声をなくした少女へ 声をなくした少女より

すず

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始まりの声

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 ―― 拝啓 声をなくしたあなたへ ――

お元気ですか?

なんか敬語ってすごい変な感じがするけれど、手紙の時ぐらい敬語で書かせてください。

今こっちでは桜が見頃の季節になりました。お花見はまだ出来てないんだけど、早くしたいところです。

街を歩くと、真新しい制服を身につけた高校生を毎日のように見ます。
それを見ると、あぁ、もうそんな時かとあなたと出会った時のことを思い出します。 

今日はあなたと出会った時のことを話したくて手紙を出しました。
あなたにはまだ伝えられてなかったことも、今伝えようと思います。

あなたと出会ったのは入学式の日、各クラスに分かれての自己紹介の時でしたね。。


――――――――――――

「―― はいッ、それじゃあこれから1年間みんなの担任をする〇〇だ!よろしくな!!」

「「、、よろしくお願いしまぁーーす」」

「 ― ん?なんだなんだ、みんな元気がないなぁ!入学式で疲れたかぁ?」

―― (あぁ、うざい)
今私にはその言葉以外出てこない。
だって長ったるい入学式の後に無駄にパリピ気味な担任のだるい話なんてうざい以外の何者でもないでしょ?
―― (あぁ、帰りたい帰りたい!!)
そんなことを思ったって帰れる理由でもないのに、この気持ちを隣の席の女子と分かち合う気軽さもないのに。

「ほらほら、これから1人ずつ自己紹介してもらうから、みんな仲良くなれよぉ~?」

―― 担任のガハガハ笑う声が続く中、名前順で自己紹介が始まった。
私はもちろん他人の自己紹介なんて聞く理由もなく、おもむろにイヤホンを取り出しスマホにセット、耳にイヤホンをつけた。
ただ、つけるだけで音楽は流さない。聴いてる風に見せるだけ。
あなた方の自己紹介なんて聞きたくないですって、まぁつけてるだけだから外部の音を完全に遮断出来る理由もなく、ちょくちょく声が聞こえてくのだけれど。


「趣味はフットサルです!」
「中学の頃は吹奏楽やってました。」
「これから1年間よらしく!」

など、自己アピールが続く中、私は音楽を聴いてる風に窓の方を見つめていた。

――― すると突然声がきこえなくなった。
最初は気に止めていなかったが、周りのざわめき声と黒板に何かを書いている音が聞こえ、だるそうにし黒板の方を見た。
そこには、目をクリクリさせて、不安そうにしているかなり華奢な女の子が立っていた。
髪型はいわゆるセミロングといったところだろうか。世間一般でいう可愛いと言える見た目をしていると思う。
そしてその子の後ろの黒板には、担任の汚く馬鹿でかい字で

「ーー澪」

と書かれた。

―― (澪?レイ?なんて読むんだこれ、)
私には見覚えの無い漢字だった。
そして担任は私が疑問に思った直後に読み仮名も振り始め、

「ーーみお」

と書いた。これまた汚い字だ。

―― (、、名前同じじゃん)

まぁ私とこの子では漢字も意味も全然違うのだろうけど。
この子の澪は透き通っていて、洗練された感じがするけど、私の美愛(みお)はただただ可愛い名前って感じがする。
それに、名前が被るとあだ名まで被ったりするからますます嫌になる。
みお1号、みお2号なんて呼ばれることになったら最悪だ。

―― いや、この子の方が嫌になるか

きっとこの子は可愛いから、スクールカーストのてっぺんのグループに入ることだろう。
んで、私はスクールカースト最底辺にいることだろうから、こんな地味な奴と同じ名前とか最悪~とか目の前で言われたり、、


―― ダメだ、考えるのやめよう
またひねくれてた想像をしてしまった。


っていうか、なんでこの子だけ黒板で名前書いてるんだ?
もしかして、澪って字は~~って意味でぇ、とか話しちゃう感じ?見かけによらずヤバそうな感じ?
なんて考えてる途中に担任がまたも馬鹿でかい声で話し始めた。

「― えっとな、実は澪は失声症っていう声が出なくなっちゃう病気なんだ。あ、生まれつきじゃなくて突然な?だから澪は、声は聞こえるけど声は出ないんだ。なので、澪との会話はメモとかに書いて字で会話してほしい。」
 

、、まじか。

――――――


私と澪という子は何かも違う存在なんだと、この時わかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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