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第91回 一瞬
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「――来るぞっ!」
「「っ……!」」
いよいよボスの攻撃のカウントダウンがゼロになり、そのタイミングで俺たちは過去を振り返ることにした。
今まで、色んなことがあった。コンビニダンジョン、学校ダンジョン……それにこの病院ダンジョンのボスに辿り着くまでのことを、俺はゆっくりと噛みしめるように思い出していた。
そういえば、風間は今頃元気にしているだろうか。彼と一緒にダンジョンを攻略していたのが、遥か昔のようにすら感じる。
少しでも過去から現実に意識を引き戻せば、どんな目に遭うかわからないってことでとんでもない重圧だったが、俺たちの足元はセーフゾーンを維持できていた。
そこはやはり、普段から虐殺者の羽田や絶対者の杜崎教授に鍛えられてるってのが大きいんだろう……っと、こんなことを考えてたら危ない。今はとにかく過去を振り返るんだ。過去を――
「――うわあぁあっ!」
例によって、生贄が二階から放り込まれた。スレイヤーの一人だ。前回同様、館野が実験台にされる前に部下を殺そうとしたのか矢を放ったものの、直前で見えない何かに弾かれるのがわかった。
「フンッ、私の邪魔をしようとしても無駄なことだぁ……」
このなんとも耳障りな声を聞かずとも、ここにいる誰もがしっかり理解できていることだろう。全ての元凶があの男であるということは……。
「ひああぁぁぁっ……!」
想像できていたことだったが、スレイヤーはまたたく間に若々しくなり、赤ん坊どころか胎児になってしまった。これももう、生きることは不可能な状態だろう。ある意味、老人化よりグロいな、これは……。
「なるほど、逆か。ネクロフィリアの佐嶋ぁ、どうだ、あれを見て興奮したかぁ……?」
「……いや、いくら死体同然といっても性別が違うし、幼すぎるだろ、これは……」
俺は羽田に対し、湧き上がってくる憤りを隠すのに必死だった。ここで感情を爆発させてしまえば、今まで耐えてきたことが全て水の泡になってしまうからだ。
やつは俺を殺すタイミングを見計らっているわけで、この場面は冷静さを維持し、のらりくらりとかわしていくしかない。
違う意味で視界が真っ赤になりそうなところで、残り1分というカウントダウンが表示された。ボスは時計形態のままだったが、一つだけ今までとは決定的に違う点があった。
それは、呼吸するように動いていた時計の針が完全に停止したことだ。このことは一体、何を意味しているのか。
未来、過去ときたから、今度は現実を見ろってことか? だが、現実を実感する方法はなんだ……? 今を見る、すなわち、現状を認識しろってことだよな……。
「…………」
俺はふと思い立って、野球帽の顔をじっと見つめたが、足元はウォーニングゾーンのままだ。予想が外れた……?
いや、これは相手がもし過去とか未来を考えていた場合、あるいはそういう風にこっちが心配したとき、思いが別方向にブレてしまって、今を直視していることにはならないんじゃないか?
「な、なんだよ工事帽」
「いいから、野球帽。黙って俺だけを見つめろ……」
「ちょっ……!?」
恥ずかしさはあったが、やめるつもりは断じてなかった。不思議なことに、野球帽と見つめ合っている間は俺たちの足元がちゃんとセーフゾーンになったからだ。
それと、不思議な感覚もする。まるで時が止まったかのような。これぞ、今の一瞬を見つめることかもしれないが、やはり少しは照れるな……って、肝心なことを忘れていた。原沢だ。
「原沢、俺を見ろ」
「は、はあぁっ!?」
「いいから」
「ぬ、ぬぬっ……! わかった、じっくりたっぷり君を見つめてやるから、覚悟しろ!」
「…………」
原沢が興奮した様子で曇った眼鏡を近付けてくる。一体何を覚悟するんだか。こいつは照れてるのか怒ってるのかさっぱりわからんな。
とにかく俺たちは顔を向き合わせ、お互いの顔をそれぞれ見つめ合った。この男がいると恥ずかしさも軽減されるのでちょうどいい。
「「「……」」」
まもなくカウントダウンがゼロになり、ボスの攻撃が始まる中、このトライアングルフォーメーションをしっかりとキープする。
ゴゴゴゴゴッ――!
「「「――っ!?」」」
フラッシュとともに地鳴りが起きたかと思うと、手術室に鎮座した巨大時計が見る見る歪んでいくとともに、大型のウィンドウが表示された。
『おめでとうございます、あなたは病院ダンジョンを見事クリアし、報酬のレアスキルである【時間回復】を獲得しました』
「…………」
クリアしただと。でも、何もしてないのに一体どうして――って、そうか、わかったぞ。俺のレベルはまだ低いから死神の大鎌の即死効果が効いたとは考えにくいし、ボスが進化しすぎて退化した格好なんじゃないか。
んで、それを一番促進させたのが自分だから、こうして攻略したスレイヤーとしてレアスキルをゲットできたってわけだ。
ようやく実感が込み上げてきた。本当に、ここまで長かったな……。
今後どうなるかなんてわかるはずもないが、これから俺たちの本当の戦いが始まるといっても過言じゃないだろう。
「「っ……!」」
いよいよボスの攻撃のカウントダウンがゼロになり、そのタイミングで俺たちは過去を振り返ることにした。
今まで、色んなことがあった。コンビニダンジョン、学校ダンジョン……それにこの病院ダンジョンのボスに辿り着くまでのことを、俺はゆっくりと噛みしめるように思い出していた。
そういえば、風間は今頃元気にしているだろうか。彼と一緒にダンジョンを攻略していたのが、遥か昔のようにすら感じる。
少しでも過去から現実に意識を引き戻せば、どんな目に遭うかわからないってことでとんでもない重圧だったが、俺たちの足元はセーフゾーンを維持できていた。
そこはやはり、普段から虐殺者の羽田や絶対者の杜崎教授に鍛えられてるってのが大きいんだろう……っと、こんなことを考えてたら危ない。今はとにかく過去を振り返るんだ。過去を――
「――うわあぁあっ!」
例によって、生贄が二階から放り込まれた。スレイヤーの一人だ。前回同様、館野が実験台にされる前に部下を殺そうとしたのか矢を放ったものの、直前で見えない何かに弾かれるのがわかった。
「フンッ、私の邪魔をしようとしても無駄なことだぁ……」
このなんとも耳障りな声を聞かずとも、ここにいる誰もがしっかり理解できていることだろう。全ての元凶があの男であるということは……。
「ひああぁぁぁっ……!」
想像できていたことだったが、スレイヤーはまたたく間に若々しくなり、赤ん坊どころか胎児になってしまった。これももう、生きることは不可能な状態だろう。ある意味、老人化よりグロいな、これは……。
「なるほど、逆か。ネクロフィリアの佐嶋ぁ、どうだ、あれを見て興奮したかぁ……?」
「……いや、いくら死体同然といっても性別が違うし、幼すぎるだろ、これは……」
俺は羽田に対し、湧き上がってくる憤りを隠すのに必死だった。ここで感情を爆発させてしまえば、今まで耐えてきたことが全て水の泡になってしまうからだ。
やつは俺を殺すタイミングを見計らっているわけで、この場面は冷静さを維持し、のらりくらりとかわしていくしかない。
違う意味で視界が真っ赤になりそうなところで、残り1分というカウントダウンが表示された。ボスは時計形態のままだったが、一つだけ今までとは決定的に違う点があった。
それは、呼吸するように動いていた時計の針が完全に停止したことだ。このことは一体、何を意味しているのか。
未来、過去ときたから、今度は現実を見ろってことか? だが、現実を実感する方法はなんだ……? 今を見る、すなわち、現状を認識しろってことだよな……。
「…………」
俺はふと思い立って、野球帽の顔をじっと見つめたが、足元はウォーニングゾーンのままだ。予想が外れた……?
いや、これは相手がもし過去とか未来を考えていた場合、あるいはそういう風にこっちが心配したとき、思いが別方向にブレてしまって、今を直視していることにはならないんじゃないか?
「な、なんだよ工事帽」
「いいから、野球帽。黙って俺だけを見つめろ……」
「ちょっ……!?」
恥ずかしさはあったが、やめるつもりは断じてなかった。不思議なことに、野球帽と見つめ合っている間は俺たちの足元がちゃんとセーフゾーンになったからだ。
それと、不思議な感覚もする。まるで時が止まったかのような。これぞ、今の一瞬を見つめることかもしれないが、やはり少しは照れるな……って、肝心なことを忘れていた。原沢だ。
「原沢、俺を見ろ」
「は、はあぁっ!?」
「いいから」
「ぬ、ぬぬっ……! わかった、じっくりたっぷり君を見つめてやるから、覚悟しろ!」
「…………」
原沢が興奮した様子で曇った眼鏡を近付けてくる。一体何を覚悟するんだか。こいつは照れてるのか怒ってるのかさっぱりわからんな。
とにかく俺たちは顔を向き合わせ、お互いの顔をそれぞれ見つめ合った。この男がいると恥ずかしさも軽減されるのでちょうどいい。
「「「……」」」
まもなくカウントダウンがゼロになり、ボスの攻撃が始まる中、このトライアングルフォーメーションをしっかりとキープする。
ゴゴゴゴゴッ――!
「「「――っ!?」」」
フラッシュとともに地鳴りが起きたかと思うと、手術室に鎮座した巨大時計が見る見る歪んでいくとともに、大型のウィンドウが表示された。
『おめでとうございます、あなたは病院ダンジョンを見事クリアし、報酬のレアスキルである【時間回復】を獲得しました』
「…………」
クリアしただと。でも、何もしてないのに一体どうして――って、そうか、わかったぞ。俺のレベルはまだ低いから死神の大鎌の即死効果が効いたとは考えにくいし、ボスが進化しすぎて退化した格好なんじゃないか。
んで、それを一番促進させたのが自分だから、こうして攻略したスレイヤーとしてレアスキルをゲットできたってわけだ。
ようやく実感が込み上げてきた。本当に、ここまで長かったな……。
今後どうなるかなんてわかるはずもないが、これから俺たちの本当の戦いが始まるといっても過言じゃないだろう。
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なんかずっとやられっぱなしやな
虐殺者に対してなら結構やり返してますけどね。