支援者ギルドを辞めた支援術士の男、少年の頃に戻って人生をやり直す

名無し

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9話 反抗の機会

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「イ、イテテ……」

 日も暮れたので、教官のいるテント前に僕を含めてみんな集まったわけだけど、案の定苦しそうに顔をしかめたゴードンが出てきた。

「きょ、今日は悪いもんでも食ったのか、私はどうも具合が悪いのだ……。なので、見習いどもの指導はミハイネ、お前に任せる……」

「はあ。わかったわ、ゴードン。相当に調子が悪いようだし、ゆっくり休んでて頂戴。きっと明日には治るでしょうから」

 ミハイネが呆れ顔で溜め息交じりに言うと、みんなも薄々勘付いてるのか周りから失笑が漏れた。仮病は治療できないからね。

「それじゃ、あなたたち、行くわよ。列も気も乱さないようにね」

 そういうことで、補佐官のミハイネを先頭にして、僕たちは薄暗い墓地をゆっくりと歩き始めた。夜の墓地はやはり迫力があり、既に真っ青になっている者も。

 これから、彼女を含む中級支援者による浮遊霊や地縛霊の浄化を、僕たち支援者見習いが見学することになる。

 ダンジョンと違って灯りがないので、ミハイネが支援術で手元を光らせ、周りを照らしながら歩いていた。

 この場合、補助術と浄化術の両方をバランスよく使う必要があるので、決して簡単ではない。

 要するに、補助術で気力、すなわち陽の気を活性化させて手元に神経を集中し、浄化術で闇という名の陰の気を一時的に払えばいいんだけど、バランスが崩れるとすぐに消えるため、やれといわれて直ちにできるものじゃないんだ。

 僕もやろうと思えばできるんだけど、さすがにそれをやってしまうとさらに反感を買いそうだし無駄なのでやめておいた。

 一回目の研修が終わって以降、敵意をひしひしと感じるようになってるしね。それが誰なのかは容易に察しが付くけど。

「へっ……こんなの、怖くもなんともねえよ!」

 まもなく口を開いたのはダランだった。

 最近存在感が薄くなってるから、反抗の機会を窺ってるんだろう。口笛を吹きつつ、無理矢理笑顔を作っていた。かなり引き攣ってるが。

「あらあら、あなたダランっていうんだっけ? 見習いなのに随分勇ましいわね。みんな怖くて黙り込んでるのに」

「う、うっす! 超美人のミハイネ先生に褒められて光栄っす!」

「ふふっ……」

 ミハイネは小ばかにしたように薄く笑ってはいたが、それでもダランからお世辞を貰って満更でもない様子。そういや、前の世界線でもお互いに褒め合ってるところを何度か見かけた気がするし、二人の相性は悪くないんだろうね。

「「「「「あっ……」」」」」

 僕たちの上擦った声が被る。向こうのほうに、火の玉のようなものが一瞬浮かんで見えたからだ。すぐに消えたけど、微かに人の顔をなしていたような……。

「こ、怖いよう……」

「ひっく……」

「帰りたい……吐きそう……」

 それ以降、堰を切ったように周りから次々と弱音が飛び出してくる。

「み、み、みんな、落ち着くのよ。これしきのことで、未来の支援者が動揺してどうするの……!?」

「ミ、ミハイネ先生の言う通りだ! ぜぜっ、全然怖くねえっての! アホかよ、バカかよ!」

 ミハイネとダランが共鳴し合ってるけど、傍から見たらこの二人が一番動揺してそうだ。

 ここは嫌われてもいいので、僕がはっきり言わなきゃいけないだろう。

「霊は強がれば強がるほど寄ってくるから、あえて強がるようなバカな真似はやめたほうがいいと思う。その人が一番怖がってるってことが霊にはバレバレだから」

「っ……!?」

 その直後だった。立ち止まったダランの肩を、病的なまでに白い手が触れていた。その背後には誰もいないのに。

「う、ううう、うしょ……」

 ダランは恐怖のあまりか金縛りを起こしてるらしく、振り返ろうとしても振り向けない様子だったが、彼の後ろに強い悪意を持った霊がいるのは明白だった。悪霊からしてみたら、最もくみしやすい人物としてダランを選んだ格好なんだろう。

「だ、だしゅけてえぇぇ……」

 まもなくダランは白目を剥き、失神したのか倒れてしまった。

「だ、だ、誰かっ! は、早く、じょじょっ、除霊しなさいっ!」

 彼女自身も中級支援者なのに、指示だけは偉そうにするミハイネ。

 それから何人かの中級支援者によって、浄化術がかけられて悪霊の手は消失した。

「…………」

 それでも、僕にはわかる。今のはかなり強力な悪霊だったし、あんな慌ててやったような適当な浄化術じゃ太刀打ちできないと。一時的には消せるけど、成仏したわけじゃないしあいつはまた近付いてくるはず……。
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