12 / 32
石化の少女
ナツメ 3
しおりを挟む
なんやかんやで、一年が過ぎた。
奴らは私の手におえんとの理不尽な理由で、吾輩は、カグヤやジュンの4年生らと5年生のジンからなる高学年クラスの担任を任されるようになった。
そして、カグヤを通じて、かの式マサキと知己を得るようにもなった。
今では、マサキには、魔法の授業の時には、助っ人として、代わりに授業を受け持ってもらうこともある。
吾輩は、通常、魔法を使用することができないからだ。
吾輩が、高学年クラスの担任となって、おおよそ3か月が経過した。
この間、二度ほど教室が破損し、離れの校長室が大破することがあったが、まあおおむね順調であると言えよう。
そして、今日、夏至の日は、カグヤたち4年生の『精霊の儀』の日である。
『精霊の儀』とは、吾輩が、カップケーキの建物の中で光の玉に触れた、あの儀式のことである。
あの光の玉のことを吾輩は便宜的に『精霊』と呼ぶことにした。
そのほうが断然に瀟洒である。
サダコによると人は精霊と触れ合うことで、だれでも魔法が使えるようになるらしい。
この世界には、魔法が使えない人が大半であるが、それは単に精霊との触れ合いがなかったことが原因とのことだ。
ただし、精霊との触れ合いは、どの精霊でも良いというわけでなく、自分の資質にあった精霊でないとダメである。
では、どの精霊が自分の資質にあっているのかをどう見分けるというのかというと、そんな方法はない。
ただ、その精霊に出会ったときに、もうびびっとわかるのだ。
経験者である吾輩が言うのだから間違いがない。
昨年、吾輩とジンが『精霊の儀』を行った後、いくつかの修正を加えて、より効果的なシステムへと改善を行い、プロセスを整備した。
大まかな手順は、次の通りである。
まず、一寸大の六角柱状の石英の結晶を掌に包み想いを込める。
次に想いの宿った石英の結晶を鎖に吊るし、カップケーキの建物『ドーム』の黒机の上のネックレススタンドに掲げる。
すると黒机に展開されている魔法陣で石英に宿った想いが増幅される。
その増幅された想いに魅かれて精霊たちがドーム内に現れるので、自分の資質にあった精霊と触れ合うのだ。
触れ合うことができるのは、一度に一人の精霊のみである。
ただ、歳を経るに従い、触れ合う精霊が変わることは、ままあるらしい。
また、極稀に複数の精霊と触れ合うことができることができる者もいるらしい。
精霊の儀でドーム内に魔力が満ちた際、ネックレススタンドに掲げた石英の結晶は、振り子のように大きく揺れを繰り返す。
この振り子の方向で、発現する魔法の属性を判断することができるのだ。
最初の属性は、火、水、土、風のいずれかになる場合がほとんどである。
属性は、経験を積んだりや技量を高めたりすることで、他の属性に変化する場合がある。
ちなみに、昨年の精霊の儀で、ジンはオレンジ色の精霊と触れ合い、その時の振り子は土の属性に揺れていた。
精霊の儀は、正午から、一人ずつ順に始まった。
儀式は順調に進み、残すはカグヤとジュンの二人だけとなっている。
ここまで、6人全員が、精霊と触れ合うことに成功している。
世間では、大半の人が魔法を使えないことを思うとものすごい高確率だ。
「さあ、次は私の番ね~」
カグヤがドームにやってきた。
「楽しみっすね~」
カグヤにチヨがくっついて来ていた。
そもそも、チヨは、今回の精霊の儀には、参加していない。
式になった時点で、何らかの精霊と触れ合っていて、儀式を行う必要がないからだ。
おそらく、チヨは、ドームがどうなっているのか興味があったのでカグヤについてきたのだろう。
この日以外でドームに入れる機会はまず無いからだ。
精霊の儀は、一人ずつドームに入るというのが原則だが、まあ、チヨとカグヤなら問題ないだろう。
カグヤが、想いの宿った石英を黒机の上のネックレススタンドに掲げた。
黒机の魔法陣が青白く淡い光りを放ち、ドームの天井に一つ二つと精霊が集まってくる。
「おおっ!?」
ドーム内にいたサダコ、ナツメ、チヨ全員が、思わず声を上げた。
これまで、想いの宿った石英を掲げたあと集まってくる精霊たちは、何らかの色に偏りはしているもののいくつか他の色の光が混じっているのが普通だった。
しかし、カグヤのもとに集ってきたのは、赤い光の精霊のみ。
ドームの天井が赤一色の光で満たされたのだ。
「きれいっすね~!」
頭上に繰り広げられた光景にチヨは感嘆の声を上げる。
しかし、その横で、サダコとナツメは、苦り切った顔をしていた。
たしかに赤い光一色の光景は、感嘆すべきものであった。
が、しかし、その集まってきた赤い光の精霊たちは、明らかにカグヤを避けまくっているのだ。
赤い光の精霊たちは、カグヤから、怯えて逃げるように天井や壁際に貼り付き、カグヤが近づこうとすると海が割れたように移動していってしまう。
精霊たちが話せるのならば「ちょ~、なんすかこれ。勘弁してほしいんっすけど~」「た、たすけて~。ここから出して~」と叫んで、軽くパニックになっているようにみえる。
追っては逃げられ、追っては逃げられ、そんなことを何度か繰り返すうちにカグヤが、次第に涙目になってた。
「カグヤ。
今日は、もう、それくらいにしておけ。
今日は、なにか具合が悪いんだよ、きっと」
サダコ校長の言葉に、さすがのカグヤも観念した。
掲げてあった石英を取り外し、入り口の扉の前にいるサダコ校長、ナツメ先生、チヨのところに戻ってくる。
ドーム室内から、サーッと赤い光の精霊たちが姿を消していく。
「ちょ、ちょっと、なによあれ~」
薄暗さが戻った室内でカグヤがつぶやく。
ちょっと涙声だ。
「なんか、これ、壊れてんじゃないの~。
チヨ~、あんたが行って、ちょっとやって来てみなさいよ~っ」
カグヤは、拗ねたようにチヨを促す。
「え~、でも、私がやっても、精霊と触れ合えないっすよ~」
「いや、別に構わんぞ。
それで、カグヤが納得できるなら、それでいいし、実際のところ、私も少し興味がある」
「ほんとっすか!?」
サダコ校長の許可を得て、チヨはポケットから想いの宿った石英のペンダントを取り出す。
石英を準備してきているところをみると、チヨ自身も、隙あらば、儀式をやってみたいと思って、その機会を探っていたのだろう。
ルンルンとハミングが聞こえてきそうな足取りで、チヨは、黒机に近づくとネックレススタンドに石英を掲げる。
黒机の魔法陣が青白く淡い光りを放ち、ドームの天井に一つ二つと精霊が集まってきた。
先ほどとは打って変わって、青い光8割、緑の光2割といった構成で、ドームの中は海の中にいるかのような光彩につつまれる。
ドーム内に満ち満ちた青い光の精霊や緑の光の精霊が、チヨの周りを舞っている。
触れることはできないが、チヨが手を伸ばすと、楽しそうにチヨの手の周りをフヨフヨと旋回する。
「きれい~」
先程までの不機嫌も吹き飛んで、カグヤは、胸の前で手を組みながら、その光景に見入っていた。
青い光がさざめいて、波のまにまにまを漂っているようだ。
竜宮城に差し込む光もこんな色彩だったかもね。
カグヤは、思わず胸の前に組んでいた手をとき、少しでもその海の光に似た精霊に触れようと右手を伸ばした。
すると精霊たちはその手とその手の指す方を恐れるようにさっと避けるように移動した。
かって、出エジプトの際、モーセが手を振り上げると、海が二つに割れたという。
それとよく似た光景が目の前で再現されていた。
「な、なんで・・・・?」
「まあ、なんか、今日は、調子が悪いんだよ、きっと。
ま、まぁ、そんなに気を落とすな」
再び涙目になるカグヤをサダコ校長が慰める。
「日を改めて、またやろう。
こんどはきっと大丈夫だ」
最後にジュンが、精霊の儀に臨んだ。
ジュンが、石英を掲げると、精霊たちが集まってくる。
「こ、これは・・・・」
ドーム内にカグヤの時とはまた違った光景が展開された。
ほぼすべての種類の精霊たちが、ほぼ同じ割合で集まってきたのだ。
ドームの中は、まるで虹の中に入り込んだかのようである。
ジュンの周りでは、七色の精霊が入れ替わり立ち替わりワルツを奏でるように舞い踊っている。
ジュンは、思い思いにその精霊たちに手を伸ばす。
が、不思議なことにどの精霊たちも、ジュンと触れ合おうとはしない。
そんな光景が何度か繰り返されるのを見て、サダコが、ジュンに声をかけた。
「ジュン、無理しなくていい。
無理に精霊と触れ合おうとしなくていいんだ」
「はい・・・・」
「触れ合う精霊は、おのずとわかるもの。
無理に選ぶ必要はないんだよ」
「はい・・・・」
「今日は、ここまでにしておこうか・・・・」
「はい・・・・」
ジュンは、少しうなだれたようにスタンドから石英を取り外す。
徐々に精霊たちが姿を消していき、ドームの中が、再び薄暗くなる。
ジュンは、サダコとナツメに向かって一礼をすると、ドームの扉を開け、自分の教室に帰って行いった。
「ナツメ。
すまんが、一緒について行ってやってくれ」
ナツメにジュンの後を追わせた後、サダコは、ドームの天井の窓を開けながらため息をつく。
カグヤのあれにも驚いたが、ジュンに集まってきた精霊たちの種類の多さにも驚いた。
ジュンが触れ合うことができる精霊は、まあ、あれだろうな。
こんな儀式で呼び出せるような精霊ではないし、出会えるかどうかは運しだいだなぁ・・・・。
というか、まだいるのか?
ずいぶん昔に見たきりだが・・・・。
それにしても、カグヤ。
あれは、なんというか、もう終わってるなぁ。
精霊がビビッて近寄ってこないもんなぁ。
こりゃ、カグヤが精霊と契約できるのは、当分先だな。
しかし、聞いてはいたが、相当にやばいな、あれは。
私でさえも、力の差がありすぎて、いるのかいないのかもわからんくらいだもんな。
まあ、あれは、相当なことしないと、ふつう出会えない存在だし。
しかたないと言えば、しかたないのかもしれんのだけど。
でも、それだけ能力あるんだから、もう少し、上手くやってもらえんもんかなぁ。
奴らは私の手におえんとの理不尽な理由で、吾輩は、カグヤやジュンの4年生らと5年生のジンからなる高学年クラスの担任を任されるようになった。
そして、カグヤを通じて、かの式マサキと知己を得るようにもなった。
今では、マサキには、魔法の授業の時には、助っ人として、代わりに授業を受け持ってもらうこともある。
吾輩は、通常、魔法を使用することができないからだ。
吾輩が、高学年クラスの担任となって、おおよそ3か月が経過した。
この間、二度ほど教室が破損し、離れの校長室が大破することがあったが、まあおおむね順調であると言えよう。
そして、今日、夏至の日は、カグヤたち4年生の『精霊の儀』の日である。
『精霊の儀』とは、吾輩が、カップケーキの建物の中で光の玉に触れた、あの儀式のことである。
あの光の玉のことを吾輩は便宜的に『精霊』と呼ぶことにした。
そのほうが断然に瀟洒である。
サダコによると人は精霊と触れ合うことで、だれでも魔法が使えるようになるらしい。
この世界には、魔法が使えない人が大半であるが、それは単に精霊との触れ合いがなかったことが原因とのことだ。
ただし、精霊との触れ合いは、どの精霊でも良いというわけでなく、自分の資質にあった精霊でないとダメである。
では、どの精霊が自分の資質にあっているのかをどう見分けるというのかというと、そんな方法はない。
ただ、その精霊に出会ったときに、もうびびっとわかるのだ。
経験者である吾輩が言うのだから間違いがない。
昨年、吾輩とジンが『精霊の儀』を行った後、いくつかの修正を加えて、より効果的なシステムへと改善を行い、プロセスを整備した。
大まかな手順は、次の通りである。
まず、一寸大の六角柱状の石英の結晶を掌に包み想いを込める。
次に想いの宿った石英の結晶を鎖に吊るし、カップケーキの建物『ドーム』の黒机の上のネックレススタンドに掲げる。
すると黒机に展開されている魔法陣で石英に宿った想いが増幅される。
その増幅された想いに魅かれて精霊たちがドーム内に現れるので、自分の資質にあった精霊と触れ合うのだ。
触れ合うことができるのは、一度に一人の精霊のみである。
ただ、歳を経るに従い、触れ合う精霊が変わることは、ままあるらしい。
また、極稀に複数の精霊と触れ合うことができることができる者もいるらしい。
精霊の儀でドーム内に魔力が満ちた際、ネックレススタンドに掲げた石英の結晶は、振り子のように大きく揺れを繰り返す。
この振り子の方向で、発現する魔法の属性を判断することができるのだ。
最初の属性は、火、水、土、風のいずれかになる場合がほとんどである。
属性は、経験を積んだりや技量を高めたりすることで、他の属性に変化する場合がある。
ちなみに、昨年の精霊の儀で、ジンはオレンジ色の精霊と触れ合い、その時の振り子は土の属性に揺れていた。
精霊の儀は、正午から、一人ずつ順に始まった。
儀式は順調に進み、残すはカグヤとジュンの二人だけとなっている。
ここまで、6人全員が、精霊と触れ合うことに成功している。
世間では、大半の人が魔法を使えないことを思うとものすごい高確率だ。
「さあ、次は私の番ね~」
カグヤがドームにやってきた。
「楽しみっすね~」
カグヤにチヨがくっついて来ていた。
そもそも、チヨは、今回の精霊の儀には、参加していない。
式になった時点で、何らかの精霊と触れ合っていて、儀式を行う必要がないからだ。
おそらく、チヨは、ドームがどうなっているのか興味があったのでカグヤについてきたのだろう。
この日以外でドームに入れる機会はまず無いからだ。
精霊の儀は、一人ずつドームに入るというのが原則だが、まあ、チヨとカグヤなら問題ないだろう。
カグヤが、想いの宿った石英を黒机の上のネックレススタンドに掲げた。
黒机の魔法陣が青白く淡い光りを放ち、ドームの天井に一つ二つと精霊が集まってくる。
「おおっ!?」
ドーム内にいたサダコ、ナツメ、チヨ全員が、思わず声を上げた。
これまで、想いの宿った石英を掲げたあと集まってくる精霊たちは、何らかの色に偏りはしているもののいくつか他の色の光が混じっているのが普通だった。
しかし、カグヤのもとに集ってきたのは、赤い光の精霊のみ。
ドームの天井が赤一色の光で満たされたのだ。
「きれいっすね~!」
頭上に繰り広げられた光景にチヨは感嘆の声を上げる。
しかし、その横で、サダコとナツメは、苦り切った顔をしていた。
たしかに赤い光一色の光景は、感嘆すべきものであった。
が、しかし、その集まってきた赤い光の精霊たちは、明らかにカグヤを避けまくっているのだ。
赤い光の精霊たちは、カグヤから、怯えて逃げるように天井や壁際に貼り付き、カグヤが近づこうとすると海が割れたように移動していってしまう。
精霊たちが話せるのならば「ちょ~、なんすかこれ。勘弁してほしいんっすけど~」「た、たすけて~。ここから出して~」と叫んで、軽くパニックになっているようにみえる。
追っては逃げられ、追っては逃げられ、そんなことを何度か繰り返すうちにカグヤが、次第に涙目になってた。
「カグヤ。
今日は、もう、それくらいにしておけ。
今日は、なにか具合が悪いんだよ、きっと」
サダコ校長の言葉に、さすがのカグヤも観念した。
掲げてあった石英を取り外し、入り口の扉の前にいるサダコ校長、ナツメ先生、チヨのところに戻ってくる。
ドーム室内から、サーッと赤い光の精霊たちが姿を消していく。
「ちょ、ちょっと、なによあれ~」
薄暗さが戻った室内でカグヤがつぶやく。
ちょっと涙声だ。
「なんか、これ、壊れてんじゃないの~。
チヨ~、あんたが行って、ちょっとやって来てみなさいよ~っ」
カグヤは、拗ねたようにチヨを促す。
「え~、でも、私がやっても、精霊と触れ合えないっすよ~」
「いや、別に構わんぞ。
それで、カグヤが納得できるなら、それでいいし、実際のところ、私も少し興味がある」
「ほんとっすか!?」
サダコ校長の許可を得て、チヨはポケットから想いの宿った石英のペンダントを取り出す。
石英を準備してきているところをみると、チヨ自身も、隙あらば、儀式をやってみたいと思って、その機会を探っていたのだろう。
ルンルンとハミングが聞こえてきそうな足取りで、チヨは、黒机に近づくとネックレススタンドに石英を掲げる。
黒机の魔法陣が青白く淡い光りを放ち、ドームの天井に一つ二つと精霊が集まってきた。
先ほどとは打って変わって、青い光8割、緑の光2割といった構成で、ドームの中は海の中にいるかのような光彩につつまれる。
ドーム内に満ち満ちた青い光の精霊や緑の光の精霊が、チヨの周りを舞っている。
触れることはできないが、チヨが手を伸ばすと、楽しそうにチヨの手の周りをフヨフヨと旋回する。
「きれい~」
先程までの不機嫌も吹き飛んで、カグヤは、胸の前で手を組みながら、その光景に見入っていた。
青い光がさざめいて、波のまにまにまを漂っているようだ。
竜宮城に差し込む光もこんな色彩だったかもね。
カグヤは、思わず胸の前に組んでいた手をとき、少しでもその海の光に似た精霊に触れようと右手を伸ばした。
すると精霊たちはその手とその手の指す方を恐れるようにさっと避けるように移動した。
かって、出エジプトの際、モーセが手を振り上げると、海が二つに割れたという。
それとよく似た光景が目の前で再現されていた。
「な、なんで・・・・?」
「まあ、なんか、今日は、調子が悪いんだよ、きっと。
ま、まぁ、そんなに気を落とすな」
再び涙目になるカグヤをサダコ校長が慰める。
「日を改めて、またやろう。
こんどはきっと大丈夫だ」
最後にジュンが、精霊の儀に臨んだ。
ジュンが、石英を掲げると、精霊たちが集まってくる。
「こ、これは・・・・」
ドーム内にカグヤの時とはまた違った光景が展開された。
ほぼすべての種類の精霊たちが、ほぼ同じ割合で集まってきたのだ。
ドームの中は、まるで虹の中に入り込んだかのようである。
ジュンの周りでは、七色の精霊が入れ替わり立ち替わりワルツを奏でるように舞い踊っている。
ジュンは、思い思いにその精霊たちに手を伸ばす。
が、不思議なことにどの精霊たちも、ジュンと触れ合おうとはしない。
そんな光景が何度か繰り返されるのを見て、サダコが、ジュンに声をかけた。
「ジュン、無理しなくていい。
無理に精霊と触れ合おうとしなくていいんだ」
「はい・・・・」
「触れ合う精霊は、おのずとわかるもの。
無理に選ぶ必要はないんだよ」
「はい・・・・」
「今日は、ここまでにしておこうか・・・・」
「はい・・・・」
ジュンは、少しうなだれたようにスタンドから石英を取り外す。
徐々に精霊たちが姿を消していき、ドームの中が、再び薄暗くなる。
ジュンは、サダコとナツメに向かって一礼をすると、ドームの扉を開け、自分の教室に帰って行いった。
「ナツメ。
すまんが、一緒について行ってやってくれ」
ナツメにジュンの後を追わせた後、サダコは、ドームの天井の窓を開けながらため息をつく。
カグヤのあれにも驚いたが、ジュンに集まってきた精霊たちの種類の多さにも驚いた。
ジュンが触れ合うことができる精霊は、まあ、あれだろうな。
こんな儀式で呼び出せるような精霊ではないし、出会えるかどうかは運しだいだなぁ・・・・。
というか、まだいるのか?
ずいぶん昔に見たきりだが・・・・。
それにしても、カグヤ。
あれは、なんというか、もう終わってるなぁ。
精霊がビビッて近寄ってこないもんなぁ。
こりゃ、カグヤが精霊と契約できるのは、当分先だな。
しかし、聞いてはいたが、相当にやばいな、あれは。
私でさえも、力の差がありすぎて、いるのかいないのかもわからんくらいだもんな。
まあ、あれは、相当なことしないと、ふつう出会えない存在だし。
しかたないと言えば、しかたないのかもしれんのだけど。
でも、それだけ能力あるんだから、もう少し、上手くやってもらえんもんかなぁ。
0
あなたにおすすめの小説
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる