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第三章 忘れる悲しさ
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「そ、そうなんだ……。ごめん、迷惑かけて。いつもは湯船に入らないでシャワーだけなんだけど、昨日は冷えてたから入ったら気持ちよくて、寝ちゃった、みたいで」
藤崎は謝罪といいわけをしながら頭の中で考える。
(もしかして、もしかして……)
素っ裸の自分を真宮は風呂場から引っ張り出し、体の水分を拭き取って布団へ寝かせてくれた。男同士なのだからいいじゃないかとも思う自分もいるが、意識のない時の無防備な全裸を見られるのは恥ずかしさが倍増する。
「それで、水分を取らせて……それから、その、そのまま俺も、隣で寝てしまったというか……」
なぜか言葉の最後の方で真宮は真っ赤になった。いったい何が、と疑問に思いつつ、その内容は信じがたい夢の醜態へと繋がり、それ以上は何も聞けなかった。
「そうか……。迷惑かけてばかりで本当にごめん。あの、今日は真宮くんお休みでいいよ。僕のせいでろくに寝れてないと思うし。自宅でちゃんと休んでもらって……」
「え、いや俺は別に。……でも藤崎さんがそう言うなら、今回はお言葉に甘えます。あ、それとやっぱり自宅でもページの作成をしたいので、USBにデータをコピーさせてもらっていいですか?」
目が覚めてから真宮はずっと藤崎と目を合わせる事はなかった。どこか距離を取られたような気がして仕方がない。パソコンからデータをコピーしている背中を眺めながら、言いしれぬ不安が広がった。
(嫌な思い、させちゃったんだよね)
データの移動を終えた真宮は早朝の朝靄がかかる薄暗い中、いつも仕事を終えて帰る時と同じように「お疲れ様でした」と頭を下げ、あっさりと行ってしまった。
時計を見れば美澄と市場へ行く時間が近づいている。ぼんやりしていられない、と立ち上がった藤崎は、布団を上げ風呂場へと向かう。洗い場には洗面器とシャワーノズルが転がっていて、湯船の蓋も開けっ放しになっていた。
慌てて引き上げられたそのままの状況で、どれほどの心配を真宮にかけたのかと落胆する。裸を見られたことくらいで動揺した自分の器の小ささにため息は深くなった。ひとつ間違えば死んでいたかもしれないのだ。ゾッとした反面、それでもいいと感じている自分が、フッと浮上してきた。
奥村が亡くなってしばらくは「後追いしかねない」と美澄が片時も目を離すことなく隣にいた時期があった。立ち直るまでに時間がかかったが、生きられなかった奥村の分まで生きる、と墓前で誓ったのを忘れていない。だから自分の中にまだそんな気持ちがあったことに驚いた。
「佑華ちゃーん、起きてるー?」
合い鍵を使って入って来た美澄は、ふざけたような間延びした声で呼んでいる。玄関先の扉が開き、外気が直接部屋へと流れ込んでくると、足先から凍えるような冷たい空気にブルッと体を震わせた。
藤崎は謝罪といいわけをしながら頭の中で考える。
(もしかして、もしかして……)
素っ裸の自分を真宮は風呂場から引っ張り出し、体の水分を拭き取って布団へ寝かせてくれた。男同士なのだからいいじゃないかとも思う自分もいるが、意識のない時の無防備な全裸を見られるのは恥ずかしさが倍増する。
「それで、水分を取らせて……それから、その、そのまま俺も、隣で寝てしまったというか……」
なぜか言葉の最後の方で真宮は真っ赤になった。いったい何が、と疑問に思いつつ、その内容は信じがたい夢の醜態へと繋がり、それ以上は何も聞けなかった。
「そうか……。迷惑かけてばかりで本当にごめん。あの、今日は真宮くんお休みでいいよ。僕のせいでろくに寝れてないと思うし。自宅でちゃんと休んでもらって……」
「え、いや俺は別に。……でも藤崎さんがそう言うなら、今回はお言葉に甘えます。あ、それとやっぱり自宅でもページの作成をしたいので、USBにデータをコピーさせてもらっていいですか?」
目が覚めてから真宮はずっと藤崎と目を合わせる事はなかった。どこか距離を取られたような気がして仕方がない。パソコンからデータをコピーしている背中を眺めながら、言いしれぬ不安が広がった。
(嫌な思い、させちゃったんだよね)
データの移動を終えた真宮は早朝の朝靄がかかる薄暗い中、いつも仕事を終えて帰る時と同じように「お疲れ様でした」と頭を下げ、あっさりと行ってしまった。
時計を見れば美澄と市場へ行く時間が近づいている。ぼんやりしていられない、と立ち上がった藤崎は、布団を上げ風呂場へと向かう。洗い場には洗面器とシャワーノズルが転がっていて、湯船の蓋も開けっ放しになっていた。
慌てて引き上げられたそのままの状況で、どれほどの心配を真宮にかけたのかと落胆する。裸を見られたことくらいで動揺した自分の器の小ささにため息は深くなった。ひとつ間違えば死んでいたかもしれないのだ。ゾッとした反面、それでもいいと感じている自分が、フッと浮上してきた。
奥村が亡くなってしばらくは「後追いしかねない」と美澄が片時も目を離すことなく隣にいた時期があった。立ち直るまでに時間がかかったが、生きられなかった奥村の分まで生きる、と墓前で誓ったのを忘れていない。だから自分の中にまだそんな気持ちがあったことに驚いた。
「佑華ちゃーん、起きてるー?」
合い鍵を使って入って来た美澄は、ふざけたような間延びした声で呼んでいる。玄関先の扉が開き、外気が直接部屋へと流れ込んでくると、足先から凍えるような冷たい空気にブルッと体を震わせた。
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