PMC作ってみた

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武内物産にて

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「……。」

 山田は自分のデスクで黙々とデータの分析をしていた。

 分析といっても、そんなに難しい物ではなく、武内物産の先月と今月分の営業成績の内容を確認し、今月の成績は先月と比較して伸びているのかを把握しているだけだ。 

(穀物関連の成績は伸びているが、やっぱり海産物関連は少し落ちている、か。)

 都内という事もあって、海産物、特に、魚介類を取り扱っている業者へのコネクションが少なかった。

 もちろん、築地等の大きな市場とのコネ作りは欠かしていないが、大体が大手企業や商社に先手を打たれ、こちらが契約を交わせる商品は少ない。

 他の企業では魚介類や各種加工品を手に入れられるのに対し、こちらは貝類や海草類にしか手をつけられなかった。

 儲けが無い訳ではないが、やはり、決め手に欠けていた。

「山田君、ちょっと。」課長に呼ばれ、課長のデスクに行くと苦笑い気味の課長が居た。 

大塚成也課長は、営業成績分析部第二課長という役職だ。

 「最近の成績、どうなってる?」と聞かれ、「やはり、海産物系統の売上が下がっています。穀物系統の売上が上がっているので赤字という訳ではありませんが…。」

 分析した結果を伝えると課長は、「そうかぁ、海産物辺りが悩み所だねぇ。」

 と緩い口調でそう言った。

 「部長がまた渋い顔するだろうなぁ、嫌んなっちゃうよ。」

 「そうですか?穀物系統の売上が上がっているので、黒字だと思います。」

 「まあねぇ、でも、全体としては上がっているけど、2.3パーセント程度だから。部長が役員会で報告し辛いだろうから…。」

 「あー、成る程。」

 確かに部長はその役職上、部長という地位に座りながら、詰まる所、やってる事はデータの分析と舐められいる。

 分析の結果、改善案を提出するが、やはり、他所の部署からすれば、パソコン打ってるだけと舐められるのだ。

 課長は、「営業部の連中ももっと頑張ってくれりゃあ良いのに…。」と、漏らす。

 「そうですね、私達では、どうしようもないので。」

 そう言うとそろそろ、退社時間になりそうだったので帰宅をしようとデスクに戻ろうとすると、「あ、山田君、今日一緒に飲まない?」と言われた。

 この上なく嬉しい誘いだったので、「はい。それでは、玄関前でお待ちしております。」と、普段より、声が高くなった。


15分後、課長が、現れて「じゃあ、あそこに行こうか。」とはしゃぎながら肩を組んできた。

 課長はまだ30代前半で明るく、気前が良かった。慶応大学出身で応援部に入っていたらしい。

 同僚には、この明るさが苦手とする奴らもいるらしいが山田はこの明るさが嫌いではない。

 「それにしてもさ…、」課長がしみじみと話しだした。「本当に辞めちゃうのかい?、武内物産?」

 山田は「はい。給料も悪くはないですし、楽ですし、人間関係も良いです。」

 でも、と山田は続ける。「刺激や危機感とかがまるで無いんです。あの頃と比べると、陸自に居た頃は本当に楽しかったんです。」

 黙っていた課長が、「じゃあ、また陸自に入るの?」と聞いてきた。

 「楽しかったろうけど、辛かっただろう。もう一度入ってやってけるかい?」

 確かに、あの頃は本当に辛かったし、毎日が限界だと思っていた。

 脱柵でもしてやろうかとも思ったが、班長や区隊長、色んな方達に助けてもらってなんとかなったのだ。

 あの頃と同じことをすると思うと気が引ける。

 すると課長が「嫌なら、辞めなくて良いじゃないか。残業もあるけど、辛い訳じゃないだろう。」

 それとも、と課長は続ける。「起業するの?」と聞いてきた。

 山田は、はっとなった。

確かに起業すれば、ある程度、自分にも権限がある企業方針も決めていける。

 何より、自分がしたい仕事が出来ると思うからだ。
 山田は、「はい、PMCをやりたいんです。」と思いつき半分に言った。

 課長は「やっぱり、そうだよなぁ。うちや、陸自の経験も使えるしね。」

 しかし、課長は「でも、人材はどうするの、それに教育もしなきゃだし、何より、山田君、今体力大丈夫なの?」

 と、矢継ぎ早に質問してきた。確かに起業しても、1人でやっていける訳がない。

 それに人材だ。

起業したてのPMCなんか、多分、ロクでもない人材しかないだろう。

 地元の不良、無職、浮浪者しか来ない。

 いや、そういった奴らすら来ないかもしれない。

 しかし、あの武内物産には、もう興味が無い。

「はい、当てならあるので。」と誤魔化した。

 少し疑わしげだったが、課長はすぐに「そっか、なら、今日は飲もうか。

部下の新しい門出祝いだ。」

 1人で急に笑顔になった。

 辞めたいと思っていたが、課長と会えなくなると思うと、寂しくもあった。
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