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「は? あんた、どこ狙っているのよ」
柊祐奈は神谷のプレイに否定的に言った。何か策があるという神谷は柊祐奈と変わってもらい、プレイをしたものの神谷は景品に目も呉れず何もないところにアームを置いたのだ。そのことに柊祐奈は初歩的なミスに突っ込まずにはいられなかった。
「ワイの狙いは景品じゃない」
「は? じゃ、なに狙っているのよ」
「まぁ、見てればわかる」
すると、アームは景品獲得を妨げるゴムボールに向かって降下する。すると、その強力のアームはゴムボールがズレることなくがっちりと掴んだのだ。そして、そのままゴムボールを持ち上げ、離した際に台の隅まで追いやったのだ。
「これで壁は消えた」
神谷が狙ったのは景品獲得を邪魔するゴムボールの排除だった。
「あーなるほど」
柊祐奈はこの行動に納得したようである。
「後は中の景品を全て取り尽くす」
台の中が空になるまで取り尽くした。ちなみに景品はお菓子の缶であるのでそれなりの重さにはなった。しかし、十キロにはまだ遠い。
「合計総重量十二キロオーバー! 二階に上がる権利を与えます」
早くも二階に上がるチームが現れた。赤色のゼッケンのチームだ。開始から三十分も経っていないこんな短時間で二階に上がれるということはかなりの実力者がチーム内にいるのは確実だった。
「くそ。先を越された。ワイたちも早く行くぞ」
「行くって言っても皆取れなくて苦労しているのにどうやって取るっていうの?」
僕は神谷の早まった発言に不定を重ねる。
「禁断の技を使っていく」
「禁断ってまさかそのまさか?」
「そのまさかや。ディスプレイ取りしてく」
神谷はディスプレイ取りを口にした。支店では嫌われる技で僕が元店員の時にもしていた予想外の取り方である。動画を撮っている時では視聴者の目があり、封印していたが、今はそのような目はない。だからこの瞬間に封印を解こうとしたのだ。先程のゴムボールを取る行為もどちらかというとディスプレイ取りに入るのか疑問だが、少なくともルールを裏切る取り方には変わりない。そのことは頭に置いといてもらいたい。
「やるで」
この後、神谷の暴走は始まった。次々と景品を獲得していった。
ある程度取れたらスタッフの元に行き、総重量の査定に入った。
「十キロオーバー。二階に行ける権利を与えます」
神谷の活躍もあり、なんとか十キロを越える景品を獲得したのだ。
「よし。次のステージに行こう!」
「あんたは何もしていないでしょ」
「…………」
僕が仕切る中、柊祐奈の突っ込みにより僕は存在感をなくした。
二階に続く階段を上り、登った先には既にスタッフのお兄さんが僕たちを待ち受けていた。
「ようこそ! 二階のフロアへ。こちらでは上の階に進む為にはゴムボールを五個以上の獲得が条件になります。そのゴムボールは景品として置いてあるのではなく、景品の敷いている床の部分に配置されています。つまり、本来取るべくものではないものを取ることが今回の課題になります」
スタッフのお兄さんは坦々と説明をする。ここに来た者には説明するように仕向けられているかのようであった。
「あーよくでかいぬいぐるみの下にあるボールのことか」
神谷は納得したようだ。
「ちなみにボールは絶対に取る必要はありません。上の階に行きたい人だけが取ればいいのです。あくまでも勝敗は総重量なのですから」
スタッフのお兄さんは補足する。
「上の階に行けば勝敗に繋がる景品があるんですか?」
柊祐奈は質問する。
「ええ。それはもちろんです。逆転できる可能性もあるかもしれませんよ」
スタッフのお兄さんは曖昧なようにいうがこの勿体振りは絶対何かあるのは間違いなかった。
「ただし、課題をクリアしても所持金がなければその時点で終了ですので注意してくださいね」
にこやかにスタッフのお兄さんは言う。
「鈴木! 後、いくら残っている?」
神谷にそう言われて僕は百円玉を数える。
「……六千二百円」
「まだまだ余裕だな。よし、景品を取りつつ、課題も同時に実行しようか」
神谷は提案する。
「そうね。上の階に興味あるわ」
珍しく柊祐奈は神谷の意見に同意した。
二階フロアには巨大ぬいぐるみがメインのフロアであり、少なくとも一階よりも重さが期待できそうである。
「ここは私に任して。鈴木、五百円頂戴」
柊祐奈は僕から五百円を請求する。
確かに景品が重いものばかりではあるが同時にリタイアのリスクは高まる。一階の台では百円からプレイすることができたが、二階には二百円からの台がいくつかあった。金額が大きい分、回数はかけられず、確率機というやつであるので取れるのは運と実力が必要なのである。柊祐奈は巨大ぬいぐるみが景品である二百円の台に向かった。そして、五百円を入れることにより三回のプレイが可能な方法をとった。
まずはアームの動く範囲の確認である。制限時間内は移動が自由なので上下左右に方向を確かめている。
「うっ……届かない」
柊祐奈はディスプレイ取りを試みるが、アームがうまく壁際にある景品に届かない様子。これはできるものとできないものに別れるのでいつでもできるものではない。そもそもディスプレイ取りは店員の配置ミスによって生まれるもの。なので、どの台でもできると考えないでほしい。
「あ、しまった!」
方向を確かめていた直後、アームは降下を始めてしまった。どうやら制限時間が切れてしまったようだ。一回無駄にしてしまった。
すると、アームは三本の爪の内、一本がディスプレイのぬいぐるみを支えている突っ張り棒に入り込んだのだ。ガッチリと掴んだ突っ張り棒を上に上昇しようとするが力対決のようになっている。アームの力が勝つのか、突っ張り棒の支えている力が勝つのか、まさに一騎打ちのような展開だった。そして、結果は……。
「ピロピロピロ~ン。店員を呼んでね。店員を呼んでね。店員を……」
アームが壊れたような音がしてブザーが鳴ったのだ。突っ張り棒の力の方が強かったようだ。
「なんなのよ! このポンコツ!」
柊祐奈は機械に当たるように殴りにかかろうとしていたので僕は急いで彼女の肩を後ろから掴んで止めに入った。
「ストップ! ストップ!」
「こら! 鈴木の分際で触るな」
僕の存在を軽く否定されたような気分になったが、機械に当たるのだけは食い止めた。
「すいません。故障ですか?」
僕たちの目の前に先程のスタッフのお兄さんが喋りかけてきた。
「直しますので少し下がっていてください」
そう言ってスタッフのお兄さんは慣れた手つきで台の鍵を取り出し機械のボタンを押した。ショーケースの中を開けてアームを元の位置に戻す。
「はい。直りました。どうぞ続けて下さい」
アームは元の位置に戻り、回数も始める前の三回に戻った状態であった。降り出しである。
「ありがとう」
柊祐奈はお礼を言って再度プレイを始める。今回は本来狙うべき景品にアームを落とした。しかし、一発ゲットは流石に難しかった。
二回目、三回目と狙っていくが獲得は困難であった。が、少しずつであるが取り出し口に近づいたので回数を重ねれば取れそうである。
「次で取れそう?」
僕は不安混じりに聞く。
「任せなさい」
僕は彼女の言葉を信じて五百円を渡した。
「行くわよ」
柊祐奈は三回と限られた回数で景品獲得にチャレンジした。
一回、一回を確実にプレイして取り出し口に持っていく。二回のプレイをして景品が取り出し口に半分乗っかった。
「よし、後は畳返しで取れる」
彼女の言う畳返しとは景品を一回転させることによって景品を取り出し口まで持っていき獲得する技のうちの一つである。
宣言通り、柊祐奈は巨大ぬいぐるみの景品を獲得した。
「やった! ゲット! どんなもんよ」
柊祐奈は獲得したぬいぐるみを見せつけて嬉しそうにはしゃぐ。その姿は妙に可愛く見えた。
「ワイはゴムボールを狙う。ゆうちゃんは景品の獲得頼むわ」
「わかったわ」
二人で役割分担を決める。
「僕は……?」
「鈴木は邪魔にならないようにフォロー頼む」
僕の存在が小さくなっていくのは気のせいだろうか? 今大会まるで活躍していないのではないか。そう思ってもそれしか役目がないので仕方がない。
「ボムボール五個獲得。三階のフロアへどうぞ!」
三階に進む第一号が現れた。どこのチームかと思って見ると例の赤のゼッケンのチームであった。また僕たちよりも前に進んでいるのだ。二回のフロアには僕たちの他にも四チームいるがまだ三階に行くような実力のチームは現れない。
「強いな、あの赤チーム」
神谷は赤チームに闘争心を燃やしているようだ。
時間無制限というだけに焦る必要はないのだが、先を越されたという事実に納得がいかないように見える。景品を全て取り尽くすか所持金がなくなるまで戦うこの予選。まず、景品を全て取り尽くすという条件はおそらく難しいであろう。と、なれば一番勝敗が左右されるのであれば所持金がなくなる方である。既に二チームは所持金を失い、リタイアになっている。残るは僕たちのチームを合わせて六チーム。勝負はまだわからない。
「ゴムボール四個獲得。後、一個や」
「こっちも景品五体獲得よ」
二人は順調に景品とゴムボールを獲得していった。上の階に行くためにはあと一つのゴムボールが必要だ。
「さて、どの台にしようか」
「神谷! お願いがあるんだけど」
「どうした? 鈴木」
「最後のゴムボールは僕に取らせてほしいんだけど」
ここまで全く見せ場がなかったので僕は自ら大役を買って出たのだ。
「そうか。なら任せるわ」
神谷はあっさりと僕に任せてしまった。
「ありがとう。必ず取るから」
そう言って僕はゴムボールがある台に向かった。メインの景品には目も呉れず僕は外野に散らばったゴムボールにアームを落とす。アームの動きは人一倍に見てきた。そんな僕が自らプレイするのだからレアである。ちなみにゴムボールがある台は二百円の台にしか置いてなく失敗すればかなり痛い。そんな中、僕はプレッシャーに打ち勝ち、なんとかゴムボールを掴むことに成功した。このまま落とし口に行ってくれることを願う。しかし、その願いも虚しく移動中にアームからゴムボールが外れてしまった。
「終わった……」
諦めかけていたその時、落としたゴムボールは台の底に跳ね返ってそのまま取り出し口にホールインワンを決めたのだ。
「お? おー!」
僕は思わず興奮気味に声を発してしまっていた。まさに奇跡の瞬間である。
「ただのまぐれじゃない」
横から柊祐奈は辛口なコメントを述べるが僕はそれでも嬉しかった。景品(ゴムボールだけど)を取る楽しさはやはり快感である。
「よし! これで条件を満たした。上の階に進もう」
神谷は上の階に進む階段にいるスタッフの元に行く。
「はい! ゴムボール五つ」
神谷はスタッフに確認の意味でゴムボールを見せつけた。
「はい。確かに。それでは上に進み下さい」
スタッフに通され、僕たちは上の階に進む。
最後のフロアには二十台ほどのクレーン台が置かれている。景品の中身は既に空の状態だった。かろうじて、いくつか景品は残っているが取られた後だったのは言うまでもない。
「これって……」柊祐奈が声を漏らす。
「どうやら赤チームの仕業だ。景品はもう二、三個くらいしかないだろう」神谷が現状を把握した。
「赤チームはどこに……」と、僕は周囲を探す。
「赤チームは所持金を失いリタイアです。でも、ここまでの景品を獲得したら予選通過は間違いないでしょう」
僕たちの後ろから声をかけるスタッフがいた。
「そっか。この荒らし方を見ればまるで神谷みたいな実力は見て取れる」僕は納得する。
「残った景品見てみてよ」
柊祐奈は台に指差す。
台の中にある景品はダンベルである。一個五キロと記載されているいかにも総重量を稼ぐための景品である。こちらの台も全て二百円からプレイが可能のものである。しかし、この台には五百円で三回できる特権は存在しない。完全に一回二百円で設定されている。
「鈴木! 残りの所持金は?」
神谷は現状把握の為に所持金を聞いた。僕は百円玉を数える。
「……ちょうど二千円」
「と、いうことはここで使えるのは十回までか……」
「ちょっと待ってよ。あんな重たいやつどうやってアームで持ち上げるっていうのよ? 危ない橋を渡るくらいなら下の階に降りて簡単なものを狙った方がまだマシよ」
「いや、ゆうちゃん。よく見てよ。何もアームで直接ダンベルを掴む構造になっていない。代理のものを取れば取れる仕組みみたいだよ」
神谷の言う通り、この台はダンベルと繋がれた重りを落とすものやフックで引っ掛けて釣り上げるタイプのものと直接景品を掴んで落とすタイプのものではなかった。流石に五キロもあるダンベルをアームで掴もうとしても絶対に不可能だ。あれば誰もやらないだろう。まだ、代理のものを掴むだけなら可能性は残っている。
「残りの所持金は全てこのフロアに投資や」
神谷はここで使い切ることを決めたようだ。それは柊祐奈も納得である。
「後は任せろ!」
神谷はかっこよくそう言った。
その後、なんとか一つのダンベルを獲得するが、所持金は全て使い切ってしまい、僕たち水色チームはその時点でリタイアとなった。
柊祐奈は神谷のプレイに否定的に言った。何か策があるという神谷は柊祐奈と変わってもらい、プレイをしたものの神谷は景品に目も呉れず何もないところにアームを置いたのだ。そのことに柊祐奈は初歩的なミスに突っ込まずにはいられなかった。
「ワイの狙いは景品じゃない」
「は? じゃ、なに狙っているのよ」
「まぁ、見てればわかる」
すると、アームは景品獲得を妨げるゴムボールに向かって降下する。すると、その強力のアームはゴムボールがズレることなくがっちりと掴んだのだ。そして、そのままゴムボールを持ち上げ、離した際に台の隅まで追いやったのだ。
「これで壁は消えた」
神谷が狙ったのは景品獲得を邪魔するゴムボールの排除だった。
「あーなるほど」
柊祐奈はこの行動に納得したようである。
「後は中の景品を全て取り尽くす」
台の中が空になるまで取り尽くした。ちなみに景品はお菓子の缶であるのでそれなりの重さにはなった。しかし、十キロにはまだ遠い。
「合計総重量十二キロオーバー! 二階に上がる権利を与えます」
早くも二階に上がるチームが現れた。赤色のゼッケンのチームだ。開始から三十分も経っていないこんな短時間で二階に上がれるということはかなりの実力者がチーム内にいるのは確実だった。
「くそ。先を越された。ワイたちも早く行くぞ」
「行くって言っても皆取れなくて苦労しているのにどうやって取るっていうの?」
僕は神谷の早まった発言に不定を重ねる。
「禁断の技を使っていく」
「禁断ってまさかそのまさか?」
「そのまさかや。ディスプレイ取りしてく」
神谷はディスプレイ取りを口にした。支店では嫌われる技で僕が元店員の時にもしていた予想外の取り方である。動画を撮っている時では視聴者の目があり、封印していたが、今はそのような目はない。だからこの瞬間に封印を解こうとしたのだ。先程のゴムボールを取る行為もどちらかというとディスプレイ取りに入るのか疑問だが、少なくともルールを裏切る取り方には変わりない。そのことは頭に置いといてもらいたい。
「やるで」
この後、神谷の暴走は始まった。次々と景品を獲得していった。
ある程度取れたらスタッフの元に行き、総重量の査定に入った。
「十キロオーバー。二階に行ける権利を与えます」
神谷の活躍もあり、なんとか十キロを越える景品を獲得したのだ。
「よし。次のステージに行こう!」
「あんたは何もしていないでしょ」
「…………」
僕が仕切る中、柊祐奈の突っ込みにより僕は存在感をなくした。
二階に続く階段を上り、登った先には既にスタッフのお兄さんが僕たちを待ち受けていた。
「ようこそ! 二階のフロアへ。こちらでは上の階に進む為にはゴムボールを五個以上の獲得が条件になります。そのゴムボールは景品として置いてあるのではなく、景品の敷いている床の部分に配置されています。つまり、本来取るべくものではないものを取ることが今回の課題になります」
スタッフのお兄さんは坦々と説明をする。ここに来た者には説明するように仕向けられているかのようであった。
「あーよくでかいぬいぐるみの下にあるボールのことか」
神谷は納得したようだ。
「ちなみにボールは絶対に取る必要はありません。上の階に行きたい人だけが取ればいいのです。あくまでも勝敗は総重量なのですから」
スタッフのお兄さんは補足する。
「上の階に行けば勝敗に繋がる景品があるんですか?」
柊祐奈は質問する。
「ええ。それはもちろんです。逆転できる可能性もあるかもしれませんよ」
スタッフのお兄さんは曖昧なようにいうがこの勿体振りは絶対何かあるのは間違いなかった。
「ただし、課題をクリアしても所持金がなければその時点で終了ですので注意してくださいね」
にこやかにスタッフのお兄さんは言う。
「鈴木! 後、いくら残っている?」
神谷にそう言われて僕は百円玉を数える。
「……六千二百円」
「まだまだ余裕だな。よし、景品を取りつつ、課題も同時に実行しようか」
神谷は提案する。
「そうね。上の階に興味あるわ」
珍しく柊祐奈は神谷の意見に同意した。
二階フロアには巨大ぬいぐるみがメインのフロアであり、少なくとも一階よりも重さが期待できそうである。
「ここは私に任して。鈴木、五百円頂戴」
柊祐奈は僕から五百円を請求する。
確かに景品が重いものばかりではあるが同時にリタイアのリスクは高まる。一階の台では百円からプレイすることができたが、二階には二百円からの台がいくつかあった。金額が大きい分、回数はかけられず、確率機というやつであるので取れるのは運と実力が必要なのである。柊祐奈は巨大ぬいぐるみが景品である二百円の台に向かった。そして、五百円を入れることにより三回のプレイが可能な方法をとった。
まずはアームの動く範囲の確認である。制限時間内は移動が自由なので上下左右に方向を確かめている。
「うっ……届かない」
柊祐奈はディスプレイ取りを試みるが、アームがうまく壁際にある景品に届かない様子。これはできるものとできないものに別れるのでいつでもできるものではない。そもそもディスプレイ取りは店員の配置ミスによって生まれるもの。なので、どの台でもできると考えないでほしい。
「あ、しまった!」
方向を確かめていた直後、アームは降下を始めてしまった。どうやら制限時間が切れてしまったようだ。一回無駄にしてしまった。
すると、アームは三本の爪の内、一本がディスプレイのぬいぐるみを支えている突っ張り棒に入り込んだのだ。ガッチリと掴んだ突っ張り棒を上に上昇しようとするが力対決のようになっている。アームの力が勝つのか、突っ張り棒の支えている力が勝つのか、まさに一騎打ちのような展開だった。そして、結果は……。
「ピロピロピロ~ン。店員を呼んでね。店員を呼んでね。店員を……」
アームが壊れたような音がしてブザーが鳴ったのだ。突っ張り棒の力の方が強かったようだ。
「なんなのよ! このポンコツ!」
柊祐奈は機械に当たるように殴りにかかろうとしていたので僕は急いで彼女の肩を後ろから掴んで止めに入った。
「ストップ! ストップ!」
「こら! 鈴木の分際で触るな」
僕の存在を軽く否定されたような気分になったが、機械に当たるのだけは食い止めた。
「すいません。故障ですか?」
僕たちの目の前に先程のスタッフのお兄さんが喋りかけてきた。
「直しますので少し下がっていてください」
そう言ってスタッフのお兄さんは慣れた手つきで台の鍵を取り出し機械のボタンを押した。ショーケースの中を開けてアームを元の位置に戻す。
「はい。直りました。どうぞ続けて下さい」
アームは元の位置に戻り、回数も始める前の三回に戻った状態であった。降り出しである。
「ありがとう」
柊祐奈はお礼を言って再度プレイを始める。今回は本来狙うべき景品にアームを落とした。しかし、一発ゲットは流石に難しかった。
二回目、三回目と狙っていくが獲得は困難であった。が、少しずつであるが取り出し口に近づいたので回数を重ねれば取れそうである。
「次で取れそう?」
僕は不安混じりに聞く。
「任せなさい」
僕は彼女の言葉を信じて五百円を渡した。
「行くわよ」
柊祐奈は三回と限られた回数で景品獲得にチャレンジした。
一回、一回を確実にプレイして取り出し口に持っていく。二回のプレイをして景品が取り出し口に半分乗っかった。
「よし、後は畳返しで取れる」
彼女の言う畳返しとは景品を一回転させることによって景品を取り出し口まで持っていき獲得する技のうちの一つである。
宣言通り、柊祐奈は巨大ぬいぐるみの景品を獲得した。
「やった! ゲット! どんなもんよ」
柊祐奈は獲得したぬいぐるみを見せつけて嬉しそうにはしゃぐ。その姿は妙に可愛く見えた。
「ワイはゴムボールを狙う。ゆうちゃんは景品の獲得頼むわ」
「わかったわ」
二人で役割分担を決める。
「僕は……?」
「鈴木は邪魔にならないようにフォロー頼む」
僕の存在が小さくなっていくのは気のせいだろうか? 今大会まるで活躍していないのではないか。そう思ってもそれしか役目がないので仕方がない。
「ボムボール五個獲得。三階のフロアへどうぞ!」
三階に進む第一号が現れた。どこのチームかと思って見ると例の赤のゼッケンのチームであった。また僕たちよりも前に進んでいるのだ。二回のフロアには僕たちの他にも四チームいるがまだ三階に行くような実力のチームは現れない。
「強いな、あの赤チーム」
神谷は赤チームに闘争心を燃やしているようだ。
時間無制限というだけに焦る必要はないのだが、先を越されたという事実に納得がいかないように見える。景品を全て取り尽くすか所持金がなくなるまで戦うこの予選。まず、景品を全て取り尽くすという条件はおそらく難しいであろう。と、なれば一番勝敗が左右されるのであれば所持金がなくなる方である。既に二チームは所持金を失い、リタイアになっている。残るは僕たちのチームを合わせて六チーム。勝負はまだわからない。
「ゴムボール四個獲得。後、一個や」
「こっちも景品五体獲得よ」
二人は順調に景品とゴムボールを獲得していった。上の階に行くためにはあと一つのゴムボールが必要だ。
「さて、どの台にしようか」
「神谷! お願いがあるんだけど」
「どうした? 鈴木」
「最後のゴムボールは僕に取らせてほしいんだけど」
ここまで全く見せ場がなかったので僕は自ら大役を買って出たのだ。
「そうか。なら任せるわ」
神谷はあっさりと僕に任せてしまった。
「ありがとう。必ず取るから」
そう言って僕はゴムボールがある台に向かった。メインの景品には目も呉れず僕は外野に散らばったゴムボールにアームを落とす。アームの動きは人一倍に見てきた。そんな僕が自らプレイするのだからレアである。ちなみにゴムボールがある台は二百円の台にしか置いてなく失敗すればかなり痛い。そんな中、僕はプレッシャーに打ち勝ち、なんとかゴムボールを掴むことに成功した。このまま落とし口に行ってくれることを願う。しかし、その願いも虚しく移動中にアームからゴムボールが外れてしまった。
「終わった……」
諦めかけていたその時、落としたゴムボールは台の底に跳ね返ってそのまま取り出し口にホールインワンを決めたのだ。
「お? おー!」
僕は思わず興奮気味に声を発してしまっていた。まさに奇跡の瞬間である。
「ただのまぐれじゃない」
横から柊祐奈は辛口なコメントを述べるが僕はそれでも嬉しかった。景品(ゴムボールだけど)を取る楽しさはやはり快感である。
「よし! これで条件を満たした。上の階に進もう」
神谷は上の階に進む階段にいるスタッフの元に行く。
「はい! ゴムボール五つ」
神谷はスタッフに確認の意味でゴムボールを見せつけた。
「はい。確かに。それでは上に進み下さい」
スタッフに通され、僕たちは上の階に進む。
最後のフロアには二十台ほどのクレーン台が置かれている。景品の中身は既に空の状態だった。かろうじて、いくつか景品は残っているが取られた後だったのは言うまでもない。
「これって……」柊祐奈が声を漏らす。
「どうやら赤チームの仕業だ。景品はもう二、三個くらいしかないだろう」神谷が現状を把握した。
「赤チームはどこに……」と、僕は周囲を探す。
「赤チームは所持金を失いリタイアです。でも、ここまでの景品を獲得したら予選通過は間違いないでしょう」
僕たちの後ろから声をかけるスタッフがいた。
「そっか。この荒らし方を見ればまるで神谷みたいな実力は見て取れる」僕は納得する。
「残った景品見てみてよ」
柊祐奈は台に指差す。
台の中にある景品はダンベルである。一個五キロと記載されているいかにも総重量を稼ぐための景品である。こちらの台も全て二百円からプレイが可能のものである。しかし、この台には五百円で三回できる特権は存在しない。完全に一回二百円で設定されている。
「鈴木! 残りの所持金は?」
神谷は現状把握の為に所持金を聞いた。僕は百円玉を数える。
「……ちょうど二千円」
「と、いうことはここで使えるのは十回までか……」
「ちょっと待ってよ。あんな重たいやつどうやってアームで持ち上げるっていうのよ? 危ない橋を渡るくらいなら下の階に降りて簡単なものを狙った方がまだマシよ」
「いや、ゆうちゃん。よく見てよ。何もアームで直接ダンベルを掴む構造になっていない。代理のものを取れば取れる仕組みみたいだよ」
神谷の言う通り、この台はダンベルと繋がれた重りを落とすものやフックで引っ掛けて釣り上げるタイプのものと直接景品を掴んで落とすタイプのものではなかった。流石に五キロもあるダンベルをアームで掴もうとしても絶対に不可能だ。あれば誰もやらないだろう。まだ、代理のものを掴むだけなら可能性は残っている。
「残りの所持金は全てこのフロアに投資や」
神谷はここで使い切ることを決めたようだ。それは柊祐奈も納得である。
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