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 ミネアが蕎麦を食べ終わると、ランビーノはカルデア城で掴んだ情報を話し始めた。

「どこを探してもタンジア王子は見つからない。どこかの秘密の部屋に隠されているんだと思う」

 ランビーノの言葉は重くミネアにのしかかってくる。

「生きてるよね?」

「ああ、ミネアが行くまで、期限内は殺さないだろう」

「もう、正面から行くしかないよ」

 ミネアは、自分の命を投げ出すつもりであった。

(タンジア王子さえ、生きてくれれば!)

「真正面?危険だ。もう少し、タンジア王子の居場所を探さないか?」

 ランビーノは、罠にはまる危険を感じる。

(今のミネアは、王子を心配するあまり、周りが見えてない。。)

「カリューシャは来るとわかって、どこかで見張ってる。どこから行っても同じよ。時間の無駄だわ。私が行くから、お父さんは後ろから見張っていて」

 ミネアは、決心したように、言い放った。

 ランビーノは、ミネアが唇を閉じたら、ら何を言っても聞かないのを知っていた。

「わかった。ミネアに任せる。くれぐれも用心しろ」

 ランビーノは、ため息をついて言った。

 ミネアは、強い光を目に宿して頷いた。

(恋する目だな)

 ランビーノは、父親の情からか、タンジア王子に妬ける想いに胸が痛んだ。



 ミネアは食堂を出ると、そのままカルデア王国に向かった。正門の門番に、カリューシャへの取り次ぎを申し出る。

「ミネア様ですね。しばらくお待ちを!」

 門番が戻ってくると、

「ミネア様、ようこそいらっしゃいました。どうぞ、お入り下さい」

 と、恭しく礼をして、ミネアを中へと案内する。ミネアは、門番に従い、案内されるままに後ろから着いて行く。

 城に入ると、赤い絨毯が敷かれた道を歩いていく。奥には、大広間が広がっていた。大人数が囲めるテーブルと椅子は豪華で、シャンデリアが美しく煌めいている。何人かのメイドや執事とすれ違う。

(アリシア王国より、高価そうな家具・・)

 広間を更に奥に行くと、細い廊下が三本に分かれていた。綺麗な部屋が何部屋も脇に広がっている。

(迷ってしまいそう)

 ミネアは、城の広さに、段々と自分がどこを歩いているのかわからなくなってくる。

 ミネアは案内されるままに、廊下を歩いていくと、地下へと続く螺旋階段に突き当たる。

「階段を降りて行くと、カリューシャ様がいらっしゃいます。どうぞ」

 門番はそう言うと、礼をして、元来た廊下を戻って行く。

ミネアは、意を決して、早足に階段を降りて行く。タンジア王子が心配であった。

 階下に下がると木の扉があり、ミネアは、扉を開くと部屋に続いていた。薄暗い照明が、ひっそりと部屋を照らしている。暖炉に、本棚がいくつも見られた。奥に机と椅子があるようだ。書斎のようだった。

「いらっしゃいませ、ミネア様。待っておりました」

 カリューシャが椅子から立ち上がり、ゆっくりと姿を見せる。

「カリューシャ!タンジア王子はどこだ?」

 ミネアは、憎らしそうにカリューシャを睨んだ。

「安心して下さい、ミネア様。タンジア王子は、怪我の手当てをしまして、ゆっくりお休みになられています」

「どこにいる?!」

 ミネアは、生きているという事実に、安堵する。

「ミネア様、交換条件です」

「?」

「ミネア様は、サリーン様とカルデア王の娘。王族の血をひいています。また、サリーン様は、サーリャの地を受け継ぐ者。その娘でもあるミネア様は、二つの国の後継者です。だから、ミネア様にはカルデア王国を継ぎ、サーリャをカルデアの領地にするよう、アメジストの長に言ってもらいたい」

 ミネアは、あまりにも勝手なカリューシャの条件を聞き、怒りが込み上げてくる。

「なにを言う!私を捨てたのは、カルデア王国だ!」

「確かに、あなた様は捨てられた姫。私もその行方は知りませんでした。しかし、戻って来られたのです。運命とは不思議なものです」

「私の父親は、ランビーノだ!私は、タンジア王子と、私の故郷に帰る!」

 ミネアは、怒りで両手が震えていた。かろうじて唇を噛むことで、なんとか怒りを抑えていた。

「ミネア様、タンジア王子の命はありません。なぜなら、毒が全身にまわりはじめています。怪我の手当てをしたことで、なんとか息をしている」

 カリューシャは、冷たく光る、したたかな目でミネアを見据えた。

「え?」

「私の太刀をまともにくらった。毒は、ダルが作った解毒剤がなければ消えません」

「そんな。。」

「ミネア様がカルデアに戻ってきて頂けるなら、薬を飲ませましょう。そして、安全にアリシアにお届けします。」

 ミネアは、カリューシャの冷たい声をただ聞くしかなかった。



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