あの夏の嘘つき

suezu

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第11章 痛み

触れる3

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「…そろそろ挿れさせて。これ以上待てなくて」
 涼がゆっくりと指を抜き、カラダを離し、ベッドの上に膝を立てた。
「俺は?俺は何をすればいい?」
 いきなり身体が離れ、自由になると心もとなくなる。
涼が挿入する前の準備、ゴムをつけているのだとはわかった。
「今、カッコ悪いところだから、千尋さんはリラックスして待ってて」
「この状況でリラックスは無理すぎ」
「じゃ。俺のことを考えて待ってて」

 そのままベッドにあおむけになると、さっきまで触られていた場所にマークがついているかのように、モゾっと小さく筋肉が動いた。
「出来るだけ、そおっと挿れていくので、痛かったらすぐに言っ。」
「…うん」
 最初はギシっと滑らないところに、もう一度、丁寧にローションを塗り、それからはゆっくりと、でも少し力で押し込むように分け入って、涼が入ってくる。
さすがに指が入っているよりも、強く引っ張られるように、圧がかかっていく。
「…ううっ」
 もれてしまった声に、あわてて涼が腰を引いた。
「痛いよね」
「大丈夫」
そういっても心配そうな顔で涼が覗き込み、千尋の息づかいに耳を傾ける。千尋の体調を気にしているのだろう。
「本当に大丈夫だから」
 もう少し足を開いて千尋が自分から腰を上げる。
「ありがとう。もうちょっとだから」

 1ミクロンも隙間もないくらいに窮屈で、自分の後ろがミシミシと広がっていくのがわかる。切ったりぶつけたりという鋭角の痛みではなくてシンシンと広がってくるきつさは、どんな感覚とも似ていないもので、自分で少しも動ける余裕もない。
 自分の上で体重をかけないようにしながら、少しずつ動こうとしている涼の顔が泣き出しそうなほど必死だ。
今までみたことがない角度から涼の顔を見上げていると、ポトリと涼の汗が千尋の下腹に落ちる。
次の瞬間、引き戻される襞が突き上げられるように、隠していたボタンが押されたように、チリチリとした感覚が下腹に走る。
「うわ。あ…」
 大きな声が出てしまった。ツーっとローションがもっと奥の方へと流れていくのがわかる。こすられた襞は次の刺激を期待して、収縮しようとする。
「千尋さん、千尋さん」
ただ、名前を呼ばれているだけなのに、涼が動き動くたびに、違和感がするすると快感へと変わる。その快感は自分の性器へもつながっていき、いつのまにか足元をネバつかせていた。

「こっちも触らせて」
涼が千尋の陰茎を右手で握って軽く上下する。
「やばいって、ああ。まじでやばいって。ああ…」
数回の刺激で、涼の手の中で簡単に果ててしまう。
上がる息のままで、万歳するように手を伸ばし、うろ覚えで伸ばすとティッシュの箱が手にぶつかった。そのまま一枚引き出し、涼に手渡すと、涼がびっくりした顔で余裕なく笑う。
さらにちょんと腰を動かされると、前とは違う感覚が波のようにざわざわと襲ってくる。
「どうしたらいい?あっ、ああっ。」
逃がすことのできない熱が身体の中心から沸いてでてくる。

「痛い?」
「うわっ。釣り糸で引き上げられる魚みたいになりそう…」
ピチンピチンとカラダがのけぞるように、熱いものが沸いてくる。
「俺はね、あっ、俺はね。千尋さん…」
苦しいように眉をしかめ、泣きそうな顔で涼が少し首をふる。大きな息はため息のように聞こえる。今日の涼は泣きだしそうな顔が多い。
「俺は、このまま千尋さんの中に溶けて消えたい。」
「…なに、その…あっ」
 言葉をつづけようとした瞬間に、後ろの襞の合間から線のように連なる快感が声をとどめた。そして、その声を吸い上げるように、涼が覆いかぶさるようにキスをした。
ゆっくりでも止まらない涼の動きに合わせて「うっ」と声が漏れる。
涼がスムーズに動けるくらい後ろはほどけ、動くたびに擦れるその場所は、強烈な呻きをもたらす快感をつれてくる。
「あっ、あっ、うわっ涼、涼…」
快感の言葉を口にするのは恥ずかしすぎる。だからそれが伝わるようにとせめて何度も名前を呼ぶ。
「…苦しいですか?」
「違う、違うって。涼。涼。苦しんじゃなくて…」
「千尋さん、ありがとう。ありがとう。」
涼が大きくぶつけるように腰を動かすと、千尋の中で大きくピクンと涼がはじけるのを感じた。

 一度、すべての手順を踏んでしまうと、恥ずかしさもためらいも薄れ、千尋のほうから涼の腰を引き寄せてねだるように密着させた。
びっくりしたように、涼が笑いながらも、手のひらを千尋のそっと首筋にあてる。千尋の息づかいと心拍数を確認しているのだろう。
覚えたばかりの快楽は、どう熱を払っていいのかわからずに千尋の身体中にうごめいている。
涼がしてくれたように、千尋も涼のカラダに唇を落とすと、壊れそうなものを扱うみたいにゆっくりと涼を抱きしめた。
「ずっと千尋さんと一緒にいたい」
「うん。一緒にいよう」

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