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女の子にぺろぺろされる

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「……何もないじゃない」

「……あれ……ほんとうだ……」

「さてはミキ。お姉ちゃんを騙したな」

「えーっ! そんなことしないよぉ~」

「うそうそ。ちょっとからかっただけだよん」

 ノブナガは、木にぴったり付いている。
 咄嗟に木のコブのような形状に身体を変化させたのだ。

 疑問は残る。
 柄を2cmしか小さくできなかったはずなのに、
 変形コマンドをポチッとし、イメージだけで見事にコブに化けれた事に、ノブナガ自身が驚いている。

 心を落ち着かせ、改めて確認コマンドでステータス表を広げてみると、レベル2にアップしてた。
 レベルが上がったことにより、変形がよりできるようになったのだろう。
 何はともあれ、ギリギリセーフでよかったよかった。 
 
「あれ、ねえねえ、お姉ちゃんお姉ちゃん。これ猿の腰掛けかなぁ?」

「違うんじゃない。
 傘を開く前のに似ているけど……、なんだろうね」
 
 コブだろう、普通コブに見えないかぁ?? 
 イメージだけでコブになったが、違ってたかな。

 女の子が指先でつんつんしてくる。
 指先でポリポリしてくる。
 
「お姉ちゃんお姉ちゃん。見て、踏ん張ってるよ、生き物みたい」

「本当だ」

 咄嗟に8本の足先をカギ状に変形させたのがまずかった。
 掴んで強く引っ張られる。
 強引に剥がそうとしている。

 抵抗はしたものの、しょせんは根っこ。
 ベリッと幹から剥がれてしまったノブナガは、《変形》を解き、女の子の手から逃れようともがいた。

「じたばたしているよー。おちんちんになっていく」

「へー珍しい生き物だねー。でもいー香りがするー」

「これだよこれ。さっきのはこれだったよ。ねーミキにもミキにもっ!」

 終わった。
 終わってしまった。

 ノブナガは二人の可愛らしい女の子に顔を近づけられ、くんくんされたり、触られたり、おちんちんだねコイツ、などと前世だったら絶対に聞けないような言葉を浴びせられた。

「うーん。いー香り。ミキ大好き。
 ねえねえお姉ちゃんお姉ちゃん。
 これミキにちょうだい! いいでしょう。ねえねえ」

「うーん。そうだなあ……。
 こんな変わったもの見たこともないし、食べられるかどうかも分からないし、で、ミキ、それをどうするつもり?」

「お家で飼いたいんだけど……」

 小さな女の子がもじもじして、傘になる部分を、指でくりくりもてあそんでいる。
 変な感じがして、傘がびくびく痙攣してしまう。

「そっかー。いい香りがするもんねー」

「うん……動くし……」

「あっ! 舐めたらダメだよミキ。
 キノコ種だろうけど、毒があるかもしれない」

「そっかー、ぺろぺろしちゃったー」

「分かる分かる。その気持ち。ミキも女の子なんだねえ。
 とにかく家に帰って図鑑で調べてみようか」

「やったーっ!」

「毒が無いなら、お姉ちゃんにも貸してね」

「うん。いいけど。大切に遊んでね」

 ノブナガは竹カゴでなく、女の子の胸のポケットに大事に収められた。


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