220 / 247
第三章 魔法学園
異形の主からまさかの提案です
しおりを挟む
緊張の糸が緩みそっと会場内を見回すと皆、突然姿を表した竜に固まっている。
「おい、アロイス。」
さすがというか、いち早く我にかえったのはリークでのんちゃんに近寄り困惑した表情で耳打ちしている。
「異形の主は年老いた竜じゃなかったのかよ?
実物を見たのは初めてだけどありゃどう見たって年寄りには見えねえんだけど。」
のんちゃんは少し強ばった表情で小さくうなずいている。
「おそらく封印中に再生したんだ。竜は休眠中に体の中から皮膚に至るまで全て新しく再生されて古いものを脱ぎ捨てる。そうして何千年と生き続けるからね。数百年やそこらじゃ再生は完了してないとにらんでたんだけど当てが外れたなぁ。」
「暴れられたらまずいんじゃね?」
「まぁ、この国と周囲三国が焼土になる程度で済めばラッキーってとこかな。」
のんちゃんの言葉にリークはもちろん私も固まってしまう。
冷や汗が吹き出してきた。
どうしよう、封印を解いたのは他ならぬ自分自身だ。
ギュッと体を締め付けられたような緊張が走る中、竜は周りの張りつめた空気を気にすることなくゆっくりと首を動かして壇上を見下ろした。
騎士たちにも一段と緊張が走り、剣が構えられる。
「この地を統べる王よ。騒がせてすまなんだな。
そして、国に混乱をもたらしたことも詫びておこう。
この地の均一を保つためとはいえ、いささか荒い手段であった。」
竜は偽ニリーナを見つめてからゆっくりと視線をアリアドネ様、のんちゃん、私へと巡らせる。
シュッと風を切る音がした。竜の巨大な尻尾がゆっくりと会場を一周するように弧を描いて床に着地し、一瞬の後会場内に残っていたたくさんの人々が崩れ落ちるように床に沈み込む。
壇上にいたたくさんの騎士や治療士たちも同様で変わらずに立っているのは陛下とエライザ妃、アリアドネ様とその背後に立つフードを被った一人の治療士だけだ。
一方私たちの方はのんちゃんに私、それにリークと少し離れた場所にいるアスターさん、ソリーさんにお父様だけが目を見張りながら立ちつくしている。
「無闇に混乱させることはない。
事情を知っている者だけで話せば良かろう?」
両手を組んでその上に顔を乗せくつろいだ姿勢をとった竜がのんびりそう話す。
「眠ってるみたいだ。」
慌ててイライザに駆け寄ったリークが立ち上がりながらホッとした様子で言い私たちも少し胸をなでおろした。
「えっ?待って。じゃあアスターさんとソリーさんも知ってるってこと?」
しれっと立ちつくしていた二人は顔を見合わせている。
「そういうことになりますわね。」
無邪気な笑顔を浮かべたアスターさんに続いてソリーさんもコクっとうなずいた。
お、恐るべき情報網。私以外はあまり驚いてないから当然のこと…なのかな…?
一人アワアワしている私を竜が面白がるように見つめていることに気づいて私は再び固まった。
「面白いものだ。同じ特性を持つもの同士似通うのだな。姿形は血のつながりで似るのは分かるが。」
そうしてのんちゃんに視線を戻し、フゥゥっと鼻から息を吐き出した。
「そなたをこの地に転生させたことは思わぬ幸運であった。いささか予想外すぎることもあるが。」
竜はのんちゃんの足元から肩にピョンっと飛び乗ったリーダーに目を向けながらゆっくりと瞬きをした。
「こたびの騒動の始まりを作ったのは我だ。巻き込んでしまったことを詫びたい。
そなたら各々望みがあらば叶えよう。
時空を司るものとして多少の無理は効く。
転生する以前の地に魂を戻してやることもできるぞ。
特にそなたは早く帰りたいと常々言っておったであろう?」
急に話しかけられた相手はアリアドネ王弟妃様だった。
本人も、まさか自分が話しかけられると思っていなかったようで目を丸くして固まっている。
え?え?まさか…戻すってどういうこと?アリアドネ様がこの国からいなくなっちゃうってこと?
「おい、アロイス。」
さすがというか、いち早く我にかえったのはリークでのんちゃんに近寄り困惑した表情で耳打ちしている。
「異形の主は年老いた竜じゃなかったのかよ?
実物を見たのは初めてだけどありゃどう見たって年寄りには見えねえんだけど。」
のんちゃんは少し強ばった表情で小さくうなずいている。
「おそらく封印中に再生したんだ。竜は休眠中に体の中から皮膚に至るまで全て新しく再生されて古いものを脱ぎ捨てる。そうして何千年と生き続けるからね。数百年やそこらじゃ再生は完了してないとにらんでたんだけど当てが外れたなぁ。」
「暴れられたらまずいんじゃね?」
「まぁ、この国と周囲三国が焼土になる程度で済めばラッキーってとこかな。」
のんちゃんの言葉にリークはもちろん私も固まってしまう。
冷や汗が吹き出してきた。
どうしよう、封印を解いたのは他ならぬ自分自身だ。
ギュッと体を締め付けられたような緊張が走る中、竜は周りの張りつめた空気を気にすることなくゆっくりと首を動かして壇上を見下ろした。
騎士たちにも一段と緊張が走り、剣が構えられる。
「この地を統べる王よ。騒がせてすまなんだな。
そして、国に混乱をもたらしたことも詫びておこう。
この地の均一を保つためとはいえ、いささか荒い手段であった。」
竜は偽ニリーナを見つめてからゆっくりと視線をアリアドネ様、のんちゃん、私へと巡らせる。
シュッと風を切る音がした。竜の巨大な尻尾がゆっくりと会場を一周するように弧を描いて床に着地し、一瞬の後会場内に残っていたたくさんの人々が崩れ落ちるように床に沈み込む。
壇上にいたたくさんの騎士や治療士たちも同様で変わらずに立っているのは陛下とエライザ妃、アリアドネ様とその背後に立つフードを被った一人の治療士だけだ。
一方私たちの方はのんちゃんに私、それにリークと少し離れた場所にいるアスターさん、ソリーさんにお父様だけが目を見張りながら立ちつくしている。
「無闇に混乱させることはない。
事情を知っている者だけで話せば良かろう?」
両手を組んでその上に顔を乗せくつろいだ姿勢をとった竜がのんびりそう話す。
「眠ってるみたいだ。」
慌ててイライザに駆け寄ったリークが立ち上がりながらホッとした様子で言い私たちも少し胸をなでおろした。
「えっ?待って。じゃあアスターさんとソリーさんも知ってるってこと?」
しれっと立ちつくしていた二人は顔を見合わせている。
「そういうことになりますわね。」
無邪気な笑顔を浮かべたアスターさんに続いてソリーさんもコクっとうなずいた。
お、恐るべき情報網。私以外はあまり驚いてないから当然のこと…なのかな…?
一人アワアワしている私を竜が面白がるように見つめていることに気づいて私は再び固まった。
「面白いものだ。同じ特性を持つもの同士似通うのだな。姿形は血のつながりで似るのは分かるが。」
そうしてのんちゃんに視線を戻し、フゥゥっと鼻から息を吐き出した。
「そなたをこの地に転生させたことは思わぬ幸運であった。いささか予想外すぎることもあるが。」
竜はのんちゃんの足元から肩にピョンっと飛び乗ったリーダーに目を向けながらゆっくりと瞬きをした。
「こたびの騒動の始まりを作ったのは我だ。巻き込んでしまったことを詫びたい。
そなたら各々望みがあらば叶えよう。
時空を司るものとして多少の無理は効く。
転生する以前の地に魂を戻してやることもできるぞ。
特にそなたは早く帰りたいと常々言っておったであろう?」
急に話しかけられた相手はアリアドネ王弟妃様だった。
本人も、まさか自分が話しかけられると思っていなかったようで目を丸くして固まっている。
え?え?まさか…戻すってどういうこと?アリアドネ様がこの国からいなくなっちゃうってこと?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる