44 / 93
44話 生意気
しおりを挟む「――こ、これは……」
強烈な死臭が僕の顔面を引っ掻く。
フィラルサの村は文字通り死体の山で溢れていて、子供から老人まで見るも無残な姿で横たわっていた。すぐに臭いや動揺、恐怖等を削除したけど、唯一……怒りの感情だけは捨てなかった。
「――た、たすっ……助けてえぇっ……!」
「あ……」
一軒の家の窓から一人の幼い女の子が飛び降りて裸足でこっちに駆け寄ってきたかと思うと、僕の後ろに素早く隠れた。
「「「「「グヘヘヘッ……」」」」」
「……」
それからすぐ、僕らは猪人族らしき鎧を纏った大男たちに囲まれてしまった。
「ひっく……お、お兄ちゃん、に、逃げなきゃ、ダメだよぉ……ぐすっ……この獣人さんたち、に、パパも、ママも、殺されちゃった、から……えぐっ……」
「そっか……。辛かったね。でももう大丈夫だから、そこを動かないで」
「お、お兄ちゃん……?」
「へへっ、こいつ度胸ありそうだぜ?」
「いい声で泣きそうだな」
「クアドラ様に喜ばれるぞ」
「「「「「グハハッ!」」」」」
なるほど、人間を殺す前に断末魔の悲鳴を楽しもうってわけか。最高に悪趣味な一族だね……。
「おうおう、いくらなんでもこのままじゃ可愛げがねえから早く泣けよ、人間」
「思いっ切り殴ってみるか?」
「そしたらすぐ死ぬだろ、バカか」
「とにかくこうして威嚇してりゃ、近いうちに後ろのガキと一緒に小便ちびって泣き出すだろうぜ?」
「そしたら、ツーンとしたいい匂い、プリティな泣き顔、刺激的な悲鳴のハーモニーッ」
「「「「「ガハハッ!」」」」」
「……ひっく、お兄ちゃん、怖いよぉ……」
「大丈夫……」
僕は女児の手を少しだけ強く握った。とっとと倒したいところだけど、まずは【鑑定士】スキルでこいつらのステータスを確認しなきゃね。
――うーん、ろくなスキルを持ってないなあ……って、一人いいのがいた。
名前:グルタス
レベル:27
種族:猪人族
属性:地
サイズ:中型
能力値:
腕力A
敏捷B
体力A
器用C
運勢F
知性D
装備:
アイアンメイル
ツーハンドアックス
スキル:
【難攻不落】
効果:
自身の防御力が跳ね上がる。使用していなくても少々上昇する。
「……」
一通り見たけど、使えそうなのはこの猪人族のスキルだけだった。あとは猪人族らしく身体能力が少し上がる系とかで大して役立ちそうなものはなく、ほとんどが必要ないと判断してるのかあるいは知能が足りないのか、スキルさえ持ってない状態だった。
「なあ、さっきから黙ってねえでなんとか言えよ、人間のオスガキッ! あ? 怖くて声も出せないのかー?」
猪人族の一人が変顔を近付けて挑発してきた。よーし、こっちもお返ししてやろう。
「生意気だね」
「「「「「へ……?」」」」」
彼らは僕の台詞に対してわけがわからなそうにお互いを呆然と見合ったあと、一人の猪人族が納得顔でポンと掌を叩いてみせた。
「あー、おいらわかったぞ! 人間って自虐が好きって聞いたことあるし、生意気ですみません、見逃してくださいってことだろ!」
「「「「なるほどっ……!」」」」
「……」
もういいや、そろそろゴミを片付けよう。
「見逃してくださいって、それは君たちの台詞なのかな……?」
「「「「「はあぁ……?」」」」」
「ちなみにもう、全員僕のスキルで全員動けないよ」
「「「「「……」」」」」
彼らの顔が、見る見る驚愕の色で包まれていくのがはっきりとわかって面白かった。まずノースキルやゴミスキルの猪人族を一気に仕留めたあと、グルタスが【難攻不落】スキルを使ってきたところで削除して倒そうかな。
◆◆◆
「「「「ぎゃああぁぁぁぁっ!」」」」
「お……」
とある一軒家、赤く染まった台所で巨躯の男がバナナを食べつつ悲鳴がした方向を見やる。
「今の、中々の悲鳴じゃねえかあ。あいつら、不器用に見えて上手くやってるみてえだなあぁ――?」
「――ク、クアドラ様っ……」
そこに慌てた様子で駆け込んでくる猪人族の男。
「ん、伝令かぁ。どうしたあぁ?」
「今のは人間の悲鳴ではなく、我々同胞たちの悲鳴です! この目でしかと見ました! なんと、一匹の人間にやられていたようです!」
「……ほう。たかが一匹の人間にやられたっていうのかあ、そうかあ……」
「ひっ……?」
クアドラが眠そうな顔から一転して怒りの形相になり、伝令の頭を大きな手で掴んで握り潰していく。
「ぐぎぎっ……」
「なあ、知ってるかあ? 楽器っていうのはなあ、弾きこなすのが難しい生意気なやつほどぉ、名器って呼べるんだよおおぉぉ……」
「ヒヒッ……」
どこからともなく不気味な笑い声と咀嚼音が響き渡る。
「兄さん、美味しいかいぃ? 面白そうなやつが現れたみたいだから、戦う前に栄養つけなきゃねえぇ……」
クアドラは歯茎が見えるほど会心の笑みを浮かべるのであった……。
◆◆◆
「お、おいっ、今の悲鳴聞いたか……!?」
「う、うんっ」
「イエスッ」
「聞きましたっ」
茂みの中、ナセルの台詞にうなずくファリム、ロイス、ミミルの三人。
「あの凄まじい叫び声は人間じゃ出せねえと思うし、おそらく猪人族どもの悲鳴だ。カインのやつが来たに違いねえ! 様子を見てあいつが勝てそうだったら援護射撃っ、負けそうだったら即退却だっ!」
「「「りょ、了解っ……!」」」
「――……」
ナセルたちが立ち去ってまもなく、茂みの近くで横たわっている幾つかの死体の中から、むくりと起き上がる者がいた。
(ククッ……お手並み拝見といこうか、カインよ……)
36
あなたにおすすめの小説
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す
金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。
「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」
魅了魔法? なんだそれは?
その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。
R15は死のシーンがあるための保険です。
独自の異世界の物語です。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる