27 / 87
27.手加減
「……グルルァ。やつらめ、まだ来ないつもりか……」
「ウミュァア……クオンも待ちくたびれました……」
「まぁ待て、フェリル、クオン。少しでも俺たちをイラつかせようっていうやつらの慎ましい作戦なんだろうから大目に見てやれ。まあ、俺もそろそろ待つのは飽きたし、いい加減少しやつらが来るのを早めてやるとするか」
「「ええ?」」
憮然とした様子のフェリルとクオンに俺は目配せすると、早速口笛を吹きつつ勇者アレクの像に唾を吐きかけ、何度も何度も蹴ってやった。結構周りに人がいるのに誰も咎めるものがいないのは、それが日常茶飯事だからなんだろう。
――お、来た来た。さすがに愛するアレク様の銅像が俺なんかに蹴られるのは我慢できなかったらしい。それにしてもロクリアのやつ、笑みを浮かべて余裕のつもりなのかは知らんが、口元が引き攣ってるのはバレバレなんだよ。ん、なんか見慣れない男もいるが、おそらくあいつが俺とマチに【老化】スキルを使った張本人なんだろうな。
「こんにちは。少し遅れてしまったみたいね。それにしても、賢者と呼ばれていたくせに随分と幼稚な真似をするのね」
「……いやー、俺も大人げないとは思ったんだけども、ちょっとイライラしちゃってね」
「だからといってアレク様の像にあんな真似をするのはやりすぎだと思うわ」
「バブ……」
「ですよぉ……」
「まったく。ガキじゃあるまいし」
「実にしょうもないですなあ、オル……コホン、賢者どのは……おっと、自己紹介が遅れました。私は【老化】スキルの持ち主であるゾルフと申します」
ロクリア、アレク、マゼッタ、エスティル、そしてゾルフという白髪交じりの男から手厚く歓迎されて俺はなんとも嬉しくなる。銅像を侮辱したのがよく効いてる証拠だな。
「グルルァ、お前たちが待たせるからであろう」
「ウミュァアッ、そうですよ」
「まぁまぁ、二人とも落ち着けって。俺もさすがにまずいかなーって思ったんだけど、こんなに落書きばかりの銅像だし、ちょっとくらいストレス発散してもいいかなーって……」
「……く、口の減らない男ね……」
ロクリアの顔が見る見る赤くなっていくのが面白い。
「いや、そんなに怒るとは思わなかったよ、悪かったな」
俺はニコッと笑ってやったが、何故かロクリアたちの蔑むような視線は強くなるばかりだった。
「汚物……無能……いえっ、なんでもないわ……」
「あ、それも銅像に書いてあったな」
「うっ……」
「「ロ、ロクリア!?」」
「バブッ!?」
「ロクリア様!?」
ロクリアのやつ、俺の台詞が相当効いたのかよろめいたもんだから仲間に支えられてて、ちょっと可哀想になってきたな。そろそろ話題を変えてやるか。幼馴染のよしみだ。もっとも、あんまり精神的にダメージを負わせちゃうとここで倒れかねないし、もっと楽しみたいだけなんだがな……。
「さあ、早速だが俺の若さを返してくれないか? ゾルフとやら」
「え、えっと、はい、それでは……」
ゾルフが困惑した様子でロクリアと顔を見合わせている。彼女も軽くうなずいるし、何か妙なことを計画してそうだな。
「醜い醜いお姿が、それで本当に治るのかしらね……?」
ロクリアの目が、ほんの一瞬だけだが活き活きと輝いたのを俺は見逃さなかった。なるほど、【老化】スキルでは元に戻せないのを知っているというわけか。んで、あとでネタバレして恥をかかせようって魂胆だろう。それならそれで裏をかくことができそうだな。
「グルルァ、オルドを醜い姿にしたのはお前たちだろう」
「ウミュァア、そうですよ。オルド様に謝罪してください」
「まあまあ、フェリル、クオン。今の俺は確かにしわだらけで醜いからな。いい歳して赤ん坊のようなのもいるが……」
「バ、バブッ!?」
「「ププッ……」」
俺もフェリルやクオンのように笑いそうになったが堪えた。相手が赤ちゃんなだけに、大人の余裕ってやつを見せてあげないとな……。
「……あらまあ。ニヤニヤしちゃって……随分と性格が悪くなったのね、賢者さん。それとも、元々そうだったのかしら……? 私の知ってる幼馴染は、ご立派な人格者さんだからか何を言われても言い返さない、それはもう素晴らしい低姿勢な方だったと思うのだけれど……。それとも無理をしてるのかしらねぇ?」
「……さあな? とにかく、早く元に戻してくれ」
この辺で悪口の応酬を避ける。手加減を忘れないようにしないと相手がすぐ倒れちゃうからな。面倒ではあるが……。
「……あれれ……おかしい。こんなはずでは……」
中年の男ゾルフがオロオロしている。あまりにもわざとらしくて芝居だとバレバレだ。まあとりあえず乗ってやろう。優勢すぎるとつまらないから、蟻の通る道くらいは残してやる。通ったら無慈悲に踏み潰してやるが。
「……ん? ゾルフとかいうやつ、早く俺の見た目を元に戻してくれ。何やってるんだ」
「まったくだ。ふざけるな、グルルァ……」
「ウミュァアッ、早くしてください……」
よしよし、フェリルとクオンも便乗してくれている。その甲斐あって、俺の演技臭い台詞も中和されたらしく、やつらの表情が見る見る明るくなっていくのがわかった。うんうん、いい感じだ。堕とすにしても少しは調子に乗ってくれないとな……。
あなたにおすすめの小説
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
レンタル従魔始めました!
よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」
僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。
そのまま【テイマー】と言うジョブに。
最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。
それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。
そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか?
そのうち分かりますよ、そのうち・・・・
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。