能力

臼井 リト

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序章

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『人類はいずれ滅ぶ。どんな危機が訪れようと、それが早まるかどうかどうかの問題だ。』

 これは、ある政治家が世界に向けて述べた言葉だ。
 今この世界には、人類滅亡の危機が迫っている。そのため人々の中には死の一文字しかなかった。
 これを言うと、この政治家も諦めたようなことを言っているようだか、彼女はそのあとこう叫んだ。

『しかし、それでも生きようともがき、道を見つけ、我々の先祖は生き抜いてきた。先祖が創った土台の上にいる我々が負けて、挫けてどうする。屈してどうする。我々は生きるためにここにいる。諦めるなどあってはならない!我々は戦い、明日を生きる!それだけだ!』

 彼女の存在───否、《それ》の存在を確認したことが、人類にとってとても大きな希望になっていることが、隣にいた家族や、彼女が演説している会場にいる人々を見て、嫌と言うほど理解させられた。
 この瞬間、人々の声が世界中に轟いた光景は今でも確かに脳裏に焼き付いている。

 その後、成長していくにつれて世界を知り、あの政治家がなぜ称えられていたのかも理解する。

《能力者》。それがキーワードであり答えでもある。

 そして、そのカテゴリーに自分が含まれていることを知ったのは、ごく最近だった。
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