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第三章 魔法学園
式典が始まります
しおりを挟む結局のんちゃんが戻ってこないまま卒業式典が始まってしまった。
式典は在校生の一部しか参加できないけど身内に卒業生がいる場合は優先的に参加できる。
皇族であるルルが賓客としてイシェラ王国の王族の方たちと同席するのは分かるけど何故か私もそちらの席に案内されてしまった。
「マリーちゃん綺麗だわぁ~」
嬉しそうに手を振るアリアドネ妃に迎えられ急展開に固まっていた肩が少し緩んだと思ったらびっしりと並ぶ騎士の方々と治療士?と思われるマントをつけた方々に気付き再び固まってしまった。
え?え?なんなのこの厳重警戒感…事件が起きるはずなのは式典後のパーティーだよね?
固まる私をよそにルルが美しい所作でアリアドネ妃に挨拶をしていてアリアドネ妃も王弟妃らしい優雅な返しをしていらっしゃる。
二人ともさすが王族。この厳重警備が日常なのかな?何も気にしていないらしくて驚いてしまう。
国王夫妻は学園内を視察していると教えてもらっていたら懐かしい足音が近づいてきた。
急いで振り返るとやはりお父様が眉間に皺を寄せて立っていらっしゃった。
警備の数に驚きもせずにアリアドネ妃に挨拶をしている。
「お父様、お久しぶりです。」
本当は抱きつきたい気持ちだけど人目があるしね。
少しでも成長したなと思われたくて気合いを入れて挨拶をする。
「少し背が伸びたようだな。色々試練が降りかかったと聞いている。
見事に耐え抜いたな、スリジェ家の当主として誇らしい。」
笑顔の一つもない言い方はむしろ通常通りで安心する。
トンっと肩に置かれた大きな手が暖かい。
「だが、父親としては心配していた。
大変だったな守ってやれずにすまなかった。」
身をかがめ耳元でそっと告げられた言葉に涙が滲みそうになる。
急いで扇子を広げて目元を隠す。
「ありがとうございますお父様。
でもお父様はいつだって私を守ってくださっています。
お父様の教えがこの身にしみついていますから。」
私の言葉にお父様は目を細め小さくうなずいた。その口元は見間違いでなければ小さくほころんでいた。
潤んだ目を誤魔化しつつルルを紹介しようとしていた時、空気を読まない声が背後から響いてくる。
「なんだよマリーもう泣いてんのか早くねぇ?」
振り返ると正装に身を包んだ光り輝く王子様、リークとその腕に軽く手をかけ優雅に挨拶するのんちゃんが立っていた。
「リーク、挨拶!」
私たちの礼を無視してニヤニヤ笑うリークにアリアドネ妃からお母さんらしいゲキが飛ぶ。
リークは肩をすくめてからお父様に礼儀正しく挨拶をしてディルの卒業を祝う言葉を続け、お父様も丁寧にお礼を述べている。
たくさんの騎士にお父様にのんちゃん、今この場所は下手な要塞より完璧な防御率を誇っていそうだ。
のんきにそんな事を考えていたら更に騎士たちが増え、国王陛下夫妻が到着され式典が始まった。
卒業生たちの先頭はもちろんエドワード殿下。ディルは最後尾で入場してきた。
学園長の長い祝辞を聞き流しながら私はディルのピンと伸びた後ろ姿に見入ってしまった。
出会った時は少し弱々しくて守ってあげたいと思うような可憐な少年だったのに、今はすらりと背も伸びて体つきもしっかりとしていて優秀で人当たりも良い優しく真面目な好青年だ。
「立派になって…」
思わずウルウルしながらつぶやいてしまったらのんちゃんに呆れた顔をされてしまった。
「発言が親戚のおばちゃんみたいだから。」
ひっそりとささやかれて私はのんちゃんを睨む。
「有希の年齢と合わせたら親戚のおばちゃんでもおかしくないもん。心境はまさにそうだし。」
「んっんん。」
ヒソヒソしていたらお父様に咳払いされて睨まれてしまった。
ごめんなさい!静かにします。
小さくなった私を見て笑うのんちゃん。
もう~後で文句言ってやろう。
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