外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し

文字の大きさ
9 / 93

9話 規格外


「……」

 ベテラン冒険者でも恐怖のあまりたじろぐといわれる『鬼哭の森』を前にして、僕は思わずごくりと息を呑む。レインボースパイダーのスキル【偽装】を獲得するためとはいえ、まさかまたここに来ることになるなんてね……。

 いずれ成長したときに再度チャレンジしようって気持ちはあったけど、こんなに早くなるとは夢にも思わなかった。ヘイムダルの都近くの長閑なフィールドと違って、ここは人の気配がまったくないことも相俟って本当に危うい空気で充満してると感じる――

「――きゃああぁぁぁっ!」

「えっ……?」

 こ、この悲鳴は、まさか……。

 声がした方向へ跳躍していくと、森の入り口で女の子がモンスターに襲われていた。やっぱりあのちょっぴり反抗的な子だ。あんな危険な目に遭っておいて、どうしてまた一人で森に入ったんだ……って、それどころじゃない。早く助けないと。しかも今回の相手はゴブリンじゃない。

 あ、あ、あ……あれは……。

 名前:オーガ
 レベル:35
 種族:オーガ族
 属性:地
 サイズ:大型

 装備:
 怪力の腕輪

 スキル:
【殺意の波動】

 やっぱりそうだ……。モンスターの中でも規格外の膂力を持つといわれるオーガ族だ。しかもレア装備の怪力の腕輪まで持ってることから、普通のオーガよりもずっと強いはず。もしそんなのと戦ったらどうなっちゃうんだ……。

「う……うわあああぁぁぁぁっ……!」

 僕は一気に高まってきた恐怖心を削除しながら向かっていく。もうこうなったら理屈じゃない。とにかくあの子を助けなきゃという思いで、自分が持つありったけの負の要素をオーガの元で復元させて飛び蹴りを敢行すると、鈍い音とともにほんの数歩だけ後ずさりさせることができた。

「は、早く逃げて! 今のうちに――」

『――オオオオオオォォッ!』

「はっ……!?」

 し、しまった、オーガの咆哮とともに足元に魔法陣が浮かび上がり、ほぼ一瞬で回転するのがわかった。スキルを使われたんだ。相手の詠唱速度が速すぎたせいで、ルーズダガーをもってしても削除が追い付かなかった……。



 ◆◆◆



「ほう。そんなスキルがあるのか」

「うん。凄いでしょ」

 そこはヘイムダルの都のとある武具屋の中、兎耳の少女が窓際で一人の男と対峙していた。

「あぁ、規格外だな。【鑑定眼】を持つお前が熱を上げているだけあって素晴らしいスキルだ。それなら早めにに引き込んでおいたほうがよさそうだな」

「それはまだダメ。確かに現時点でも彼の能力があれば心強いけど、折角伸び伸びやってるところなのに成長を妨げる結果になっちゃうかもしれないし……」

 少女の言葉に対し、男はさも意外そうに首を傾げる。

「ん……? それだけ才能を見込んでるっていうのに、独占欲の強いお前らしくもない距離の取り方だな。向こう側に見つかったら即座に利用されてもおかしくない能力だというのに。まさか、引き摺ってるのか? のこと……」

「お兄ちゃん……本当にそう思ってる?」

「ま、んなわけないか」

「フフ……ボクの性格、よくわかってるね。最高の能力が芽吹いてるところで、早めに摘むような愚かな行為を繰り返したくないだけ。凄い能力だからってそれを利用するなら向こう側のやってることとあんまり変わらないし、ひっそりとサポートするくらいの姿勢でいたほうがきっとあの子も成長すると思うから……」

「わかったわかった、そういうことなら俺も迂闊に手出しせずになるべく陰から見守ってやるつもりだ。その大物の少年とやらを、な」

「ありがと。お兄ちゃん大好き」

「そいつよりもか?」

「んー……それはまだよくわからないかな」

「ハハッ。ミュリアは相変わらずとんでもない小悪魔だな。能力込みとはいえ、それだけ入れ込んでることに正直嫉妬するが仕方ない」

 男はいつの間にかいなくなり、その場には黄昏に染まる空を祈るような表情で見上げる少女ミュリアだけが残った。

(カイン君……いつか真実を知ったとき、ボクたちに失望するかもしれないけど許してね。は何がなんでも負けられない、死んでも負けるわけにはいかないんだ……)
感想 17

あなたにおすすめの小説

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【しかも】冒険者クランに入ろうとしたけど、門前払い受けた件【百回】

一樹
ファンタジー
所有スキル一個。 魔力ゼロ。 それを理由に冒険者クランに入れず、様々なクランから門前払いを受けていた少年、ウィン。 腕っ節には自信があったものの、それすら見て貰えなかった。 そんなウィンが、出会ったのはエールという少女だった。 彼女の危機を救ったウィンは、その強さを見込まれ、彼女が所属するクランへ入らないか、と勧誘を受けるのだった。 途中から、主人公が拳を使って成り上がっていきます。

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。