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第四章 エンディングのその後の世界
自身で作る破滅計画 (偽ニリーナ視点)
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人間というのはどうしてこうも権力や富に執着するのだろう。
まぁその執着心があるおかげで扱いやすく助かってはいるのだけれど。
長い年月を過ごすとどの人間も変わり映えしない同じような者ばかりだ。
誰が王になるか、誰が富を多く得るか、誰が一番秀でているか。
大したかわりもないのにちまちまと揉めてばかりいる。
ちょっと煽ればすぐさま大きくなる揉め事の火種を私は何の感情もなく観察していた。
そんな中でアロイス・エシャルロットは他とは違う…かなり変わった人間だ。
まず背後から流れてくるただならぬ圧がすごい。
調べまわるとそれは精霊王の祝福のおかげらしい。
精霊王が実在していたことにまず驚いたけれど彼らが自ら人間に関わってくるなんて更に驚きだ。
私のような人間とも言えないような存在になっても彼らに接触することは叶わない。
どんどん力をつけていく彼を眺めながら今は純粋に魔力を磨くことに喜びを見出しているけれど大人になっていくにつれてそれは権力欲や支配欲に変わっていくだろうと思っていた。
そんな彼が積極的にマリーベルのことも鍛えてくれるおかげで彼女も着実に魔力コントロールが上手くなっていく。
もともと持っている魔力量が桁外れなのだ。
コントロールできるようになりさえすれば聖女と呼ばれたあの子より遥かに高いレベルの光魔法の使い手になるだろう。
成長していく二人の姿はひどく眩しく何故か苛立ちを覚えた。
そんな二人の姿に何故か既視感を覚えていた時、盗み聞きした会話の断片からゲーム、ヒロイン、悪役令嬢という言葉が聞こえてきた。
そこから急速に頭に流れ込んできた情報。忘れていた記憶の中のゲームに関する情報だけが鮮明に蘇ってくる。
ゲーム……そうか。ここはあのゲームの世界。ならば終わらせよう。ヒロインのハッピーエンドになんてさせない。世界を終わらせよう。彼を封印から解き放って。
考えてみればこの頃からだろう。
私が壊れ始めたのは。
急に見え始めたゲームのステータス画面。ヒロイン、悪役令嬢、攻略対象。その他の脇役たちまで全員見ることができた。
私は学園に潜伏したまま彼らが入学してくるのを心待ちにし、入学前からマリーベル・スリジェの評判を下げる噂を流した。
ヒロインの仲間たちが否定して回ったが、彼らより長くこの学園にいる私はどこに噂を流せばより広まるか分かっているから大した効果は生んでいない。
さらに入学前から姉に会いに頻繁に学園に来ていた操りやすそうな新入生、ロベリア・ハフスに手をつけておいたから彼女にも動いてもらう。
彼女たちの部屋付きの侍女になりロベリアに力を付与する。
そうしなければ甘やかされて育てられたロベリアの言動に周りは早々に離れていっただろう。
彼女がどんな振る舞いをしても、嫌われることはない。
呆れ混じりにそんな彼女を眺めながらどこか羨ましかった。
愛されることを何の疑いもなく受け入れ、当然だとさえ思っている。
マリーベルもロベリアも周りにいる人間も眩しくて憎たらしくて壊したくなる。
私は冷え切った場所にただ一人取り残されているのに何で彼女たちは彼らは笑っているんだろう?
憎らしい、特にマリーベル。
このおかしな世界でようやく馴染んだ私の居場所を、相手を、勝手に封印しておきながら私を助けたと言い。
また私をひとり置いて離れて行った。
いや、あれはマリーベルじゃない、あれは…
もう何でもいい。
とにかくあのピンク色の髪を見るだけで嫌気がさすのだから。
あの子に同じ思いをさせなければ。
今ある居心地の良い居場所、愛する人、失った時あなたは同じように笑っていられるだろうか?
その清い心のままでいられるだろうか?
帝国の妃から緊急事態の知らせが届き渋々帝国へ赴いたころ、ロベリアが騒ぎを起こしてくれた。
いよいよあの子、マリーベルも笑ってはいられないだろう。
その場に居て直接目にすることができなかったことへの苛立ちを私は外へぶつけていた。
南の帝国の妃、彼女は何がなんでも自分の息子を次期皇帝にしなければ気が済まないらしい。本人にその素質があるなしにかかわらずだ。
騒ぎ立てる彼女を適当にあしらいつつ調べるとやはりというべきかアロイス・エシャルロットの仕業らしい。
どこにでも現れる厄介な奴だけど今は力が弱っているらしい。
これはちょうどいい、マリーベルを絶望に突き落とすには彼の存在が不可欠だ。
ヒラヒラとらえどころのない彼の精神体を捕まえいつもの場所に閉じ込める。
あそこには研究に明け暮れる奴らが失敗作を放り込んでいるけどそれで彼がどうなろうと私の知ったことではない。
頭ではそうわかっているのに何故か手が震え心臓が締め付けられる。
彼の実体が見つからないことも焦りにつながったのだろう。
精神体と実体は離れすぎると戻れなくなるから。
私は眠りにつく彼の精神体に力を加え潜り込む。その時に彼に力の一部を渡したのはただの気まぐれだ。
あっけなく消えてしまってはつまらないから。
それに力を与えたからといって生き残るかどうかは分からないんだし。
力の一部を失って、自分がさらに壊れていくのを感じながら言い訳めいたことを呟いてしまう。
そこからは慌ただしすぎてよく思いだせない。
賢者ニリーナが突然学園に現れ、私は急いでロベリアを連れ去りアロイスがいる場所に隠した。
あの場所に1番長くとどまっている黒猫のような見た目の存在からアロイスとの繋がりを感じ取り私は思わず笑みを浮かべた。
彼ならやってくれると思った。
私の手には負えない。しかし、消し去ることもできないたくさんの無理矢理作られた存在たち。
彼らをあのアロイス・エシャルロットなら上手くここから連れ出してくれるだろう。
ロベリア・ハフスのことも、彼なら見捨てはしないはずだ。
安心してフッとため息をもらす。
その瞬間に私の中に残っていた私らしさや感情が消え去るのを感じた。
ロベリアに万が一のことがないよう付けた守護の力で限界に達したらしい。
色々なものが壊れ、こぼれ落ちてしまった私はただの醜い怪物に成り果てた。
ロベリアの姿に擬態して満足気な笑みを浮かべる自分をどこか遠くから見つめながら崩れ去る私は悲しみと諦めにただ身を委ねるしかなかった。
まぁその執着心があるおかげで扱いやすく助かってはいるのだけれど。
長い年月を過ごすとどの人間も変わり映えしない同じような者ばかりだ。
誰が王になるか、誰が富を多く得るか、誰が一番秀でているか。
大したかわりもないのにちまちまと揉めてばかりいる。
ちょっと煽ればすぐさま大きくなる揉め事の火種を私は何の感情もなく観察していた。
そんな中でアロイス・エシャルロットは他とは違う…かなり変わった人間だ。
まず背後から流れてくるただならぬ圧がすごい。
調べまわるとそれは精霊王の祝福のおかげらしい。
精霊王が実在していたことにまず驚いたけれど彼らが自ら人間に関わってくるなんて更に驚きだ。
私のような人間とも言えないような存在になっても彼らに接触することは叶わない。
どんどん力をつけていく彼を眺めながら今は純粋に魔力を磨くことに喜びを見出しているけれど大人になっていくにつれてそれは権力欲や支配欲に変わっていくだろうと思っていた。
そんな彼が積極的にマリーベルのことも鍛えてくれるおかげで彼女も着実に魔力コントロールが上手くなっていく。
もともと持っている魔力量が桁外れなのだ。
コントロールできるようになりさえすれば聖女と呼ばれたあの子より遥かに高いレベルの光魔法の使い手になるだろう。
成長していく二人の姿はひどく眩しく何故か苛立ちを覚えた。
そんな二人の姿に何故か既視感を覚えていた時、盗み聞きした会話の断片からゲーム、ヒロイン、悪役令嬢という言葉が聞こえてきた。
そこから急速に頭に流れ込んできた情報。忘れていた記憶の中のゲームに関する情報だけが鮮明に蘇ってくる。
ゲーム……そうか。ここはあのゲームの世界。ならば終わらせよう。ヒロインのハッピーエンドになんてさせない。世界を終わらせよう。彼を封印から解き放って。
考えてみればこの頃からだろう。
私が壊れ始めたのは。
急に見え始めたゲームのステータス画面。ヒロイン、悪役令嬢、攻略対象。その他の脇役たちまで全員見ることができた。
私は学園に潜伏したまま彼らが入学してくるのを心待ちにし、入学前からマリーベル・スリジェの評判を下げる噂を流した。
ヒロインの仲間たちが否定して回ったが、彼らより長くこの学園にいる私はどこに噂を流せばより広まるか分かっているから大した効果は生んでいない。
さらに入学前から姉に会いに頻繁に学園に来ていた操りやすそうな新入生、ロベリア・ハフスに手をつけておいたから彼女にも動いてもらう。
彼女たちの部屋付きの侍女になりロベリアに力を付与する。
そうしなければ甘やかされて育てられたロベリアの言動に周りは早々に離れていっただろう。
彼女がどんな振る舞いをしても、嫌われることはない。
呆れ混じりにそんな彼女を眺めながらどこか羨ましかった。
愛されることを何の疑いもなく受け入れ、当然だとさえ思っている。
マリーベルもロベリアも周りにいる人間も眩しくて憎たらしくて壊したくなる。
私は冷え切った場所にただ一人取り残されているのに何で彼女たちは彼らは笑っているんだろう?
憎らしい、特にマリーベル。
このおかしな世界でようやく馴染んだ私の居場所を、相手を、勝手に封印しておきながら私を助けたと言い。
また私をひとり置いて離れて行った。
いや、あれはマリーベルじゃない、あれは…
もう何でもいい。
とにかくあのピンク色の髪を見るだけで嫌気がさすのだから。
あの子に同じ思いをさせなければ。
今ある居心地の良い居場所、愛する人、失った時あなたは同じように笑っていられるだろうか?
その清い心のままでいられるだろうか?
帝国の妃から緊急事態の知らせが届き渋々帝国へ赴いたころ、ロベリアが騒ぎを起こしてくれた。
いよいよあの子、マリーベルも笑ってはいられないだろう。
その場に居て直接目にすることができなかったことへの苛立ちを私は外へぶつけていた。
南の帝国の妃、彼女は何がなんでも自分の息子を次期皇帝にしなければ気が済まないらしい。本人にその素質があるなしにかかわらずだ。
騒ぎ立てる彼女を適当にあしらいつつ調べるとやはりというべきかアロイス・エシャルロットの仕業らしい。
どこにでも現れる厄介な奴だけど今は力が弱っているらしい。
これはちょうどいい、マリーベルを絶望に突き落とすには彼の存在が不可欠だ。
ヒラヒラとらえどころのない彼の精神体を捕まえいつもの場所に閉じ込める。
あそこには研究に明け暮れる奴らが失敗作を放り込んでいるけどそれで彼がどうなろうと私の知ったことではない。
頭ではそうわかっているのに何故か手が震え心臓が締め付けられる。
彼の実体が見つからないことも焦りにつながったのだろう。
精神体と実体は離れすぎると戻れなくなるから。
私は眠りにつく彼の精神体に力を加え潜り込む。その時に彼に力の一部を渡したのはただの気まぐれだ。
あっけなく消えてしまってはつまらないから。
それに力を与えたからといって生き残るかどうかは分からないんだし。
力の一部を失って、自分がさらに壊れていくのを感じながら言い訳めいたことを呟いてしまう。
そこからは慌ただしすぎてよく思いだせない。
賢者ニリーナが突然学園に現れ、私は急いでロベリアを連れ去りアロイスがいる場所に隠した。
あの場所に1番長くとどまっている黒猫のような見た目の存在からアロイスとの繋がりを感じ取り私は思わず笑みを浮かべた。
彼ならやってくれると思った。
私の手には負えない。しかし、消し去ることもできないたくさんの無理矢理作られた存在たち。
彼らをあのアロイス・エシャルロットなら上手くここから連れ出してくれるだろう。
ロベリア・ハフスのことも、彼なら見捨てはしないはずだ。
安心してフッとため息をもらす。
その瞬間に私の中に残っていた私らしさや感情が消え去るのを感じた。
ロベリアに万が一のことがないよう付けた守護の力で限界に達したらしい。
色々なものが壊れ、こぼれ落ちてしまった私はただの醜い怪物に成り果てた。
ロベリアの姿に擬態して満足気な笑みを浮かべる自分をどこか遠くから見つめながら崩れ去る私は悲しみと諦めにただ身を委ねるしかなかった。
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