ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

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第28回 昇降口

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「「……」」

 規制線を越えたと思ったとき、ワープしたかのように景色が変化し、俺たちの周りには下駄箱があった。ここは……学校の昇降口だ。

 つまり、俺と風間は生徒として学校ダンジョンに迎え入れられた格好なわけか。ここじゃまさに食うか食われるかで、卒業するのはかなり難しそうだが。

 ちなみに、昇降口の入り口は扉が開いたままになっていたものの、そこはやはりダンジョンってやつで、外へ戻ろうとしてもなんらかの力で跳ね返されて戻れないのがわかる。

 あ……俺の視界の片隅には新しいウィンドウが出ていた。これはマップウィンドウで、黄色いマーカーが二つ、俺と風間のものが重複していて、離れた場所にもう一つのマーカーが表示されている。

 これは野球帽の藤賀真優のものに間違いない。この場所からそんなに遠くない位置にいるように見えるが、ここはダンジョンだしそう簡単に近付くことはできないはず。

 ほかに生きている生徒たちもいるかもしれないが、こういう状況だからとっくにどこかで身を潜めているだろうし、ダンジョンを攻略するまで我慢してもらうしかない。一緒に連れて行った場合、モンスターやボスとの戦いで巻き添えになって死なせてしまうなんてこともありうるからだ。

「風間さん、まずは野球帽を探しましょうか。そうすることで確実に仲間を一人増やせますし」

「そ、そうだの……。しかし、学校なんて久々だ。あまり入学したくないところだが……」

「確かに……」

 も死ぬほど痛そうだしな。まあでも、もう入学しちゃったものはしょうがないってことで、とにかく野球帽のやつを探すことになった。

 あいつも俺のパーティーに所属していたってことで、風間のようにスレイヤーになっている可能性はある。

 それでも、ダンジョンが油断できない場所なのは風間のビビリ具合を見てもよくわかるし、なるべく早く野球帽と合流したい。

 しかし、【クエスト簡略化】スキルはボスまでの最短距離はいけるものの、人探しとなると話は別だ。

 野球帽が学校ダンジョンのどこにいるのかはまったくわからないが、とにかく歩き回って見つけ出す必要がある。あいつのマーカーがまったく動かないのが気懸りだが……。

「さあ、行きましょうか、風間さん」

「……ちょ、ちょっと待ってくれ。ちと腹痛が――」

「――風間さんっ!」

「わ、わかっとるから、行くから凄まんでくれっ……!」

 俺たちは学校ダンジョンの昇降口を抜け、一階の廊下を歩き始めたわけだが、少し緑がかったような不気味な薄暗さと、足音さえも際立たせるような静寂を前にして、スレイヤーの風間が怯むのもわかる気がした。

「――きゃああああぁっ!」

「「っ!?」」

 こ、この悲鳴は……? 俺は風間とはっとした顔を見合わせたあと、悲鳴がした方向へと走った。



「「あっ……!」」

 通路の奥、突き当たりの左側に二階への階段があって、その途中の踊り場で女子生徒がうずくまっていた。そこから血が階段を伝ってダラダラと流れ落ちていることから、かなりまずい状況なのがわかる。

「お、おい、大丈夫か!?」

「大丈夫かあ!?」

「…………」

 俺と風間の言葉に対し、少女は何も答えない。それだけ恐ろしいことがあったってことか?

「もう心配ないぞ!」

「そうだそうだ、わしが今助けるぞい!」

 風間が先駆けて階段のほうへ向かったかと思うと、途中で姿が消えてしまった。

「か、風間さん……?」

 これは、まさか……。

「――こ、これは一体どうなっとるんだ!? 踊り場とはまったく別の場所に出たぞい!」

 風間がびっくりした顔で戻ってきた。そうか、ここから少しでも先へ行くとワープするようになっているんだ。ってことは……。

「おい、そこの生徒、聞こえるか!?」

「な、何を言っとるんだ、佐嶋よ、こんなに近くにおるんだから聞こえるに決まっとるだろ!」

「……いや、まったく聞こえてないし、こっちの姿も見えてはいない……」

「な、なぬっ!?」

 実際、女子生徒は俺たちの会話に対し、なんの反応もしてはいなかった。

 すぐ近くにいるように見えるのに、不思議だがこれがダンジョンだ。とにかく、こっち側からはあの女子生徒のところへは行けないようになっているということだ。

 ただ、彼女の悲鳴はあのとき聞こえたはずだが……って、まさか……。

「さっ、佐嶋、どこへ行くんだ!? わしを置いていくなあぁあっ!」

 俺はもしやと思ったときには既に走っていた。さっき、通路にいたときは悲鳴が聞こえてきたということは、元いた場所の近くにもワープゾーンがあって、そこから踊り場へ行けるようになっているかもしれないからだ。
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