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人間は奴隷

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 夕方。
 仏壇の部屋。
 隙間風がそよそよ入っている。
 囲炉裏いろりを囲んで女の子2人と母親が手を合わせた。

「「「いただきまーす」」」

 欠けたお茶わんもさることながら、麦めしと山菜を鍋で煮込んだだけの質素な食事だ。
 それでも楽しそうに会話をして微笑ましい。

 突然乱暴に戸が開いた。
 3人はびくんと身体を震わせる。
 驚いたことに入ってきたのだ、ブタ人間が。 

「い、いらっしゃいませ……」
 
 母親は箸をおき、おどおどブタ人間に近寄る。
 食料が入った竹カゴを渡すと、ブタ人間の平べったい鼻が醜く歪んだ。

「これだけ?」

「すいません。雨が多くて、採れませんでした……」

「雨だろうが、獲れと言ったら獲れっ!」

 バシッ! とブタ人間が母親の頬を叩いた。

「も、申し訳ありません……」

 口端から出た赤い血が頬を伝う。

「奴隷ごときが、雨だから外にでない? 笑わせるなっ!」

 奴隷ごとき。
 ノブナガは、妹ミキの胸ポケットから様子を伺っていた。
 女の子2人は囁く。
『くそっ! よくも母さんをっ!』(ぶつぶつ)
『徴収日、最悪……』(ぶつぶつ)

「まあ、よし……。今日は、楽しむつもりで来たんだから」

 ブタ人間はニタニタしながら畳にあがった。

『楽しむ……』

 ミキの鼓動が早くなる。

「お、お姉ちゃん……」

 固唾を飲んだミキが震えながら手を伸ばすと、姉もガタガタ震えていた。 
 寄り添う女の子の真ん中に、ブタは臭い身体をねじ込んであぐら座りをする。
 両腕に幼い姉妹を抱き、

「寂しかったかぁ? ぶひぶひっ!」

 黄色いヨダレを垂らしながら、姉のもんぺの中に手を入れてまさぐり、顔をべろべろと舐めた。
 姉は抵抗しない。できない。
 引き攣った顔で、ブタに汚されるのを耐えるだけ。
 母親は顔を背けて俯いているだけだ。 
 
 幼い子供への性的虐待。
 人間はブタの奴隷であり、玩具でしかないという現実に、ノブナガはやるせない怒りがメラメラと込み上げてきた。
 その時だった。
 
「おっ! ケンジンノコじゃねーか!」

 妹のポケットに収まっていたノブナガを、ブタ人間が鷲掴みにする。

「あっ、ダメ……っ!」

「うるせぇ!」

 取り返そうとしたミキだったが、バシッと勢いよくはたかれた。
 
「……」

 キノコの10倍はあるだろうデカイ豚顔が近づく。
 珍しそうに見つめられた。

「間違いない。
 薬用ケンジンノコだ。高値で売れるぞ。
 お前たち何処で採った? 1本じゃないだろう」

 ブタ人間に問い詰められ、女の子たちは恐る恐る正直にノブナガとの出来事を話した。

「歩いてただと? 嘘をつくな! 
 ご主人様をバカにしてやがる。よーし、採取場所を吐くまで、地獄の罰を与えよう」

 採取場所を知りたがる――。
 最初の場所。子供たちがいるあの場所だ。
 
 女の子は、「違います、本当です!」と泣きながら力説するが理解してもらえない。
 2人とも裸にされ後ろ手に縛られ、ノブナガはブタ人間の腰の袋に収められた。

 女の子たちを助けたい。
 キノコ神の命を受けたからじゃない。
 本心でノブナガは、そう決意した。
 
 まずは、根を細長く変形させて袋から出し全方位確認。
 ブタ人間の腰ホルダーに狩猟ナイフを見つけた。
 ナイフの柄にGOZONGOと記されている。

 どうする。
 根でナイフを抜き取れても、刺す力はない。
 根が折れるか切れてしまうだろう。
 ブタ人間は女の子たちを四つん這いにさせ、自分の股間から出した臭い棒を舐めるように言った。

「へっへっへっ、綺麗にしろよ。
 歯を立ててみろ、命はないからな」
 
 姉が言われるがままにする。するしかないのだ。
 ブタは、躊躇していたミキの頭髪を掴んで股間に引き寄せる。
 長い異肉の先端を、ミキの右頬に押し当てながら。

「おらおら、死にたくないだろ? お前も口で奉仕するんだ!!」

 やりたい放題だ。

「よし、今度は俺様にまたがるんだ。合体させてやる。
 人間風情が豚間とんげんの俺様と合体だぞ、光栄に思うんだな」


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