クレーンゲームの達人

タキテル

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「よく寝た! やっと着いたか」
 結局神谷は一回も起きることなく、到着と同時に目が覚め伸びをしていた。なんともまぁ、間抜けズラである。ちなみに僕は一睡もすることなく二時間、スマホのアプリゲームをしながら過ごしていた。
「随分気が緩んでいるようね」
 と、そこに僕たちの前に柊祐奈が合流した。手を腰に当てて堂々とした姿にその存在が大きく見えた。
「あれ? ゆうちゃん、居たの?」
「居たわよ。あんたのイビキこっちまで聞こえてうるさかったんだから」
 柊祐奈の言う通り、神谷のイビキはひどかった。そんな酷いイビキを至近距離で聞いていた僕の身にもなってほしいものだ。
「大会の開始が十三時からで受付は十二時三十分から。そして今が十一時少し過ぎたところでここから会場まで歩いて十分もかからないから少し時間あるね。どうする?」
 僕は腕時計を確認しながら二人に意見を求める。
「マック行くわよ」
 柊祐奈はそう言って歩き出してしまった。僕たちも彼女に誘導されるようについて行く。場所知っているのかと思ったが、都会だったら歩けば目に付くと何も考えないで歩いていたことに僕たちは後から知る。彼女の勘は当たっていてウロウロしていたら思いのほか見つけてしまったので僕たちは隙間時間に昼食を済ませた。流石に今回も僕たちのポケットマネーということにはならず彼女は彼女で自分の分を払った。いや、それが普通なのだが、そうゆうのは彼氏や親しい人に奢ってもらえよと僕は強く思う。

 昼食を済ませた僕たち三人は会場に向かった。今回も都会の中心のゲームセンター丸々一件を貸し切りにした感じであった。ここは全国でも有名で世界一クレーンゲームの台数が多い店『エブリディ』であり、その数なんと百五十台。三階まであり、その全てがクレーンゲームの台で埋まっているほどだ。僕も一度は来てみたいと思っていたので、今回こうして来られたことに感激に思う。まさに全国大会に相応しい会場とも言えるだろう。僕たちは早速受付に向かった。
「こちら、全国大会の受付になります。正体状はお持ちでしょうか?」
 受付のお姉さんに言われ、地区大会に優勝した時に貰った正体状を渡す。
「神谷達人様、鈴木裕斗様、柊祐奈様でよろしいですね?」
 フルネームで僕たちの名前を確認され、はいと言う。
「地区大会優勝おめでとうございます。今回、最後の大会も頑張ってくださいね。今回は予選の間、この三人でチームを組んでいただくのはご存知ですね?」
「はい、知っています」代表で神谷が答えた。
「予選は各地区別にチームを組んで頂き、決勝で個人戦に変わります。まず予選では制限時間以内にチームの合計で競ってもらいます」
「地区の予選と同じか……」と、僕は声を漏らすがすぐさま受付のお姉さんに否定される。
「いいえ。違います。地区の予選では各景品の点数の合計を競ってもらいましたが、今回の予選では総重量の合計を競ってもらいます」
「総重量?」
「はい。獲得した景品の重さが一番重ければそのチームが予選通過できます。なので、小物で稼いでも重さがなければ意味がないのです」
 難易度の高さに僕は顔を引きつった。予選では小物で稼いでいたけど、今回は総重量ということは前のようにはいかなくなったということだ。なので、ぬいぐるみを取っても対した重さにはならないので質があるものを取らなければならない。景品で何があるか、僕は想像を膨らます。
「はい。これで受付はできました。後は会場に入って司会者の指示に従ってください」
 僕たちはそのように言われ、会場の中に入る。会場にはちらほらと既に参加者の人が目に付いた。見た限り、普通の人である。クレーンゲームをやる人間はどれも凄そうには見えないものである。ホント、その辺にいる一般人といったところである。逆に肉体的に凄い人がいたところでやる種目がクレーンゲームであるので関係はなくなる。大会前に下見をしたいところであるが、二階から上はコーンバーが置かれていけないようにされていた。この先は何が待ち受けているのか大会が始まらないとわからない。一階だけは観覧自由なので皆、慎重に物色している。一階には小物しかなく総重量の決めてとなる景品は見当たらなかった。重そうなものは二階より上にある率が高いようだ。
 開始時間の十三時を回った時、店内のアナウンスが流れた。
「大会に参加の皆々様、中央のカウンターまでお集まりください」
 アナウンスの声を聞いて皆、一斉に動き出した。
「はい! こちらです。私の声が聞こえるところまで来てください」
 参加者を仕切っている司会者らしき人物はこの店のユニフォームを着ている。その司会者らしき人物も至って普通の三十代後半の中年男だった。
「集まりましたね。初めまして。自分は宇野と言います。カードの方ではないですよ。みよじです」
 笑い取ろうとしているのか、全く面白くもない振りに僕たちは苦笑いをする。
「それでは、ここに集まった二十四人、八チームで最後の予選を開催したいと思います。聞いての通り、チーム戦ではこの予選のみです。勝ち残った二チームから個人戦に変わり優勝者を決めたいと思います。まず、この予選のお題は『重量物』です。上位二チームが予選通過することができます。そこで今回の細かなルールをいくつかあります。まず、チームである為、単独行動は厳禁です。次に台の連続使用は十分まで。そして、今回、制限時間はありません。台の景品全てがなくなったらその時点で終了です。そして、今回この店には百五十台の台と景品が用意されています。当然、ここまで勝ち残った皆さんには全て取れますよね?」
 宇野は参加者に挑発的に言った。僕たちの事を試しているのだろうかとも取れる発言である。
「面白い。ワイが全ての台の景品を取り尽したる!」
 神谷は単純で宇野の挑発に乗ったようだ。一人で百五十台の景品を取るのは流石に無理だろうと僕は突っ込まずにはいられなかった。
「相変わらず馬鹿丸出しね」
 僕が突っ込む前に柊祐奈が先に突っ込む。
「では、皆様、チームがわかるように八色の色のゼッケンがありますので代表の方は来てください」
 宇野がそういって神谷が代表としてゼッケンを取りに行く。
「はい。これ」
 神谷は水色のゼッケンを持ってきた。この際、色は特に影響はない。僕は水色の四番のゼッケンに袖を通す。
「………………」
「? ゆうちゃん、どうしたの?」
「気に食わないわね」
「何が?」
「紫がいいから変えてきて」
 柊祐奈は色の変更を提案した。
「別にいいじゃない。色なんて関係ないし、そんなんで文句言うなら自分行けばよかったのに」
 もっともな意見である。『取りに行けよ』オーラ全開で視線を向けていたにも関わらず、実際行けばこの反応だ。これだから女はめんどくさい生き物だと実感する。この柊祐奈の不満げな顔を収めるには変えに行くしかないのだろうか。と、言っても紫は別のチームが袖を通した後だったのでどうすることもできない。
「悪かったよ。今度は紫が好きっていうこと忘れないからさ。ね?」
 神谷は柊祐奈の下手に出ていてすっかり目上の上司に申し訳なく頭を下げる部下である。
「仕方がないから水色で我慢してあげる」
 柊祐奈は神谷の行動が伝わったのか、なんとか納得してくれた。色くらいでこだわらなくても良さそうであるが、彼女には見た目も大事な要素であったみたいだ。
「ゼッケンは決まりましたね。それでは説明に戻ります。今回、百五十台のクレーンゲームが対象ではありますが、二階より上に上がる為には総重量十キロを超えないと上には上がれません。そして、三階に行くためにはゴムボール五個以上ないと上には進めません。つまり、上の階に行くためには条件を満たした技術と才能がなければ行けないシステムとなっております。予選を通過するチームは当然、三階にたどり着かなければ勝利はないです。それぞれのチームで持ち金を設けます。各チームは一万円分の持ち金です。そのお金でゲームをしてもらいますが、ゲーム中に使い切ってしまったらその時点でそのチームは脱落。総重量の計算に入ります」
 宇野は追加で説明をした。上に行くにはそれなりの才能がないと行けない仕組みであること。上に行かなければ勝てないこと。そして、一万円という限られた金額での挑戦。まさに決勝ならではの勝負方法である。しかし、三階に行くためのゴムボールとはどういったものであろうか。それすらも景品として置いてあるということなのだろうか。
 スタッフから百円玉が百枚入ったメダル用のバケツを配られる。その重みがチームの予算である。
「では、チーム戦の予選を開始します。よーい……ドン!」
 宇野は運動会のリレーのような合図で開始してしまった。不意打ちのような合図に参加者は戸惑いを見せるが、状況を掴み動き出した。
「い、行こう!」
 僕たちも皆に続いてクレーン台に向かう。この一階のフロアはおよそ五十台のクレーン台がある。八チーム二十四人はバラついてアーム操作に入った。
「これにしよう」
 神谷が言った。選ぶというよりもただ目に付いただけであるが、早速景品獲得に取り掛かる。
「ゲームスタート!」
 百円玉を入れたことによりゲームの音声が流れた。プレイを引き立てる声である。アームを動かす度にピコピコと音が流れるが、正直集中力が途切れるシステムだとは言うまでもない。
「ストップ! いっくよ~。取れるかな?」
 これもクレーンの音声だ。プレイする人を試すかのような掛け声である。
「よし!」
 それでも神谷は惑わされることなく難なくと景品を獲得していく。
「次は私がやる。鈴木! コインを寄越しなさい」
 命令口調で柊祐奈に百円玉を要求される。僕はチームのお金を持たされていたので財布みたいなものである。二人の邪魔にならないようにこうして補助の役割を買って出たわけだ。と、言っても僕は二人の才能に及ばないのでこのような役割しかできないわけだが。
「これにするわ」
 柊祐奈が選んだのはバウンドキャッチャーである。アーム自体は強力で掴めば確実に取れるのだが、問題は落とした時に現れる。落とし口に置かれたゴムボールが獲得を妨げ、景品が跳ね返った場所によって景品の獲得が左右される台である。取るポイントとしては掴んだ時に不安定に持つのが獲得への決め手になる。元店員の僕としたら優しい方であるが、回数をかけずに取ろうとしたら難易度が高いのかもしれない。
 柊祐奈は一回目のプレイを開始する。最初は素直に掴んでゴムボールの方に持っていくも元の位置に跳ね返って振り出しに戻る。
 続けて挑戦するもうまく元の位置に返される。そしてついに掴むことすら失敗する始末だ。
「おい。チームのお金なんだからあんまり無駄にしないでよ」
 神谷が注意するように呼びかける。
「うるさいわね。わかっているわよ。少し集中するから黙ってて」
 見惑なムードが流れたことによって僕は一瞬、止めに入るべきなのかと思ったが神谷の一言でそれは打ち砕かれた。
「そういえばさ。景品を取ることに関していけない注意事項ってなかったよな?」
「うん。確かに景品を取れとしか……」と、僕は思い出すように呟く。
「だったらあの手を使おう」
 神谷は悪い顔になり、よからぬことをしようとしているのが見て取れた。
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