底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第一章

清掃師、嘘をつく

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 翌朝、まだ薄暗いうちからみんなとテラスで朝食を済ませた俺たちは、早速そこからスパイダーロープを使って迷宮山『アバランシェ・ブレード』の第二セーブポイントまで飛んだわけだが……とにかく寒かった。

 魔道具の一種、ヒートベルトとかがまったく効いてないんじゃないかと思えるほどだ。また、高山病予防のための酸素を提供してくれるプラントネックレスを身に着けてるものの、温暖な低地から雪山の高所へ一気に来た影響は大きく、息苦しさや吐き気を覚えるほどだった。

 この辺のデメリットは便利になったゆえの産物だし、その場凌ぎに【一掃】するよりは耐性をつけるべく我慢したほうがいいだろう。

 俺もそうだが、みんなも色んな栄養素が詰まったレインボーキャンディを口にしていたためか徐々に顔色がよくなってきたのがわかった。

「コッ……コホンッ! みんな、私の言うことを、よく聞いてほしいっ! 迷宮山というものはな、とにかく厳しいものなのだっ! 特にこれから山頂にかけては、さらなる強力なモンスターに加えてボスも登場するから、より一層気合を入れていかねば――」
「――ささ、気分もよくなってきたし、リーダーの長話は毒だからそろそろ行きましょっ」
「ですねぇ」
「いこいこー」
「ちょっ、ちょっとおっ! 折角この私が大事な話をしている最中にだなあっ! ……あーっ! みんな待ってぇっ! 私だけ置いていかないでえぇーっ!」
「あっ……」

 俺も寒いあまり、早く動きたくてついロディだけ置き去りにしてしまった。マリベルたちもそれが面白かったらしく、メンバーからだけでなく胸元のポケットから微かな笑い声が聞こえてくる。スタート早々寒気に出鼻を挫かれた気分だったが、自分もつられて笑ってしまったおかげか体温が上がってきた。

「ミュート、シェリー、アルファッ。リーダーに追いつかれないようにみんなで走りましょっ!」
「はあい」
「えへへ」
「あはは……」
「こ、こらー! ……っと、うわっ!?」

 焦ったのか、ロディが派手に転んで雪まみれになる。

「――もう私は帰るっ!」

 さすがにまずいと思ってみんなで戻ったんだが、リーダーはその場に腕組みしながら座り込んでいて、すっかりいじけてしまっている様子だった。でもみんなの顔を見てるとそこまで悲壮感はなくて、また始まったみたいな空気感が漂ってるから大丈夫っぽいな。

「リーダー、機嫌直してっ」
「ロディお兄ちゃん、よちよちっ」
「リーダーさん、今度奢りますからぁ」
「ふんっ。私はもう知らん……!」

 深刻ではないものの、なんだか時間がかかりそうな気配だ。よーし、俺がなんとかできるならやってみよう。

「リーダー、そんなところをアルフェリナが見たらがっかりするよ」
「うっ……!?」
「あいつ、リーダーのこと気に入ってたみたいだし――」
「――なっ……!? それは本当か、アルファ君!?」
「あ、ああ……」
「よーしっ! やる気がみなぎってきた……。みんな、行くぞっ!」
「もー、現金なんだから……」
「まったくですぅ」
「変なの」
「あはは……」

 ま、まあ嘘も方便というしな。こんなんでやる気になってくれるなら安いもんだ……。



 ◇◇◇



「ゴ、ゴミアルファの野郎……あのパーティーに入ってたのかよ……」
「へえ、一体どういう風の吹き回しなんだろうねぇ」
「ホントホント……」

『アバランシェ・ブレード』第二セーブポイントにいるアルファたちの様子を、脇の木陰からジェイクたちがいずれも怪訝そうな表情で覗いていて、まもなくレイラがはっとした顔になる。

「あ……ってことはさ、はどこに行ったんだろうね?」
「「あの子たち?」」
「ほら、アルファと一緒にいた女の子たちだよ」
「「あっ……」」

 ジェイクとクエスがレイラに言われて改めてアルファたちのほうを見やるも、例の少女たちの姿は見られなかった。

「ほら、あたいの言う通りだろ。解散しちゃったのかねぇ?」
「そうかも……」
「いや、レイラ、クエス。おそらくんだろうぜ」
「「逃げた……?」」
「おう。ゴミアルファのせいでとんでもなく怖い思いをしちまったわけだろ?」
「「あっ……」」
「助かってもあの自然現象に巻き込まれたことが相当なトラウマになってるはずだし、ゴミアルファを疫病神認定して逃げちまったんだろうよ」
「「なるほど……」」

 レイラとクエスが納得顔でうなずく。

「俺らの行動は決して無駄じゃなかったってこった」
「だねぇ。そう思うとさらにやる気が出てきたよ」
「僕も。次はあのパーティーからも見捨てられるわけだねっ」
「ああ。だろうよ。今回の作戦は今まで以上に穴がねえからなあ……」
「アルファのやつが地面を這う姿、早く見たいもんだね。あたい、今から楽しみになってきたよっ」
「ホントホントッ。そのときにやっとアルファは自分がゴミそのものだったって気付くんだろうねぇ」
「「「アハハッ!」」」

 ジェイクたちは、今発ったばかりのアルファを含むパーティーの背中を見ながらしばらく笑い合っていた。
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