底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、注目される

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「そっ、そんな……嘘でしょ……? どうして……」
「も……もうダメだよぉ……ひっく……」
「じょっ……冗談だろう! そうに決まっているではないかっ! まったく、ミュートはこんなときに――」
「――冗談じゃないですう……。異常な数の蟻さんが迫ってきてますうぅ……も、もうダメですうぅぅ……」

 涙目で座り込むミュート。彼女がここまで動揺してるところは見たことがないし、それが事の重大さを露呈させたのかロディの顔が見る見る青くなった。

「ア……ア……アルファ君……! な、ななななっ、なんとか……できないだろうかっ……!?」
「アルファ……」
「アルファお兄ちゃん……」
「アルファさん……」
「……」

 俺が救世主みたいになってて気分はよくないものの、今までの展開からこうなるのは自然な流れだった。

 正直、自分でもどうしていいのかわからないが、もしここで俺が頼りにならないとわかれば、一斉にみんなが慌てて逃げ出すみたいな、それこそ収拾のつかない最悪の事態に発展してしまいかねない。

「みんな、大丈夫……。策はある……」
「「「「おおっ……!」」」」

 俺はまず笑顔を作り、みんなを安心させるという作戦に出た。とはいえ、本当に策があるってわけじゃない。このままだともうすぐ俺たちは黒い塊に呑み込まれ、気付いたときには沢山の蟻とともにアリジゴクの胃の中で溶かされるってわけだ。

 なんとか打開策を練らないといけない。みんなもいる以上、自然な形で乗り越えたいが、手段を選んでられるような状況じゃないし、何も浮かばなかったらそのときは仕方ない。

 マリベルたちにも意見を貰おうかと思ったが、こういうときこそ自分で考えて乗り切りたいんだ。今後のためにも……。



 ◇◇◇



「へへへっ……ほら見ろっ……蟻がゴミみてえだ……! アッヒャッヒャッヒャッ……!」

 壺が転がる通路に雪崩れ込む大蟻の大群を前に高笑いするジェイク。【鷲の眼】という新スキルを覚えたことにより、彼はかなり遠くまで見渡すことができるようになっていた。

 そのため、アルファたちがその通路を選んで登ってくるところまで丸見えであり、黒い塊の中に呑み込まれるところまではっきりと見えたのだった。

「やった……とうとうやったぞ……。ゴミアルファの野郎を遂に……遂に駆逐した……。地獄という名のゴミ箱の中に叩き込んでやったぜええぇぇっ……!」
「あ、あたいたち、遂にやったんだねえ……」
「うん……。あれじゃ、さすがにどこにも逃げ場もないし、払いようもないしね……」
「へへっ……早速見に行こうぜっ。やつらが生きたままアリジゴクに食われる瞬間をよー」
「「賛成っ」」

 まもなくキラーアントの行列がなくなったため、ジェイクたちは意気揚々と洞窟へと入り、駆け下りていく。

「おいおいお前らっ、あんまりスピード出すと俺たちまで落下するから気を付けろよ!」
「あいあい、わかってるよ」
「わかってるって――」
「――誰かと思ったらジェイクたちじゃないか。お前らどこへ行くんだ?」
「「「……え?」」」

 その途中で彼らが遭遇したのは、アルファとその仲間たちだった。

「ア……? ア、アルファ、な、なんで……?」
「「なんで……」」

 まったくもって無傷な様子のアルファたちを前にして青ざめるジェイクたち。

「ん……? 味方のスキル【見切り】で文字通り切り抜けたんだよ」
「そっ……そんなはずはねえっ! あの数の蟻をどうやって――」
「――いうほどそんなにいなかったよな?」
「そうね。最初はどうなるかと思ったけど……」
「うんっ。一瞬で流れていっちゃった」
「ですねぇ。心配しすぎでしたぁ」
「うむっ! 私は目を瞑っていたのでよく覚えてないのだがっ……!」
「「「……」」」

 すれ違っていくアルファたちの笑い声が徐々に遠ざかり、呆然としていたジェイクがはっとする。

「こっ……このまま行かせるわけにはいかねええぇぇ――」
『『『『『――ギョリリリリィッ……』』』』』

 その直後だった。突如として大蟻の大群が現れたのは。

「「「ぎゃああああああぁぁぁぁっ……!」」」

 ジェイクたちは蟻の中に混ざり、悲鳴がまたたく間に遠ざかるほど勢いよく滑落していった。
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