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第2章 嫌われた英雄
第61話 パーティ結成
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「え、俺?」
と、唐突にかけられたトワの言葉に俺は頓狂な声を出してしまう。
するとすぐにスイがフォローをしてくれた。
「パーティリーダーとして聖杯に扱われるのはレベルが一番高い人です。だから貴方が承認してくれないとパーティが組めません」
「そんなこと言われても……承認ってどうやるんだ?」
ゲームではスイが話したような縛りは存在していない。
パーティに誘いたいキャラクターを右クリックすればパーティに誘えたし、誘われたら承認するか否かのウィンドウが現れるのでYESを押せばパーティを組めた。
しかし、そんなウィンドウが表示される気配は毛頭ない。
「普通に承認って思えばいいだけっすよ。ウチらとパーティ組みたいって考えてくれれば」
「そうなのか……?」
抽象的なアドバイスでよく分からなかったが、とりあえずその通りに念じてみる。
すると、絆の聖杯が一瞬だけ強く赤色に輝いた。
「お、発動したっすね」
その輝きがおさまると中に入れられた血が消えていた。
これでパーティが結成できたのだろうか。やはりウィンドウ等が現れず確認ができないため実感がわかない。
「うん。これでボク達はパーティだね。じゃあ、これはしまっとくねー。なんか邪魔っぽいしさ」
そう言うとトワは絆の聖杯に触れる。
すると──
「消えた……?」
絆の聖杯がフェードアウトするように消えていく。
それに驚いたのは俺だけじゃなかったようだ。
スイとアイネもきょとんとした顔で絶句している。
「転移魔法っていうか、空間魔法の一種だよ。色々なアイテムや装備を収納できるんだ。アイテムポーチって魔法なんだけどきいたことがない?」
「いえ、初耳です……」
「ウチもないっすねー」
当然、俺もそんな魔法は聞いたことがなかった。というか、アイテムポーチは『魔法』ではなくゲーム上の『仕様』だった。
つまりプレイヤーキャラクターが全員、当たり前のように使えるものだったのだ。
ふと、俺はアイネやトーラにいた冒険者達が、ギルドに帰ってきてから傷を治していたことを思い出す。
そもそも、アイネが傷だらけで帰ってきた時にどことなく違和感があったのだ。
何故、薬草で治せる程度の傷をギルドに帰ってきてから治していたのか。それならば薬草を持っていけばよかっただけではないのか。
その答えは物凄く単純で、ただ持ちきれなかったからなのだろう。
ゲームでは狩りに行くとき、回復薬は百個以上持っていくのが当然だった。
しかしこの世界ではそれができない。そんな数の回復薬など携帯できる訳がない。
ゲームでのNPCや、この世界の住民のレベルが低めなのはこの点も起因しているのか。
……いや、むしろこっちの方が決定的な原因になっている可能性が高い。回復薬を搭載できず、装備の持ち替えもできないのであれば狩りの効率は激減する。
「ま、それでもいいや。ボクは戦闘では役に立てないかもしれないけど、こういうので荷物とか持てるからサポートはまかせてねっ」
ふと、トワの言葉で思考が断ち切られる。
「というわけで改めてこれからよろしくっ。今度からは隠れないでキミとずっと一緒にいるからさっ」
そう言いながらトワが俺の肩に降りてきた。
急に至近距離に近づかれたことで照れ臭くなり、俺は反射的に目をそらしてしまう。
「むっ、ずっとってのは聞き捨てならないっす」
そんな俺達の態度が気に入らなかったらしくアイネが不機嫌そうに口を挟んできた。
好意を寄せてくれている女の子の前で軽率だったかもしれない。少し反省してしまう。
「アハハ、じゃあボクもアイネちゃんにとってのスイちゃんみたいに信頼されるように頑張るねっ」
「うえぇ!? じゃあもしかしてトワちゃんも……」
「どーだろー?」
まぁ、これはどう考えても冗談だろう。
俺の肩で座りながらトワがニヤニヤと笑っている。
──ていうか、トワはどこまで俺の事を見ていたんだ?
今の言いぐさだとアイネが何て言ったかまで知っているようだが……
「はぁ、なんだか一気に賑やかになりましたね……」
反対側から聞こえてくるスイの声。
振り返ると呆れ半分と言った感じでスイが笑顔を浮かべていた。
「そうだな。なんか楽しそうだけど」
トワはいまだにアイネの軽くからかいながらカラカラと笑っている。
二人は初対面のはずなのだが随分、気を緩めた態度をしている。
もしかしたら馬が合うのかもしれない。
「私も、楽しいですよ」
と、スイが穏やかな声色でそう言った。
「アイネはともかく、まさか貴方とパーティを組むなんて思ってなかったですから。形式的なパーティじゃなくて、一緒に旅をする仲間がちょっとほしかったんですよね」
「旅、か……」
少し照れくさそうに頬を染めながら、スイはにっこりと笑う。
──たしかに、一人旅だとこういう道中がすごく退屈だろうなぁ。
そんな事を考えながらスイの顔を見つめていると──
「あ。でも、私の前であんまりアイネといちゃつかないでくださいよ? ほんと恥ずかしいので」
急にスイはジト目になりながら俺のことを見つめてきた。
「き、気を付けます……」
と、唐突にかけられたトワの言葉に俺は頓狂な声を出してしまう。
するとすぐにスイがフォローをしてくれた。
「パーティリーダーとして聖杯に扱われるのはレベルが一番高い人です。だから貴方が承認してくれないとパーティが組めません」
「そんなこと言われても……承認ってどうやるんだ?」
ゲームではスイが話したような縛りは存在していない。
パーティに誘いたいキャラクターを右クリックすればパーティに誘えたし、誘われたら承認するか否かのウィンドウが現れるのでYESを押せばパーティを組めた。
しかし、そんなウィンドウが表示される気配は毛頭ない。
「普通に承認って思えばいいだけっすよ。ウチらとパーティ組みたいって考えてくれれば」
「そうなのか……?」
抽象的なアドバイスでよく分からなかったが、とりあえずその通りに念じてみる。
すると、絆の聖杯が一瞬だけ強く赤色に輝いた。
「お、発動したっすね」
その輝きがおさまると中に入れられた血が消えていた。
これでパーティが結成できたのだろうか。やはりウィンドウ等が現れず確認ができないため実感がわかない。
「うん。これでボク達はパーティだね。じゃあ、これはしまっとくねー。なんか邪魔っぽいしさ」
そう言うとトワは絆の聖杯に触れる。
すると──
「消えた……?」
絆の聖杯がフェードアウトするように消えていく。
それに驚いたのは俺だけじゃなかったようだ。
スイとアイネもきょとんとした顔で絶句している。
「転移魔法っていうか、空間魔法の一種だよ。色々なアイテムや装備を収納できるんだ。アイテムポーチって魔法なんだけどきいたことがない?」
「いえ、初耳です……」
「ウチもないっすねー」
当然、俺もそんな魔法は聞いたことがなかった。というか、アイテムポーチは『魔法』ではなくゲーム上の『仕様』だった。
つまりプレイヤーキャラクターが全員、当たり前のように使えるものだったのだ。
ふと、俺はアイネやトーラにいた冒険者達が、ギルドに帰ってきてから傷を治していたことを思い出す。
そもそも、アイネが傷だらけで帰ってきた時にどことなく違和感があったのだ。
何故、薬草で治せる程度の傷をギルドに帰ってきてから治していたのか。それならば薬草を持っていけばよかっただけではないのか。
その答えは物凄く単純で、ただ持ちきれなかったからなのだろう。
ゲームでは狩りに行くとき、回復薬は百個以上持っていくのが当然だった。
しかしこの世界ではそれができない。そんな数の回復薬など携帯できる訳がない。
ゲームでのNPCや、この世界の住民のレベルが低めなのはこの点も起因しているのか。
……いや、むしろこっちの方が決定的な原因になっている可能性が高い。回復薬を搭載できず、装備の持ち替えもできないのであれば狩りの効率は激減する。
「ま、それでもいいや。ボクは戦闘では役に立てないかもしれないけど、こういうので荷物とか持てるからサポートはまかせてねっ」
ふと、トワの言葉で思考が断ち切られる。
「というわけで改めてこれからよろしくっ。今度からは隠れないでキミとずっと一緒にいるからさっ」
そう言いながらトワが俺の肩に降りてきた。
急に至近距離に近づかれたことで照れ臭くなり、俺は反射的に目をそらしてしまう。
「むっ、ずっとってのは聞き捨てならないっす」
そんな俺達の態度が気に入らなかったらしくアイネが不機嫌そうに口を挟んできた。
好意を寄せてくれている女の子の前で軽率だったかもしれない。少し反省してしまう。
「アハハ、じゃあボクもアイネちゃんにとってのスイちゃんみたいに信頼されるように頑張るねっ」
「うえぇ!? じゃあもしかしてトワちゃんも……」
「どーだろー?」
まぁ、これはどう考えても冗談だろう。
俺の肩で座りながらトワがニヤニヤと笑っている。
──ていうか、トワはどこまで俺の事を見ていたんだ?
今の言いぐさだとアイネが何て言ったかまで知っているようだが……
「はぁ、なんだか一気に賑やかになりましたね……」
反対側から聞こえてくるスイの声。
振り返ると呆れ半分と言った感じでスイが笑顔を浮かべていた。
「そうだな。なんか楽しそうだけど」
トワはいまだにアイネの軽くからかいながらカラカラと笑っている。
二人は初対面のはずなのだが随分、気を緩めた態度をしている。
もしかしたら馬が合うのかもしれない。
「私も、楽しいですよ」
と、スイが穏やかな声色でそう言った。
「アイネはともかく、まさか貴方とパーティを組むなんて思ってなかったですから。形式的なパーティじゃなくて、一緒に旅をする仲間がちょっとほしかったんですよね」
「旅、か……」
少し照れくさそうに頬を染めながら、スイはにっこりと笑う。
──たしかに、一人旅だとこういう道中がすごく退屈だろうなぁ。
そんな事を考えながらスイの顔を見つめていると──
「あ。でも、私の前であんまりアイネといちゃつかないでくださいよ? ほんと恥ずかしいので」
急にスイはジト目になりながら俺のことを見つめてきた。
「き、気を付けます……」
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