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2話
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カールが逃げてしまい、結婚式はお開きになった。
カールの両親は、お父様に何度も頭を下げにきた。
(なによ!?謝るならまず私じゃないの?)
お父様、ことクライン伯爵とカールの父親であるグランデール伯爵は、身分は同じであるが、クライン家のほうが、広大な土地を所有しており、権力が強かった。
(まあ、私は今、腫れ物を扱うようだものね。仕方ないか)
「本当に申し訳ありません。カールは今日限り勘当させます。我が敷地には一歩たりとも入れさせません」
グランデール伯爵は、今後のクライン家との付き合いを継続していきたい思惑があり、保身に走ってきた。
確か、グランデール伯爵は、ギャンブルが好きで、幾らかの借金をお父様からしていたはずだ。
「娘に一生の傷をつけてくれたな」
お父様がグランデール伯爵をかなり責めたが、グランデール伯爵は、終始一貫、謝罪し、カールも勘当するということで、それ以上は、穏便にしようという方向になった。
「アルルよ、これ以上はできない、母様を許してください」
「しばらくの間、部屋でゆっくり過ごすといい。料理教室や華道教室などは、全てキャンセルしておく」
「そうよ、アルル、これからやりたいこと、ゆっくり決めたら良いわ」
お父様、お母様、お姉様は、優しく私を慰め、見守ってくれている。
私は、両親とお姉様が言うように、しばらくは、部屋に引きこもることにした。
部屋に引きこもっても、何もやることはない。急に一人にされ、静かな時間に身をおくと、カールとの思い出が蘇ってくるばかりだ。
カールに初めて会ったのは、一年前だった。
18歳で社交デビューをした私は、最初のパーティーで、うまくダンスを踊れなかった。
ワルツの曲の途中、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
(くすくす、可愛いわね)
(くすくす、初めてだしね)
皆が、馬鹿にしたように笑っているのが感じられた。
一言文句でも言ってやろうと腕をまくった瞬間、カールが私の手をとり、引き上げてくれた。
「大丈夫!こんなの慣れだから」
カールは、その日一日中、リードしてダンスを踊ってくれた。
カールのリードは上手で、彼の胸の中で、くるくると踊ることができた。
長髪の金髪と青い目のカール。控え目で人のフォローばかりしている、人の良い彼。
そんな彼に、一目惚れしてしまい、猛アタックをした。彼は、押されると弱いタイプで、両親が大賛成だったのもあり、すぐに結婚話が持ち上がった。
私ばかりが好きで、カールは私に、合わせてくれていただけなのだろうか。何しろ、控えめで、自己主張が少ない人だから。
‥‥あれ?控え目でいつも人のフォローしている人って、ミンティア令嬢もそういうタイプだった。
そういえば、あのパーティーにも、ミンティア令嬢は来ていた。私が休んでいたとき、一度だけ、カールと踊っていたような気がする。
絹のように艶がある黒髪のミンティア令嬢。いつも私には、優しく笑いかけてくれた。
ミンティア令嬢の実家のカルバン家は、商売に失敗し、多額の借金があり、破産寸前だった。
ミンティア令嬢は、あのパーティーから、社交会のイベントには、参加していない。日に日に身なりは貧相になっていたが、清潔感と上品さは常に備わっていた。
カールとミンティア令嬢は、同じタイプの人間だから、密かに心が通じ合っていたのかもしれない。
それにしても、酷いことをする人だ。気にしないと考えても、気になってしまう。
心の傷は、相当深いようだった。
カールの両親は、お父様に何度も頭を下げにきた。
(なによ!?謝るならまず私じゃないの?)
お父様、ことクライン伯爵とカールの父親であるグランデール伯爵は、身分は同じであるが、クライン家のほうが、広大な土地を所有しており、権力が強かった。
(まあ、私は今、腫れ物を扱うようだものね。仕方ないか)
「本当に申し訳ありません。カールは今日限り勘当させます。我が敷地には一歩たりとも入れさせません」
グランデール伯爵は、今後のクライン家との付き合いを継続していきたい思惑があり、保身に走ってきた。
確か、グランデール伯爵は、ギャンブルが好きで、幾らかの借金をお父様からしていたはずだ。
「娘に一生の傷をつけてくれたな」
お父様がグランデール伯爵をかなり責めたが、グランデール伯爵は、終始一貫、謝罪し、カールも勘当するということで、それ以上は、穏便にしようという方向になった。
「アルルよ、これ以上はできない、母様を許してください」
「しばらくの間、部屋でゆっくり過ごすといい。料理教室や華道教室などは、全てキャンセルしておく」
「そうよ、アルル、これからやりたいこと、ゆっくり決めたら良いわ」
お父様、お母様、お姉様は、優しく私を慰め、見守ってくれている。
私は、両親とお姉様が言うように、しばらくは、部屋に引きこもることにした。
部屋に引きこもっても、何もやることはない。急に一人にされ、静かな時間に身をおくと、カールとの思い出が蘇ってくるばかりだ。
カールに初めて会ったのは、一年前だった。
18歳で社交デビューをした私は、最初のパーティーで、うまくダンスを踊れなかった。
ワルツの曲の途中、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
(くすくす、可愛いわね)
(くすくす、初めてだしね)
皆が、馬鹿にしたように笑っているのが感じられた。
一言文句でも言ってやろうと腕をまくった瞬間、カールが私の手をとり、引き上げてくれた。
「大丈夫!こんなの慣れだから」
カールは、その日一日中、リードしてダンスを踊ってくれた。
カールのリードは上手で、彼の胸の中で、くるくると踊ることができた。
長髪の金髪と青い目のカール。控え目で人のフォローばかりしている、人の良い彼。
そんな彼に、一目惚れしてしまい、猛アタックをした。彼は、押されると弱いタイプで、両親が大賛成だったのもあり、すぐに結婚話が持ち上がった。
私ばかりが好きで、カールは私に、合わせてくれていただけなのだろうか。何しろ、控えめで、自己主張が少ない人だから。
‥‥あれ?控え目でいつも人のフォローしている人って、ミンティア令嬢もそういうタイプだった。
そういえば、あのパーティーにも、ミンティア令嬢は来ていた。私が休んでいたとき、一度だけ、カールと踊っていたような気がする。
絹のように艶がある黒髪のミンティア令嬢。いつも私には、優しく笑いかけてくれた。
ミンティア令嬢の実家のカルバン家は、商売に失敗し、多額の借金があり、破産寸前だった。
ミンティア令嬢は、あのパーティーから、社交会のイベントには、参加していない。日に日に身なりは貧相になっていたが、清潔感と上品さは常に備わっていた。
カールとミンティア令嬢は、同じタイプの人間だから、密かに心が通じ合っていたのかもしれない。
それにしても、酷いことをする人だ。気にしないと考えても、気になってしまう。
心の傷は、相当深いようだった。
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