クレーンゲームの達人

タキテル

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二週間はあっという間に過ぎ去って全国大会当日を迎えてしまった。その二週間はこれまで通り、YouTuberとして日々動画を撮影してYouTubeにアップさせていた。僕たちの動画は必ず一日一回はアップさせている。その活動を地道に行い、少しずつではあるが再生数を増やしていった。動画で大会への意気込みを語り、コメントでは応援の言葉が多く見られた。
「カミタツさんの活躍、期待しています」「地区大会優勝おめでとうございます。全国も頑張って下さい」「その才能を見せてください」「良い報告お待ちしております」
大会中の様子を撮影することはできないが言葉でその様子を語るつもりだ。視聴者の期待に答えて僕たちは会場である東京に向かう新幹線に乗り込む。
「東京に着くまで二時間か。一眠りするかな」
 神谷は席に着くなりに仮眠を取ろうとする。また夜中までゲームをしていたのかと僕は疑う。この男には緊張感というものがないのだろうか。まるで遊びにでも行くようである。ちなみに柊祐奈は、というと一人が好きならしく現地集合となっている。おそらく一緒にいてメリットがなければ行動を共にしてくれないだろう。ご飯を奢ってくれるようなことがない限り……。金髪意外は可愛い顔をしていて良いのだが、中身が性悪だ。毒舌でイイように利用される。悪い気はしないのだが、まんまとはめられた気がしてならない。唯一の救いは見た目の可愛さではあるが、どうしても僕は金髪を辞めてほしいと思う。なぜ金髪にしているのか未だに謎であるが、何か理由があるのかと思う。考えすぎでただのイメチェンに過ぎないのかもしれないが気になって仕方がない。
「ふわぁー……」
 神谷は大きなあくびをして足を伸ばして寝る体勢に入った。僕は顔をしかめるが神谷は気にならない様子。その能天気が羨ましい限りだと僕は心の中で呟く。一人取り残された僕はやることがなく、暇を持て余していた。僕も仮眠を取ればいいのだが、昨日はしっかり睡眠を取ったせいで眠気は吹き飛んでいた。
「…………さてと」
 僕はおもむろに席を立った。少しトイレにでも行くかという軽い気持ちで席を離れた。座席の後ろにあるトイレの個室に入り、用を済ませる。水を流すレバーを引いて扉を開けたその時だった。僕は人と目と目が合ってしまって身を引いてしまったのだ。
「うわ!」
 僕は幽霊でも見たかのようにオーバーリアクションをしてみせる。何も意識していない無意識の状態で扉を開けたら目の前に人が立っていたら誰でも驚くのではないか? まさに不意打ちとはこのことである。しかし、そんな僕の驚きにその者は毒を吐く。
「なによ。その反応。人をオバケみたいに! ってか、両手と片足を同じ向きに逸らすほど驚いてんじゃないわよ。マジ気分悪いんですけど。早くそこ退きなさいよ。漏れたらどうしてくれるのよ」
 僕の反応を見るなり全否定するその者の正体は柊祐奈だった。見て早々そのようなことを言えるということは僕以外だったとしても同じセリフをいうのだろうかと疑問に思う。いや、彼女なら言いかねない。そして、ここで立って待っていたということは、目的は僕と当然同じでトイレだった。新幹線のトイレはそんな広くなく男女共有の個室となっていたので待っているのも納得である。そして、なぜこの新幹線の中にいるのかも僕と同じ時間、同じ場所に向かうので居て当たり前である。そんな鉢合わせに僕は申し訳なさそうにトイレを譲る。
「…………」
 しかし、どうぞと譲ったはずなのに柊祐奈は中に入ろうとしない。
「どうしたの?」
 僕は確認の為に聞いた。
「大? 小?」
 僕は一瞬、その質問の意味がわからなかった。数秒経って質問を理解し、「小」と答える。
「ならいいわ。いや、むしろ小以前にあなたの後に入るのは気が引けるけど、漏れるよりかはマシだからプライドを捨てることにしたわ」
「僕の後に入るトイレってプライド捨てるほどなの?」
「当たり前じゃない。誰があんたの後に入るのを好むっていうのよ」
 そう言われ、確かにそうだと納得してしまう。むしろ誰の後だろうと好まない。可愛い女の子の後ならむしろ入りたいとは思うかもしれないが、そんなことは口が裂けても言えない。
 柊祐奈は嫌そうに仕方がなくといった感じで僕が入った後の個室に入り、鍵を閉める。複雑な思いが残る僕は無言で彼女が入った個室の扉を眺める。僕はお返ししてやりたいと思い、外で待機する。今度は僕と同じ目に合わせてやると今か、今かと彼女が扉を開く瞬間を待った。
 数分後、扉の鍵が開く音が響いた。僕は驚かせる構えを取ってタイミングよく彼女に襲いかかった。
「わっ!」
「………………」
 彼女は無言で無表情で僕の事を、ゴミを見るかのような目で見ていた。最終的にはチッと舌打ちまでする始末に僕は恥ずかしい思いでいっぱいだった。
「何か用?」
 柊祐奈はようやく口を開いたが、さっきの僕の行動で機嫌を損ねたみたいで口調が怖いのは見てとれる。
「今日……頑張ろうね」
「せいぜい、足を引っ張らないようにすることね」
 無理矢理会話をしようと言ってみたが、逆効果になってしまった。
「席はどこ?」
「あっち」
 柊祐奈は僕たちの席の三つ前の席に指を指した。なんだ、同じフロアにいたのかと安心する。
「さっきそこ通ったら神谷がいたけど、寝ていたみたいだからスルーしてきたわ」
「そうなんだ」
 既にトイレに行く前に僕たちの存在には気づいている様子だった。
「私は私で自分の席でやることがあるから新幹線の間は関わらないでよね。着いたら合流してあげるから感謝しなさい」
 なぜか上から目線で感謝をするように仕向けられる。先程から会って僕は彼女に虐められているような気がしてならない。かと、言って反抗するようなことをするつもりはないのだが、彼女、柊祐奈のペースに乗せられてしまっている。
「あ、そうそう。あんた、嘘付いたでしょ?」
「え?」
 僕はなんのことだかさっぱり分からず首を傾げる。
「あんたはA型の几帳面な性格……よね?」
 柊祐奈はズバリと当てたので僕は頷く。
「お店に行った時もおしぼりや箸はズレることなくまっすぐに揃えられていたし、何事にも几帳面さが出ているわ」
 急に褒められているような気がして嫌な感情は消えたが嘘を付いたことについては謎のままである。
「つまり、何が言いたいのかというと、さっきトイレに入ったらトイレットペーパーの先端が三角に折られていたのよ」
「それで?」
「先端が三角に折られていたということは使ったということ。つまり、あんたはさっき『小』と言った。しかし、実際は大。この意味わかる?」
「えっと、その柊さんが気持ち良く使ってもらえるようにしといただけだよ。大きいほうをしていなくても折ることだってあるのでは?」
「へー。あんたが出た後、私が使うって知っていたっけ? そんな訳ないよね? だってあんたが知ったのは出た後なんだし、私が入るって思ってもみなかったはずよ」
「いや、それはその……」
 僕には言い訳が出なかった。
「不覚だわ」
 柊祐奈はそう言って自分の席に戻っていった。そんな嫌なこと? と、僕は女心が分からず神谷がイビキをかいている隣の自席に戻って到着するまでじっと座っていた。
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