一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆続広島弁の男

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「ままま、まさか……。
 こいつがトモコ様の仰っていた……彼氏ですか?」

 僕の家の玄関先。
 どう見てもヤクザもんのような風体の男三人が、上がり框で立っているパジャマ姿の僕と綾部さんをマジマジと見ていた。
 僕はドブ川に入って雨に打たれたせいで風邪を引いてしまった。
 ふらふらの身体を綾部さんが身体で支えているお陰で、辛うじて立っている事が出来ているが、どうも綾部さんと密着した状態がヤクザもんには気に入らないようだ。

「そうよ。私の彼氏よ」

「マジみたいだぞ」
「しかしすげえ顔だ」
「どうする」
「報告するしかねえ」

 などとヤクザもん三名がぶつぶつ語っている。
 僕はまだ彼氏を正式に受けたわけじゃない。
 僕の了解を得ずに勝手に彼氏などと言ってもらっても困るのだ。

「あの…………」

「ちょっと黙っててっ!」

「はい……」

 怖くて何も言えない。

「なにか文句あるの?」

 綾部さんはヤクザっぽい大人三人に向かって躊躇う事もなくキッパリと言い切る。

「いえ別に。ただ本当だったんですねと……」

「納得したのなら、さっさと帰ってくれないかしら」

 返事は無い。
 真ん中に立つリーダーぽい男を中心に、にざわざわと意見交換する両サイドの男二人。

 ――怪しい。怪しい。
 どう見ても怪しすぎるこの三人。
 綾部さんの知り合い?
 召使い? ボディーガード? 
 まさか本当に綾部さんの親がヤクザ稼業を営んでいて、この三人がその配下の面々? 

「不満があるみたいねえ」

「いえいえいえいえ」
 
 女子高生にひと睨みされて、胸元で両手をふるふるさせている男三人。
 えらく可笑しい。

「私の趣味は好みは、こんなのなの。
 分かった? 分かったらパパにそう言いなさい」

 こんなのって……。
 まあ確かに僕はこんな怖顔ですよハイ。
 本当に僕の事が好きなのか綾部さんって……。
  
「さあ。これでもう用は無いでしょ。
 終わったんだから、さっさと帰って。彼氏のお家に迷惑だから」

「分かりました。
 じゃ、トモコ様もご一緒に」

「それは結構よ。私は残るから」

「ええっ!」

 ざわつく男三人。当然僕も驚いている。
 僕の後ろ、廊下の奥のキッチンから「まあ。お客様用のお布団出さなきゃ」と母さんの呟きが聞えた。
 本当にもう……。 

「それはダメです。絶対、主様に叱られるでしょう」

 リーダーぽいヤクザが綾部さんに詰め寄るのだが、

「彼氏が風邪なのに、放ってはおけないわ。看病しなくちゃ」

 その彼氏を無理矢理ベッドから起こして下まで歩かせたのは何処のどいつだよ。
 いいから三人と帰れよ。

「それでしたら、看病はあっしがしましょう。
 ……おい。小僧よろしくな!」

 いやいやいやいやいやいや。
 もっと条件悪いじゃん。
 黙ったままだと妙な事になっちまう。よし。
 僕は隣の綾部さんに言った。

「いや、もう大丈夫だから、綾部さんも帰ってくれないか」

 チラリと僕の顔を伺った綾部さんは、少し考えてから「分かったわ」と軽く頷いた。

 あれ。意外と聞きわけがいい。
 何か企んでいるのか?
 
「じゃ。みんなそういう事だから、先に帰っていて、私はもう少しだけ様子を見てから帰るから。
 ……大丈夫。帰ったら連絡するから」

「そうですか。
 では自分は外で待たせてもらいます」

「ちょっと、全員帰ってって言ったのだけど」

 無視してリーダーらしい男が掛け声をすると、残りのふたりは家の前に駐車してあった自動車に乗り込み走り去っていった。

「もし何かあったら、トモコ様をひとりで帰宅させるわけにはゆきません」

「起きるわけないじゃない」

 返事はせず、軽く会釈した男は僕に凄みを利かせた。

「おい小僧! トモコ様に妙なマネをしてみろ、そんときゃ「はいはい! さっさと帰る――っ」

「了解ですって……」
 
 軽い会釈をして何処かへ行ってしまった。
 再び綾部さんの手を借りて二階の自室に戻った僕は、わたわたと『布団を客室に用意したからね』と言いに来た母さんを一階へ突っ返した。
 
「ゆっくり、そう……ありがとう」

 綾部さんが僕をベッドに寝かせてくれる。
 もうフラフラでかなりきつい。
 体温は何度くらいあるのだろうか。
 綾部さんが母さんから熱取りシートを持ってきて僕の額に貼ってくれた。
 なんか優しい。
 そう思ったが口に電子体温計をぶち込まれる。
 38度5分あった。
 綾部さんは又しても母さんから錠剤を貰ったらしく、ベッドから起こされて口に放り込まれ、同時にコップの水を投入される。乱暴だ。

「さっさと寝なさい。手荒な真似はしたくないわ」

「もうしているんだけど」

「うるさいわね」

 綾部さんが部屋の照明を切った。真っ暗になった部屋、寝ている僕を仁王立ちして見下ろす綾部さん。
 整った顔が少し怖いけど少し嬉しい。
 
「監視されていると余計に眠れないんだけど……」

「つべこべ言わずにさっさと寝る」

「うん……。ありがとな」

「いえいえ。彼女として当然でしょ」

「……、……」

「否定しないのね」 

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