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 カルデア王国のブランド王は、美しいサリーンに夢中であった。王の寵愛を一心に受けているサリーンに、妻のミカエルは嫉妬をした。

 ミカエルは、サリーンを殺す計画を立てた。毎日、サリーンの食事に少量の毒を入れるように、侍女に命令を下した。

 侍女が毒を盛り始めてから、サリーンはみるみる弱り果て、床に伏せるようになった。王は心配をしたが、まさかミカエルの仕業であるとは思わなかった。

 半年後、サリーンは不治の病で亡くなった。命が消える一日前、サリーンは王に、

「娘のミネアは、まだ1歳になったばかりです。王様、ミネアのこと、お願いします」

「おお、サリーン。気弱なことを言わないでおくれ。ミネアには母が必要だ。まだまだ生きるのだ」

 王は、サリーンの手を握りしめる。

「いえ、王様。私は、もうだめです。王様に愛された幸せな人生でした。ただ、ミネアのことだけが心配です」

 サリーンは、王様の手を弱々しく握り返す。サリーンには、自分の身におきたことが、ミカエルのしたことであることが、薄々気づいていた。
 (もしかしたら、ミネアにも、手を出すかもしれない。でも、王様の妻が犯人など、証拠もないのにとても言えない)

「王様、最後のお願いです。ミネアのことを、、」

「サリーン、死ぬな、死んでは行けない」

 王の目からは、涙が溢れてとまらない。王は、心の底から、サリーンのことを愛していたのだ。

 サリーンが亡くなり、ブランド王は、一気に老け込み、部屋に閉じこもるようになった。自分の悲しみを受け止めるだけで精一杯だった。ミネアのことを考える余裕は、なかった。

 妻のミカエルは、塞ぎ込む王を見て、怒り狂った。

(サリーンが死んでもなお、王様の心を捉えて離さない。本当に、憎きサリーン)

 ミカエルは、逆上し、娘のミネアも殺してくるよう命じた。

 命令を受けた侍者は、その夜、ミネアの部屋に忍び込み、睡眠剤を吸い込ませた。ミネアは、意識を失い、木の籠に入れられた。

 侍者は、木の籠を片手に持ち、城から出る。馬を走らせ、隣国の、アリシア王国まで飛ばした。

 アリシア王国は、海に面した国であった。
海の道を走らせていると、小さな村が見えた。夜も更けていた。侍者は、浜辺にあるいかだの上に、籠を置いた。

(罪もない赤子であるのに。すまない。せめて、誰かに拾われてくれ)

 侍者は、殺すことはできなかなった。星々に祈りを捧げ、そのまま、馬に乗り、カルデア王国へ帰っていく。


 その夜は、寒かった。ミネアは、毛布に包まれていたが、だんだんと冷えてくる。寒さからか、空腹からか、ミネアは目を覚まし、泣き声を上げた。

 そのとき、たまたま通りかかったのが、名剣士のランビーノだった。ランビーノは、いかだを修理し、村を出ようとしていたところだった。
 



  

 
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