外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し

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83話 擦れ違い

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「はっ……ゴポッ……!?」

 先に効果が切れたのは、完全なる闇のほうじゃなく、僕の【鬼眼】スキルのほうだった。

 恐れていたことがついに起きてしまった……。こうなっちゃうともう、真っ暗闇の中でどこから攻撃されるのかすらわからないという絶望的な状況――

『――コオォッ』

「っ!?」

 やつの声が間近から聞こえてきたので反応よく避けることができたけど、攻撃してくるような圧力がなかったからを入れただけっぽい。

 こんな感じで、水の神殿ダンジョンのボスはかなり知性があるのがわかる。ほかにも、【二重攻撃】を使わず無言で攻撃してきたり、声を出しても攻撃すらしてこなかったりと、色んな攻撃パターンを試してきた。

 こっちが回避しかできない状態になってるにもかかわらず、行動パターンは慎重そのものだったんだ。だからなのか、こっちも散々動きを【偽装】してるのに全然引っ掛かってくれない。

 何より異様にすばしっこいので、熊の亜人じゃなくて視力を確保するべく鳥の亜人になっていればと後悔してる。この階層まで、ほかの冒険者の姿をまったく見られなかったのも納得の難易度だ。

「あ……ゴポッ……」

 このままだと【難攻不落】とかの防御系スキルまで切れて死んじゃうんじゃないかとすら思えてきたけど、よく考えたら僕にはがあったことを思い出した。

『コオォ――』

 ――ボスの声がした方向に、僕は【混合】+《裁縫・大》+《跳躍・大》+【維持】を使用する。

 格上の相手には【殺意の波動】がほぼ通用しない以上、動きを止めるにはこのやり方が有効なはず……お、圧が消えたと思ったら都合よく完全なる暗闇が解除されるのがわかった。よしよし、やつは水中でじっとしている。

 今のうちに疲労、頭痛、重圧、恐怖といった負の要素をプレゼントしてやろう。【進化】で【削除&復元DX】になってるから一つずつじゃなくて一気に纏めてなので結構効くはず。

 それでもまもなく、縫合が解けたのかやつは襲いかかってきたわけなんだけど、そのタイミングで回避しつつ【二重攻撃】を削除してやった。よーし、予想通りだ。負の要素に加えて特殊攻撃の完全なる闇にも冷却期間クールタイムがあるっぽいしボスも相当に焦ってるってわけだ。

 再び縫合して《盗み・中》を繰り返すと、やたらと盗みにくいのか何度か縫い直したあとも中々盗れないことが続いた。うーん……視界が確保できてる状況だし本で殴ってきたときに削除しても手に入るとは思うんだけど、いい加減このテクニックのレベルも上げておきたいからね。

 お……たった今テクニックの熟練度が上がるのがなんとなくわかって、それからまもなく聖書を盗むことができた。

『コオオオオオォォォォォ……ッ!』

 ボスを水中に縫合してルーズダガーで何度も往復するように斬りこみつつ、【サンダースピアー】と【維持】をお見舞いしてやると、断末魔の悲鳴とともに周囲の景色が変わっていった。

 やった……遂に水の神殿ダンジョンを攻略したぞ……! って、ここは――

「――あれ……?」

 そこはあの湖の手前だった。てっきり古城ダンジョンみたいに水の神殿前に出て来るって勝手に思ってただけに意外だった。つまり、この湖自体もダンジョンの一部ってことなのか……。



 ◆◆◆



「「「「……」」」」

 水の神殿ダンジョン前では、時折浮上する四つの泡とはあまりにも対照的に、沈痛な面持ちで項垂れるナセルたちの姿があった。

「おい……なんなんだよ……カインのやつ、まだ攻略しないのかよ……ゴポッ……」

「ゴポッ……ね、ねえナセル、もう戻ったほうがいいんじゃ……?」

「リーダー、自分もファリムと同意見だっ……ゴポッ……」

「リーダーさん、ゴポッ……あたしもファリムさんとロイスさんに同意します……」

 同調するファリム、ロイス、ミミルの様子にナセルが見る見る顔を険しくしていく。

「おいお前たち、バカか……。ここで引いちまったら、今まで苦労して待ってた意味が完全になくなるだろ――ゴポオォォ……」

「あ、珍しく耐えた」

「ウムッ、また溺れかけて水面行きかと」

「それ、あたしも思ってましたぁ」

「へ……へへっ。そう何度も何度も同じような目には遭わねえって――」

「「「――う、後ろ……」」」

「ん……? お、おい、なんだよみんな揃って変な顔して。あー、そうか。結局俺がそういう風に焦って水を飲み込んで溺れそうになりながら浮かんでいくのを面白がってモチベーションにしてたってわけか。けど、もうそんなことは……って、なんでお前たちのほうが慌てて浮上して――」

 ナセルがはっとした顔で振り返ると、そこにはなんとも重量感のある巨大魚がいて、大口を開けているところだった。

『――シャアアァァァッ……』

「ゴポオオオォォォッ!?」

 これでもかと頬を膨らませて水面へと浮上していくナセルのスピードは、湧き上がる泡よりも数段上であった……。
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