間の割合が非常に高い。

 補足として、この町以外にもダンジョンが発見されている場所は数多くあり、獣人の国やエルフの国。ドワーフの国などそれは多岐にわたる。

 今の危険度のダンジョンだと滅多に無いが、ダンジョンの危険度が高くなるにつれて、他の町からそのダンジョンを攻略しに来た別パーティーと鉢合わせするなんて事も珍しくないからな。


 蓮はパーティー斡旋カウンター近くへとやってくると、木の掲示板に張り出されたパーティー募集の張り紙や、机に置かれた個人情報が詰まった冊子などを手に取り、目に通していく。


 流石にステータスやスキルは載っていないか。

 この世界、そしてブレイブダンジョンクエストの常識として、初対面の人やプレイヤーにステータスや所持しているスキルを聞くのはタブーである。

 そういったものはパーティーを組み、一定の信頼と絆を築いてから初めて教えてもらうもので、自分から聞くものではない。

 もし、ステータスやスキルを初対面で聞く奴がいたら、そいつはよほど空気が読めない奴か常識が無い奴だろう。


 現代風でいくと、君の住所は何処? って初対面の人に聞くぐらいやばい事だからそう思われても仕方ないよな。


 蓮は名簿を流し読みしていると、ある項目が目に入る。

 
「ダンジョン踏破……最高危険度?」

 凄い呼びずらい名称だな。


 ダンジョン踏破最高危険度――その名の通り、その人物がクリアしたことがあるダンジョンの中で一番高い危険度を記した欄。または名称。


 どれどれ……

 上から順に3、4、3、2、2……見ててもキリがないな。

 数の多さで言ったら2が一番多く、その次に3、1、4……と続いていた。

 ざっと、百人ほど見たが6クリアは2人だけ。あっ、これ。名簿登録順になっているのか。

 蓮はそれからも次々とページをめくっていく。


 下のページにいくにつれて。つまり、前に登録した人ほど数字が小さい。

 高難易度クリア者は引く手あまたなのか、すぐにパーティーから声を掛けられ、名簿から消える。そして、中堅どころはいいパーティーに声をかけられるのを待っているからすぐには名簿からは消えないけど、途中で妥協して名簿の後ろの方までいかない……と。

 蓮は名簿の最後のページをめくる。


 うわ、これは……

 最後のページに載っている者の殆どが、1。いても2程度で、9割が1となっていた。

 ここに載っている人たちは皆、高危険度ダンジョンをクリアできずに、パーティーにすがろうとこの名簿に登録したのだろう。しかし、危険度1や2しかクリアできない者などパーティーに必要ないだろうから、今の今まで売れ残り、下の方で名前が残る。


 蓮は名簿を閉じる。

 厳しいようだけど、これがこの世界。ブレイブダンジョンクエストの摂理。

 1で止まっている人達の気持ちも分からなくはない。

 この世界はゲームと違って1度死んだら終わりのハードモード。

 攻撃されたら痛みも感じるし、何より、ダンジョン攻略中特有の緊張をまとったオーラが自身の体に纏わりついて離れないあの空気。

 あれに心をやられたら、次の危険度のダンジョンなんて到底太刀打ちできないだろう。

 だけど……

 蓮はパーティー募集の名簿をそっと机に置き。


 そんな事に負けていたらラストダンジョンクリアなんて夢のまた夢。しかも、俺の目標はラストダンジョンクリアじゃ無く、その上のラストダンジョンRTA最速記録を樹立する事。

 その為に俺は何事も一切妥協せず、理想のパーティーを作り上げる。


 こうして蓮は今一度、自身の目標を再確認し、冒険者ギルドを後にしたのだった。
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