支援者ギルドを辞めた支援術士の男、少年の頃に戻って人生をやり直す

名無し

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18話 噂


「あれ……?」

 連休が明けてから一週間ほど経ち、僕はいつものように支援者ギルドへ出発したわけなんだけど、すぐにに気付いて立ち止まった。

 靴紐が切れてしまったんだ。近くの店で購入したばかりの新品の靴だし、きつく縛ってるわけでもなかったのに……。

 なんとも嫌な予感がするけど、どこで何が起こるのかまったく想像がつかない。確か連休のあとは一月くらい研修とかなくて、ギルドで上級支援者たちによる支援術の講義があるだけのはず。

 ただ、細心の注意を払うのに越したことはなさそうだ。誰かにぶつかって怪我をさせてしまうとかあるかもしれないしね。そういうわけで、僕はいつも以上に周りを気にしながら慎重にギルドへと向かった。

「――クロム、おはよう」

「あっ……」

 花畑に囲まれた道中、誰かに話しかけられたと思ったら同僚のヴァイスだった。

「やあ、ヴァイス、おはよう」

「クロム、ちょっと話がある。耳を貸してくれ」

「あ、うん……」

「ギルドでお前についてのを立てられてるぞ」

「僕についての妙な噂? どんな?」

「クロムはずば抜けた才能を持った神童で、いずれはギルドマスターのバロンさえも超えるだろうって」

「え、えぇ……?」

「おそらく、この噂を意図的に流したのはお前を害しようとしてる連中だ」

「そうだろうね。ここまで僕を持ち上げる理由は何かな」

「それはわからないが、何か狙いがあるんだろう。とにかく気を付けろ」

「うん。ありがとう、ヴァイス」

 そういえば、ほかの支援者の姿もここまで来るとちらほら見られるんだけど、その噂のせいなのかどうにも棘のある視線を幾つも感じる。

 嫉妬心を煽ることによって僕の敵を増やして孤立させる、みたいな狙いがあるんだろうか。ただ、ほとんどの人は我が身のことで精一杯だろうし、あまり意味がないように思うんだけどね。



「――えー、本日はだなっ! 上級支援者のカルロス先生による講義が行われる予定だったのだが、病欠により急遽変更となった!」

 ギルド内にて、中級支援者のゴードン教官の声にどよめきが上がる。ってことは、まさか……。

「よって、これより三回目の研修に行くことになった!」

 おいおい、三回目の研修をもうやるっていうのか……。二回目の研修から十日くらいしか経っていないのに。確か、前の世界線では三回目の研修は二回目が終わってから約一カ月後だったはず。

 これには、ほかの支援者見習いたちも動揺した様子でお互いの顔を見合わせていた。研修は色んな意味で負担がかかるから間隔を空ける必要があるのに……。

「静かにするのだっ! いいかっ! 前回の件で、お前たち見習いどもは墓地で倒れていたと聞くっ! そのような情けないやつらは、鍛えられて当然だろう!」

 ゴードン……自分だけ先に帰っておいてよく言う。

「ま、一人だけ倒れなかった有能なやつがいたそうだがな。クロムとかいう、とんでもない才能を持った新人だ。お前たちも彼を見習うようにっ!」

「「「「「はいっ!」」」」」

「…………」

 妙だ。僕を毛嫌いしてるはずのゴードンがここまで褒めるようなことを言うなんてね。

 まさか、彼が噂を流してる張本人だろうか? 仮にそうだとして、僕の敵を増やす作戦にしてはあからさますぎるし、ちょっと中途半端な気もする。とはいえ、一体どんな目論見が隠れてるかわからないので、充分に気を付けておかないと……。



 それから僕たちはいつも通り徒歩で研修場所へと赴くことになった。

 前の世界線では、三回目の研修場所は支援者ギルドから西にある修道院だったはずが、まったく逆の東のほうへ向かっているのがわかる。

 ってことは、研修場所も違うところになるってことだ。自分たちは一体どこへ向かうっていうんだろう。

「――もうすぐ到着だぞ、あそこだっ!」

 ゴードンが唾を飛ばしながら指差した場所は、広い庭園のある屋敷だった。

 あれは……どう見ても貴族の家だ。以前の世界線で見かけたような覚えはあるけど、中に入ったことは一度もない。

 手入れはしっかりされてるみたいだし、綺麗なところではあるんだけど、何か得体のしれない不気味な空気を漂わせていた。絶対に足を踏み入れてはいけない、そんな雰囲気なんだ。

 ほかの見習いたちもそんな薄気味悪さをひしひしと感じるのか、いずれも不安そうな顔つきをしていた。

「お前たちっ! そんな顔をしなくても大丈夫だ! なんせ、こっちには大天才のクロムがいるのだからなあっ!? がははははっ!」

「…………」

 一体何を考えてるんだか。ゴードン教官の言葉に一層不安を掻き立てられつつ、僕たちは重い足取りで屋敷の中へ入ることに。

「こちらです。どうぞ」

 不愛想なメイドに案内されて奥へと進んでいくと、そこにはが広がっていた。こ、これは……。
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