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エピローグ
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☆
よく晴れた日曜日の午前のこと――僕はある人を駅で待っていた。
僕は今まで通り、つまらない日常を送っていた。退屈という訳ではない。僕は今のこの瞬間が楽しみで仕方がない。
ほんの少し前の僕はなんの為に生きているのか、ただ、毎日仕事をしてゲームをしての日々を過ごしていただけのつまらない人生を送っていた。だが、今の自分と前の自分のつまらないというのは意味が少し違っていた。前の自分は面白みがなく、このまま変わらない毎日を過ごしていくだけの人生だと思っていた。しかし、今の自分はある人と出会ったことにより、今までの生活が激変したと言ってもいいくらい変わったのだ。そうゆう意味では断然今の方が良い方向に動いていると言えるだろう。だが、何故つまらないという点なのかは少し時が遡る必要がある。そう、あの時の決断の瞬間に時は戻ることになる。
「これが、彩子さんの答え……ですか?」
「はい?」
彩子さんはキョトンとした顔だった。
「違うのですか?」
「答えってなんのことですか?」
「いや、だから、僕と正式にお付き合いするってことですよ」
「やだな~私は誰とも付き合う気はありませんよ」
「ど、どうゆうことですか?」
「どうも、こうも、私はレンタル彼女としてここに来た――ただそれだけのことです。正式な交際とかガチな彼女になるとか、そんな考えは私にはございません」
確かに僕はレンタル彼女として依頼はしたが、その中身はどちらと本気で交際するのかという肩書きが付いている。なので、承諾した時点でどちらと交際するのか迷っていたと思っていた。それの決断が今のこれである。
「彩子さんはギリギリまでどちらかと交際するのか迷っていたわけではないということですか?」
「どちらの依頼を受けるのかで迷っていただけです」
そうゆうことか。通りで話がうまくいっていると思った。
「で、では、なぜ僕とデートをしようと思ったのですか?」
「人助けです」
「え?」
「宇尾島さんはモテる要素がいくつか感じられますけど、二ノ宮さんには残念ながら、今の時点ではありません。なので、レンタル彼女にも見捨てられたら可哀想だと思ったので、今回は二ノ宮様の依頼を引き受けることにしました。レンタル彼女を雇う人はモテない人が多いです。なので、私はモテない人たちに手を伸ばしたくなるのです」
「あ、そ、そうですか……」
僕はモテない男の代表なのかもしれない。彩子さんに人助けと言われ、情けをかけられたということになる。それがなんだか切なくなってくる。でも、そんな僕に手を伸ばしてくれる彩子さんは偉大だ。こんな僕を拾ってくれるだけで救われた気がした。
「では、僕と本気で付き合うことは一生ないのでしょうか?」
「一生という言い方をしますと、言い切れませんね。私の気が変わるかもしれないですし、可能性としては、ミジンコくらいはあるかもしれません。ま、ないと考えていいでしょう」
「なら、僕はそのミジンコくらいの可能性にかけてみたいと思います。彩子さんと繋がりがある限り!」
「ふふ、あなたもとんだ一途さんですね。私は向き合ってくるものは全力で受け止めますよ――レンタル彼女として」
彩子さんは最後の『レンタル彼女』という言葉を尊重させて言った。
「彩子さん、では、新たな一歩として夢の国に行きましょう」
僕は彩子さんに手を差し出した。
「ただのユニバーサルじゃないですか。でも、そうゆう言い方は嫌いではありませんよ。少しだけ女心がわかってきましたね」
彩子さんは笑いながら言った。自然と僕も笑みがこぼれる。
僕が初めて好きになった人、彩子さん。彩子さんは彼女であるが、彼女ではない。届きそうで届かない関係性。時間が経てば消える関係だが、また呼んだら再び一緒の時間がくる。今の関係に満足とは言えないけど、今はその関係が僕の生きがいである。彼女の笑顔が僕の幸せ。ずっと、ずっと傍にいたい。
彩子さんがストップウォッチを押した瞬間、その時間は訪れる。幸せの時間の幕開け。
僕は彩子さんの手を引いてテーマパークの地へ二人で踏み込む。
「そういえば、彩子さんの本名ってなんですか? もしかして彩子っていうのは偽名とか……」
「いいえ。本名です。私の名前は恋隠(こいかくし)彩子(あやこ)です」
「こいかくし……彩子さんらしい名前ですね」
「そうですかね。私はあまり好きではありませんが。なので、これからも私のことは彩子でお願いします」
「あの、彩子って呼び捨てで呼んでも構いませんか?」
「ずっと思っていましたけど、普通に彩子って呼んでくれて構いませんよ? 年上なんだし……それに敬語じゃなくても全然構いませんよ。堅苦しいですし堂々と言えばいいんですよ」
「え? そうなんですか? つい、目上の人に感じてしまって」
「平等ですよ、私達の関係は」
「そうですか……じゃ、これから呼び捨て、タメ口で言わせてもらいますね」
僕は勇気を振り絞って名前を呼んだ。
進展と言えば、呼び捨てとタメ口になったことくらい。でも、今はそれで構わない。だって、今が楽しければそれでいい。僕はこの一秒、一秒の瞬間がとても輝いている。僕の生きがい。目の前に待ち合わせをしている彼女が僕を見つけて、手を振って走ってきた。
僕も彼女と同じく手を振った。僕の幸せとは、このことを言うのだろう。本当の恋人になれるかどうかはまだ、先の話。僕は彼女の名前を呼んだ。
「彩子!」
「りっくん、お待たせ」
彼女は彼女であって彼女じゃない。
だって彼女はレンタル彼女なのだから――
完
よく晴れた日曜日の午前のこと――僕はある人を駅で待っていた。
僕は今まで通り、つまらない日常を送っていた。退屈という訳ではない。僕は今のこの瞬間が楽しみで仕方がない。
ほんの少し前の僕はなんの為に生きているのか、ただ、毎日仕事をしてゲームをしての日々を過ごしていただけのつまらない人生を送っていた。だが、今の自分と前の自分のつまらないというのは意味が少し違っていた。前の自分は面白みがなく、このまま変わらない毎日を過ごしていくだけの人生だと思っていた。しかし、今の自分はある人と出会ったことにより、今までの生活が激変したと言ってもいいくらい変わったのだ。そうゆう意味では断然今の方が良い方向に動いていると言えるだろう。だが、何故つまらないという点なのかは少し時が遡る必要がある。そう、あの時の決断の瞬間に時は戻ることになる。
「これが、彩子さんの答え……ですか?」
「はい?」
彩子さんはキョトンとした顔だった。
「違うのですか?」
「答えってなんのことですか?」
「いや、だから、僕と正式にお付き合いするってことですよ」
「やだな~私は誰とも付き合う気はありませんよ」
「ど、どうゆうことですか?」
「どうも、こうも、私はレンタル彼女としてここに来た――ただそれだけのことです。正式な交際とかガチな彼女になるとか、そんな考えは私にはございません」
確かに僕はレンタル彼女として依頼はしたが、その中身はどちらと本気で交際するのかという肩書きが付いている。なので、承諾した時点でどちらと交際するのか迷っていたと思っていた。それの決断が今のこれである。
「彩子さんはギリギリまでどちらかと交際するのか迷っていたわけではないということですか?」
「どちらの依頼を受けるのかで迷っていただけです」
そうゆうことか。通りで話がうまくいっていると思った。
「で、では、なぜ僕とデートをしようと思ったのですか?」
「人助けです」
「え?」
「宇尾島さんはモテる要素がいくつか感じられますけど、二ノ宮さんには残念ながら、今の時点ではありません。なので、レンタル彼女にも見捨てられたら可哀想だと思ったので、今回は二ノ宮様の依頼を引き受けることにしました。レンタル彼女を雇う人はモテない人が多いです。なので、私はモテない人たちに手を伸ばしたくなるのです」
「あ、そ、そうですか……」
僕はモテない男の代表なのかもしれない。彩子さんに人助けと言われ、情けをかけられたということになる。それがなんだか切なくなってくる。でも、そんな僕に手を伸ばしてくれる彩子さんは偉大だ。こんな僕を拾ってくれるだけで救われた気がした。
「では、僕と本気で付き合うことは一生ないのでしょうか?」
「一生という言い方をしますと、言い切れませんね。私の気が変わるかもしれないですし、可能性としては、ミジンコくらいはあるかもしれません。ま、ないと考えていいでしょう」
「なら、僕はそのミジンコくらいの可能性にかけてみたいと思います。彩子さんと繋がりがある限り!」
「ふふ、あなたもとんだ一途さんですね。私は向き合ってくるものは全力で受け止めますよ――レンタル彼女として」
彩子さんは最後の『レンタル彼女』という言葉を尊重させて言った。
「彩子さん、では、新たな一歩として夢の国に行きましょう」
僕は彩子さんに手を差し出した。
「ただのユニバーサルじゃないですか。でも、そうゆう言い方は嫌いではありませんよ。少しだけ女心がわかってきましたね」
彩子さんは笑いながら言った。自然と僕も笑みがこぼれる。
僕が初めて好きになった人、彩子さん。彩子さんは彼女であるが、彼女ではない。届きそうで届かない関係性。時間が経てば消える関係だが、また呼んだら再び一緒の時間がくる。今の関係に満足とは言えないけど、今はその関係が僕の生きがいである。彼女の笑顔が僕の幸せ。ずっと、ずっと傍にいたい。
彩子さんがストップウォッチを押した瞬間、その時間は訪れる。幸せの時間の幕開け。
僕は彩子さんの手を引いてテーマパークの地へ二人で踏み込む。
「そういえば、彩子さんの本名ってなんですか? もしかして彩子っていうのは偽名とか……」
「いいえ。本名です。私の名前は恋隠(こいかくし)彩子(あやこ)です」
「こいかくし……彩子さんらしい名前ですね」
「そうですかね。私はあまり好きではありませんが。なので、これからも私のことは彩子でお願いします」
「あの、彩子って呼び捨てで呼んでも構いませんか?」
「ずっと思っていましたけど、普通に彩子って呼んでくれて構いませんよ? 年上なんだし……それに敬語じゃなくても全然構いませんよ。堅苦しいですし堂々と言えばいいんですよ」
「え? そうなんですか? つい、目上の人に感じてしまって」
「平等ですよ、私達の関係は」
「そうですか……じゃ、これから呼び捨て、タメ口で言わせてもらいますね」
僕は勇気を振り絞って名前を呼んだ。
進展と言えば、呼び捨てとタメ口になったことくらい。でも、今はそれで構わない。だって、今が楽しければそれでいい。僕はこの一秒、一秒の瞬間がとても輝いている。僕の生きがい。目の前に待ち合わせをしている彼女が僕を見つけて、手を振って走ってきた。
僕も彼女と同じく手を振った。僕の幸せとは、このことを言うのだろう。本当の恋人になれるかどうかはまだ、先の話。僕は彼女の名前を呼んだ。
「彩子!」
「りっくん、お待たせ」
彼女は彼女であって彼女じゃない。
だって彼女はレンタル彼女なのだから――
完
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