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「え?サーリャの地に?」

 ランビーノはミネアに、山の民の長、アメジストと話したことをそのまま伝えた。

 ミネアは、自分の母親が山の民の長の長女であったこと、そして、自分自身がサーリャの地の後継者であることを知り、息を飲んで考えた。

 ミネアは、まだ見ぬ母が、恋のためにカルデア王国へと行き、サーリャの地を捨てたことが理解できた。

「お父さん、きっと、恋が母を動かしたんだ。それくらいカルデアの王を、サリーンは愛していたんだね」

 ミネアは部屋の窓から空を見上げ、もはや会えぬ母を想った。

「きっと、愚かな行為と見えても、愛は何より、母にとって大切なものだったんだ」

 ミネアは、青い空に微笑んで話す。

(ミネアは、なんだか、大人の色気というか、大人の顔をするようになったな。これが、愛の力か)

 ランビーノは、ミネアの澄んだ目を見ながら感慨深い思いになった。

「それで、お父さんは、これからどうしたら良いと思う?」

 ミネアは、ランビーノを振り返って言った。

「俺は、カリューシャに勝つためにも、サーリャの地へ行き、アメジストと話をしたほうが良いと思う」

「なぜ?」

「サーリャの地の後継者であるなら、魔法を唱えることができるはずだ。カリューシャに勝つためには、魔法を習得する必要がある」

 ランビーノは、冷静な目をして言った。

「前の私なら、剣術だけで闘おうと思った。でも、今は、王子を助けるためにも、魔法を使えるようになりたいと思う」

 ミネアは、サーリャの地へ行くことを了承して言った。

「相成る術を受け入れる。強くなったな」

 ランビーノの表情が、柔らかくなる。

「不思議だけど、王子のためと思うと、違うものも受け入れられる」

 ミネアは、ふつふつと湧き上がってくる愛の力に自分でも驚いていた。

「ミネア、サーリャの地から、そのままカルデア王国へ向かえ。俺は、一足先に、カルデアへ行って、情報を集めている」

 ランビーノとミネアは、お互いに頷き合い、これから起こる決戦に、覚悟を決めた。


 ミネアは、すぐに準備をすると、サーリャの地へと向かった。ランビーノに言われた道を辿り、旋風の如き足で駆けた。

 まだ陽が明るい頃に、サーリャの地へ到着する。山岳の地形を、ランビーノに教えられた道順で進んで行くと滝へと辿り着く。

(確か、お父さんは、滝に着けば、迎えがくると言っていたけど、、)

 ミネアは滝に降りて、鬱蒼と茂る木々を見渡す。

「待っていました。ミネア様」

 声のほうへ振り向くと、木の枝に座っている、豊かな赤い髪を光らせる、アメジストが笑っていた。

「アメジスト?」

「はい。貴方の母の妹です。だから、ミネア様にとっては、叔母ですね」

 アメジストは木々を飛び、ミネアの前に降り立って、再び、ニッコリと笑って言った。
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