想いは巡り、花は咲く

柚槙ゆみ

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第三章 忘れる悲しさ

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「ありがとうございます! じゃ、ホームページのデザイン考えましょう!」

 真宮は楽しそうにそう言いながら、鞄からノートを取り出した。そして何やらレイアウトを考えはじめた。

「遅くなったけど、夕食、食べて行ってね」
「あ、はい。助かります」

 真宮が作業をしている間に夕食の準備に取りかかった。誰かと一緒にこの部屋で食事をするのは久しぶりだ。美澄が来た時は大抵飲んでいて、しかも藤崎は飲めないのに勧められ、結局潰れる事が多かったからだ。だから純粋に食事を一緒に、というのは随分していない。

 背後で真宮の気配を感じながら、藤崎は腕をまくり気合いを入れた。冷蔵庫の中にある材料ではそんなにたいしたものができないだろう。もっと食材のあるときに声を掛ければよかった、と内心後悔していた。

(思いつきで言ったのがまずかった)

 キャベツと豚肉、タマネギと卵、にんじんが半分あった。春キャベツならよかったのだが、あったのは普通のものだ。少し固いかもしれないが、タマネギと一緒に一度ボイルすれば使えるだろう。

 藤崎は手際よく一口大に切ったタマネギを豚肉で巻き、さらにキャベツで挟み込んでいく。ソースは味噌ベースで少し濃いめにする。卵は残り少なかったにんじんと一緒にスープを作った。

「真宮くん、ごめんね。本当にあり合わせでしか作れなくて。今度、ちゃんとした食事ごちそうするから。誘っておいて、これじゃだめだよね」

 藤崎は申し訳ない、と笑顔を浮かべる。テーブルからパソコンをおろし、作りたての夕食を並べた。

「うわぁ、すご! あり合わせでこういうのできるんですね。俺、料理は全くできないので、作れる人はすごいと思います。いつもコンビニ弁当ばっかりなんで」

 うれしそうにしている真宮を見て藤崎も微笑んだ。このくらいで喜んでもらえるならお安いご用だ。

「そんな、あんまり言わないで。恥ずかしいよ。自信ないんだから」
「え? そうなんですか? すごく旨そうです」

 うれしそうに褒める真宮と向かい合って手を合わせ食事を始めた。彼のキレイなお箸の持ち方をチラリと見て、育ちがいい子なのだと分かる。食べ方もキチンとしているし、きっと家での躾がよかったのだろう。

「あの、藤崎さん」
「ん? なに? 口に合わなかった?」

 食事を口に運びながら、真宮が真剣な顔で口を開いた。

「藤崎さんはずっと一人で花屋をされているんですか? かなり大変何じゃないかなぁと思ったんですけど、今までバイトは入れたことあるんですか?」
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