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第一章 あなたに似てる人
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澄み渡った青空は、都内でも珍しいほど抜けていた。雲ひとつない青色は気持ちがいいくらいに高い。藤崎佑華は仕入れで到着した花の陳 列に追われていた。
都内の住宅街の一角にある『さんざし』は、街の小さなフラワーショップだ。昼間は青と白のストライプ柄のテントを店先に広げ、切り花を中心に営業している。地元に根付いてそろそろ七年ほどになるだろうか。それなりの常連さんも付いて、細々とながら商売をしていた。一人身の藤崎が食べていけるだけの収入があることは、本当にありがたいと思う。
店のオープンは九時半からで、今日も朝は暗いうちから起き出し準備をしている。
早朝、友人である美澄誠二の運転する車で卸売市場まで一緒に行く。毎日ではないが、そんな日はいつもよりも早起きだ。普段は前日にネットで注文をしておき、彼に配達をお願いしている。本当は毎日自分の目で見て選ぶ方がいいのだが、そこまで甘えるわけにはいかない。時間があれば車の免許を取りたいと考えている。
――配達とか、お前を乗せて行くくらいどうってことない。気にするなよ。
やさしすぎる友人がいつもこの調子だから、免許を取りに行くタイミングを見失った。甘えすぎてはいけないと思いつつ、その言葉にいつも助けられている。
(ガーベラ、今日はいいのが入ってるな)
水揚げのために茎を斜めにカットしていく。カーネーションもカサブランカも、年中通してよく出るため、少し多めに仕入れている。水を替え、下準備をしていると入り口で人影が見えた。お客様かと、藤崎は手にしていたハサミを置き、前掛けで手を拭きながら店先へと向かう。
「いらっしゃいませ」
近づくと、思った以上に長身の男性が、膝までのグレーのコートをひらりと揺らして振り返った。
「あ、えっと。お見舞いなんですけど、どういうのがいいかなと……」
ふわふわした癖毛は、日の光で少し赤く見えた。見上げて笑顔を作ろうとして、藤崎は止まってしまう。
(あ……)
面影が出会った頃の恋人に酷似していた。子供っぽい目元も、少し茶色の瞳も、目尻が少し下がっていて眉尻がキュッと上がっている所もだ。息が止まるくらい驚いた藤崎は、瞬きもしないで見つめていた。
「あの……、すみません。どうか、しました?」
「あっ、いえっ! ごめんなさいっ。えと、どんな、花をお探し、ですか……」
藤崎は両手をギュッと握りしめた。雰囲気が似ているだけで、目の前にいるのは彼ではない。こんなことで動揺してしまっては、せっかく足を止めてくれたお客様に変な風に思われてしまう。気を取り直し、藤崎は笑顔で顔を上げた。
都内の住宅街の一角にある『さんざし』は、街の小さなフラワーショップだ。昼間は青と白のストライプ柄のテントを店先に広げ、切り花を中心に営業している。地元に根付いてそろそろ七年ほどになるだろうか。それなりの常連さんも付いて、細々とながら商売をしていた。一人身の藤崎が食べていけるだけの収入があることは、本当にありがたいと思う。
店のオープンは九時半からで、今日も朝は暗いうちから起き出し準備をしている。
早朝、友人である美澄誠二の運転する車で卸売市場まで一緒に行く。毎日ではないが、そんな日はいつもよりも早起きだ。普段は前日にネットで注文をしておき、彼に配達をお願いしている。本当は毎日自分の目で見て選ぶ方がいいのだが、そこまで甘えるわけにはいかない。時間があれば車の免許を取りたいと考えている。
――配達とか、お前を乗せて行くくらいどうってことない。気にするなよ。
やさしすぎる友人がいつもこの調子だから、免許を取りに行くタイミングを見失った。甘えすぎてはいけないと思いつつ、その言葉にいつも助けられている。
(ガーベラ、今日はいいのが入ってるな)
水揚げのために茎を斜めにカットしていく。カーネーションもカサブランカも、年中通してよく出るため、少し多めに仕入れている。水を替え、下準備をしていると入り口で人影が見えた。お客様かと、藤崎は手にしていたハサミを置き、前掛けで手を拭きながら店先へと向かう。
「いらっしゃいませ」
近づくと、思った以上に長身の男性が、膝までのグレーのコートをひらりと揺らして振り返った。
「あ、えっと。お見舞いなんですけど、どういうのがいいかなと……」
ふわふわした癖毛は、日の光で少し赤く見えた。見上げて笑顔を作ろうとして、藤崎は止まってしまう。
(あ……)
面影が出会った頃の恋人に酷似していた。子供っぽい目元も、少し茶色の瞳も、目尻が少し下がっていて眉尻がキュッと上がっている所もだ。息が止まるくらい驚いた藤崎は、瞬きもしないで見つめていた。
「あの……、すみません。どうか、しました?」
「あっ、いえっ! ごめんなさいっ。えと、どんな、花をお探し、ですか……」
藤崎は両手をギュッと握りしめた。雰囲気が似ているだけで、目の前にいるのは彼ではない。こんなことで動揺してしまっては、せっかく足を止めてくれたお客様に変な風に思われてしまう。気を取り直し、藤崎は笑顔で顔を上げた。
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