悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

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第四章  エンディングのその後の世界

無事に?バッドエンドを回避しました。

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「うわぁ、ヤッター。伝説レベルのSS級超レアアイテムじゃん!」

とっても清々しい…

清々しい…気分で目覚めたはずの私の耳に届いた第一声のせいで頭痛がぶり返しそうだ。

「のんちゃん?」

ゆっくり目を開けロウソクの柔らかい光で薄明るい部屋の横たわっていたベッドから起き上がる。

一瞬どこにいるのか分からなかったけどキョロキョロと辺りを見回すと学園の医務室だ。

先生は見当たらないがのんちゃんのスラリとした後ろ姿がベッドからほど近い場所に立っている。

私の声に気づいたのかクルッと振り返ったのんちゃんはパーティの服装のまま。満面の笑みを浮かべ何やら燃えるように輝く長い発光物を両手で捧げるように持っている。

「あっ、気がついたマリー?具合はどう?」

口では心配するような素振りを見せているけどそのワクワク前のめりな姿から別の話をしたくてたまらないのがビシビシ伝わってくる。

「大丈夫。ねぇ、のんちゃん…それって?」

パァッとさらに顔を輝かせながらのんちゃんは私の真横に風の速さで近寄ってくる。

「見て見て、竜が自分は必要ないからってくれたやつ。めちゃくちゃレアアイテムだよ。成人した竜の抜け殻。しかも鱗もいくつもついてるし!」

「ぬ、抜け殻…?」

そういえば小さい頃のんちゃんセミの抜け殻集めてたなぁ。綺麗な形のは一つ一つ箱に入れて眺めて喜んでたっけ…

遠い目になった私にのんちゃんは早口でこのアイテムの凄さを説明してくれているけど全然耳に入ってこない。

「…だから、これひとつで国が三つは買えちゃうくらい価値があるわけ。」

「え!?のんちゃん国なんて買ってどうするの?」

ぼんやり聞き流していた話から聞き逃せない言葉が聞こえてきて私はびっくりしてのんちゃんの顔を見上げた。

「俺の話ちゃんと聞いてなかっただろマリー、違うよ。
そんな面倒くさいことしないよ。
それよりこんなレアな材料が手に入ったんだから色々作ってみるに決まってんじゃん。

一番難易度高いのは不老不死の薬で他にも希少な材料が色々必要だけど一番入手困難なこれが手に入ったからなぁ、飲む気はないけど作ってみたいよね。
まぁ、一番最初はこの鱗から剣と鎧と盾を作って…この皮の小さな一部で万能治療薬何万本も作れるからそれも作っておけば負傷した時とかも安心だし。」

ものすごく嬉しそうなのんちゃんは目を輝かせながら楽しそうに計画を考えている。

聞いてる限りだとどこに戦争仕掛けに行くつもり?って思うけど…

とにかく眩しすぎる抜け殻は早々にのんちゃんが作り上げたアイテム保存用の空間にしまってもらう。

「のんちゃん…」

「何?どうしたの?」

アイテムを仕舞ってもまだソワソワしているのんちゃん。
もう…早く色々試したくて仕方がないんだろうなぁ。

「終わったんだよね?ゲーム。」

するとのんちゃんはハッとして私を見つめ、コクンとうなずいた。

この様子、絶対忘れてたな。

「じゃあ、のんちゃんが…リノアがあうかもしれなかったバッドエンド?も全部回避できたんだよね?」

のんちゃんは私が起き上がっていたベッドにスッと座り天井を見上げてから目を閉じてゆっくりうなずいた。

「うん。終わった。ゲームとはかなり流れが色々違ったけど終わったよ。

………そして俺の学園生活も………

終わったぁぁぁ~」

ハァァァッと大きすぎるため息を吐き出してのんちゃんはガクッとうなだれた。

「え?え!どうしたの?のんちゃん。」

「マリーとの普通の学園生活。前みたいに一緒にのんびり楽しく過ごせるって楽しみにしてたのにさぁ…」

のんちゃんは座っていた姿勢からバフっと私の隣に体を投げ出し私の腕をグイッと引っ張る。

何も予期していなかった私はいとも簡単にポフっとのんちゃんと同じように再びベッドに身体を横たえた。

「竜が俺のこと賢者って呼んだでしょ?

会場に集まってた皆んなに聞かれちゃったからさぁ~」

ハァァァ、とため息をつきながら両手で顔を覆う。

「面倒ごとは嫌だからその記憶だけ消そうとしたら陛下にめっちゃ怒られて止められたんだよ~」

いつも穏やかな陛下が怒っている姿は想像し難いけどまぁ、止めるのが当たり前だよね。

ジトっとした目を向けると指の隙間からチラッと私を見たのんちゃんは再び盛大に嘆き始めた。

「俺も部活に入って魔獣や素材を集めたり授業中居眠りして当てられたらパッと答えて先生をからかったり宿題のレポートで新しい見解を書いて悩ませたりしたかったのに…」

そんな部活もとからないと思うし、のんちゃんの希望する学園生活はちょっとおかしいと思う。


「それなのに、研究棟の一室を提供してもらう代わりに教員や研究者に講義をすることになったんだよ?
卒業までの期間。」

「もう卒業なんて必要なさそうだけどね。」

苦笑いをするとのんちゃんは傷ついたような顔をして私を見つめる。

「ひどいよ…一緒にいたいから正式な卒業の認定が厳しいこの学園で異例中の異例だけどこのままサッサと卒業させるべきだって騒ぐ教師陣をねじ伏……説き伏せたのに。」

間近にある麗しい顔に悲しそうなウルウルした目。
私はボッと顔が熱くなる。

「ご、ごめん。私も学園にのんちゃんがいないと寂しくて困るよ。
だからこれからも一緒にいられるほうが嬉しい。

ね、分かったらもうちょっと離れて。」


必死で距離を取ろうと離れる私をのんちゃんは半分身体をおこしてニヤニヤしながら見ている。

そんな最悪のタイミングで小さくノックの音がして扉が開く。

「マリー?目が覚めまして?具合はどう………

っきゃああぁぁぁ!

破廉恥ですわ!!」

イライザの絶叫が廊下にこだます。

あ~あ、どうするの?のんちゃん。
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