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第1話 ガチャアプリでスキルが引けるらしい
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「すっかり真っ暗だなぁ……はぁ、疲れた……」
月光と街灯のみが路上を照らす、真夜中の道路。
残業で疲れきった俺は、身体に鞭を打ちながら帰路についていた。ポケットからガムを取り出して口に放り込むと、ミントのすーっとした感覚が鼻から抜けた。流石ハードミント味、かなり強い。
まぁ、すーっとしても、眠いもんは眠いんだけどな。瞼もすごく重いし。
帰ったら風呂に入って直ぐに寝るか……。明日が休みだから良かったものの、この時間まで働かせるってどんなブラック企業だよ。
視界が霞んできたから目を擦って、そんなことを考える。
が――それがいけなかった。
注意が散漫して”それ”に気付くのが遅れてしまったのだ。
”それ”は、サッカーボール程度の大きさの何かだった。猫にも見えたけど、背中に羽虫みたいな羽が生えているような気もした。
車のライトで照らされた路上の先。距離は二メートルもない。
俺は、地面に止まっていた”それ”を……
ガンッ!
引いてしまった。
「やべっ!?」
俺は急いで車を止めて、先程の場所へ駆けて戻る。
だが、そこには――
「あれ、気のせい……だったのか?」
何もなかったのだ。死体も血痕も、何もかもが。
周囲を見渡してみたけど、やっぱり何もない。衝撃は確かに感じた気がするけど……まぁ、何事もなかったのならそれでいいか。
俺は車へ戻って、再び帰路につく。
さっきまでとは違って、目は妙に冷めていた。
―――――――――――――
「ふぁぁ……帰ってきたぁ……」
荷物を適当に投げて、俺はベットに倒れ込む。
ふかふかして気持ちが良い。風呂に入らなきゃいけないけど、このまま寝ちゃいそうだ。
「ダメだ、風呂には入らないと。汗も掻いたし……」
睡魔の手招きから意識を引きはがして身体を起こすと、上着とズボンを脱いでパンツとシャツになる。
ただ、もう少しだけ何もしたくない気分だ。動画でも見ようか。そう思ってスマホを取り出して気が付いた。
「んぅ? 何だこれ」
画面一杯に表示された見知らぬ画面。
そこには『ファーストキルボーナス。初回十連無料。SSR以上一つ確定』のソシャゲのガチャ画面みたいな言葉が並んでいた。
怪しい、怪しすぎるだろこれ。ウィルスにでもやられたのか?
スマホに搭載されたウィルススキャンを掛けようとタブを閉じようとするが、まったく動かない。電源を落としてもダメだった。
「おいおい、まじかよ……機種変までまだ期間あるってのに」
勘弁してくれ……、なんて思いながら仕方なく画面に目を通す。
「『スキルガチャ。開催期間、残り二日』、ねぇ。どうすっかなこれ」
何をしてもうんともすんとも言わないから、どうせなら引いてみるか? 無料って書いてあるし。引いたら元の画面に戻る可能性も……いや、あるのか? まぁ、やってみるか。
【十連ガチャ】と書かれたボタンを押してみる。
・N【身体強化Lv,1】・N【身体強化Lv,1】
・N【身体強化Lv,1】・N【身体強化Lv,1】
・N【剣術Lv,1】・N【MPup】・N【HPup】
・R【物理耐性Lv,1】
・SR【炎魔法Lv,1】・SSR【早熟】
MMORPGみたいだな。SSRが確定で、運良くSRが一つ。あとはNとRか。無難な結果だな。最近ろくにゲームなんて出来てなかったから気晴らしにはなったかもしれない。
――と、ふと俺は思いついてしまった。
まぁ、無いとは思うが一応やってみるか? 俺の部屋だから誰も居ないし。
……ちょっと恥ずかしいけど。
人差し指を立てて、久々の感覚に子供心を擽られた俺は口に出す。
「出てこい炎! なんて……なぁぁ!?」
ぼうっ、と現れた炎。
それはマッチみたいに小さいけど、確かに本物だった。
「まじかよ……魔法、だよな。夢じゃないよな」
頬を抓ってみたけどしっかりと痛い。
これは紛れもなく現実だ! やばい、急にワクワクしてきた。
眠気が一気に吹っ飛んで、再び画面に視線を戻す。
【身体強化Lv,1】×4を合成。【身体強化Lv,2】にレベルアップ。
堂守広戸《どうもりひろと》Lv,1 HP:15→20 MP:10→15
これは多分、今現在の俺のステータス。up系のスキルでHPとMPが上がったんだろう。
やばい、楽しい。ガチャにハマる人達ってこんな感覚なんだろうか? とてもじゃないけど、興奮して眠れない。だって、魔法だぜ? ステータスだぜ? ワクワクしない方がおかしい。
だめだ、もう一回引きたい。
【一連 一回三万】【十連 一回三十万円(R以上一枚確定)】
「たっか!? いやでも、引けない額じゃない。ちょうど、手持ちに三万とちょっとあるし……」
公共料金の支払いのために財布にお金を入れておいて良かった。
だけど、一回三万ってどうやって消費するんだ? 電子マネーを買ってくればいいんだろうか。それに、R以上しか確定してないのが少し気になる。
とりあえず、財布からお金を取り出そう。
「は? お札が消えたぞ」
手から一瞬で消えてしまった。もしやと思い、俺は画面を見る。
『・N【HPup】を獲得しました』
その一言だけが、画面に表示されていた
―――――――――
小説家になろう様で先行公開の予定です。
この少し下に小説家になろう様へ飛べるリンクを張っていますので、もしよろしければそちらの方でも方円よろしくお願いいたします。
アプリで読んでいてリンクが見れない方は、私の作者ページからなろうに飛べる外部ページをクリックしていただけると!
月光と街灯のみが路上を照らす、真夜中の道路。
残業で疲れきった俺は、身体に鞭を打ちながら帰路についていた。ポケットからガムを取り出して口に放り込むと、ミントのすーっとした感覚が鼻から抜けた。流石ハードミント味、かなり強い。
まぁ、すーっとしても、眠いもんは眠いんだけどな。瞼もすごく重いし。
帰ったら風呂に入って直ぐに寝るか……。明日が休みだから良かったものの、この時間まで働かせるってどんなブラック企業だよ。
視界が霞んできたから目を擦って、そんなことを考える。
が――それがいけなかった。
注意が散漫して”それ”に気付くのが遅れてしまったのだ。
”それ”は、サッカーボール程度の大きさの何かだった。猫にも見えたけど、背中に羽虫みたいな羽が生えているような気もした。
車のライトで照らされた路上の先。距離は二メートルもない。
俺は、地面に止まっていた”それ”を……
ガンッ!
引いてしまった。
「やべっ!?」
俺は急いで車を止めて、先程の場所へ駆けて戻る。
だが、そこには――
「あれ、気のせい……だったのか?」
何もなかったのだ。死体も血痕も、何もかもが。
周囲を見渡してみたけど、やっぱり何もない。衝撃は確かに感じた気がするけど……まぁ、何事もなかったのならそれでいいか。
俺は車へ戻って、再び帰路につく。
さっきまでとは違って、目は妙に冷めていた。
―――――――――――――
「ふぁぁ……帰ってきたぁ……」
荷物を適当に投げて、俺はベットに倒れ込む。
ふかふかして気持ちが良い。風呂に入らなきゃいけないけど、このまま寝ちゃいそうだ。
「ダメだ、風呂には入らないと。汗も掻いたし……」
睡魔の手招きから意識を引きはがして身体を起こすと、上着とズボンを脱いでパンツとシャツになる。
ただ、もう少しだけ何もしたくない気分だ。動画でも見ようか。そう思ってスマホを取り出して気が付いた。
「んぅ? 何だこれ」
画面一杯に表示された見知らぬ画面。
そこには『ファーストキルボーナス。初回十連無料。SSR以上一つ確定』のソシャゲのガチャ画面みたいな言葉が並んでいた。
怪しい、怪しすぎるだろこれ。ウィルスにでもやられたのか?
スマホに搭載されたウィルススキャンを掛けようとタブを閉じようとするが、まったく動かない。電源を落としてもダメだった。
「おいおい、まじかよ……機種変までまだ期間あるってのに」
勘弁してくれ……、なんて思いながら仕方なく画面に目を通す。
「『スキルガチャ。開催期間、残り二日』、ねぇ。どうすっかなこれ」
何をしてもうんともすんとも言わないから、どうせなら引いてみるか? 無料って書いてあるし。引いたら元の画面に戻る可能性も……いや、あるのか? まぁ、やってみるか。
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・N【身体強化Lv,1】・N【身体強化Lv,1】
・N【身体強化Lv,1】・N【身体強化Lv,1】
・N【剣術Lv,1】・N【MPup】・N【HPup】
・R【物理耐性Lv,1】
・SR【炎魔法Lv,1】・SSR【早熟】
MMORPGみたいだな。SSRが確定で、運良くSRが一つ。あとはNとRか。無難な結果だな。最近ろくにゲームなんて出来てなかったから気晴らしにはなったかもしれない。
――と、ふと俺は思いついてしまった。
まぁ、無いとは思うが一応やってみるか? 俺の部屋だから誰も居ないし。
……ちょっと恥ずかしいけど。
人差し指を立てて、久々の感覚に子供心を擽られた俺は口に出す。
「出てこい炎! なんて……なぁぁ!?」
ぼうっ、と現れた炎。
それはマッチみたいに小さいけど、確かに本物だった。
「まじかよ……魔法、だよな。夢じゃないよな」
頬を抓ってみたけどしっかりと痛い。
これは紛れもなく現実だ! やばい、急にワクワクしてきた。
眠気が一気に吹っ飛んで、再び画面に視線を戻す。
【身体強化Lv,1】×4を合成。【身体強化Lv,2】にレベルアップ。
堂守広戸《どうもりひろと》Lv,1 HP:15→20 MP:10→15
これは多分、今現在の俺のステータス。up系のスキルでHPとMPが上がったんだろう。
やばい、楽しい。ガチャにハマる人達ってこんな感覚なんだろうか? とてもじゃないけど、興奮して眠れない。だって、魔法だぜ? ステータスだぜ? ワクワクしない方がおかしい。
だめだ、もう一回引きたい。
【一連 一回三万】【十連 一回三十万円(R以上一枚確定)】
「たっか!? いやでも、引けない額じゃない。ちょうど、手持ちに三万とちょっとあるし……」
公共料金の支払いのために財布にお金を入れておいて良かった。
だけど、一回三万ってどうやって消費するんだ? 電子マネーを買ってくればいいんだろうか。それに、R以上しか確定してないのが少し気になる。
とりあえず、財布からお金を取り出そう。
「は? お札が消えたぞ」
手から一瞬で消えてしまった。もしやと思い、俺は画面を見る。
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