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☆変人たち その2
しおりを挟む「……、……」
うーん、どうだ……? 変化ナシだけど。
ポーカーフェイスが発動して分からない。
動揺を隠しているのか(愛里の事だと見境ないが)、それとも、綾部さんへの恋愛感情が無くなったか?
後者なら婚約破棄に同意だけど。
「見ての通り、はっきり返事をしてない」
嘘じゃない。付き合う振りをしているだけ、本心ではない。
「そうか。ゆっくり考えて返事をするのがいい」
「そうだな」
今のところ岩田は、綾部さんが好きな素振りは無い。
愛里がらみでなければ、僕の味方をする岩田だ。
僕に始めて出来た彼女だから、綾部さんを諦めようとしているのか?
岩田が女子と会話しないのは『僕の悪口を言う女子ばかりだから』というのもあるが、ああ見えて性格がナイーブで、女子の免疫が少ない。
だから岩田が珍しく好きになった婚約まで進んだ綾部さんを、僕に譲るマネはさせたくない。
「だけど山柿……綾部はヤメとけ!」
珍しく感情を出した。
やっと正直な気持を見せたか!
自分が綾部さんと付き合うから、親友でも綾部さんは譲れないと言いたいんだな。
そうか、応援するぞ、岩田!
綾部さんは意地悪だけど、根はいいヤツだ。
よく喋る綾部さんと無口な岩田。良いコンビだ。
「あいつは変人だから」
「は?」
今……変人と聞こえた。
「変人……?」
「そう変人」
「……、……」
またも変人……。
二人とも相手を変人呼ばわり。
綾部さんの感情むき出しの言い方に比べると岩田のは大人しいが、でもアンタらどうなってんの?
「意味がわからん。彼女の何処が変人だ?」
「うむ。お前がベラベラ言い触らす人間とは思わないが言えない。
俺はプライバシーを守る主義だ。おっ、予鈴が鳴った。教室に戻ろう」
又それ?
……そこまで重要?
綾部さんと似た返事をしやがって、もーっ!
仕方なく岩田と教室に戻った。
変人でも良いじゃないか。
岩田が綾部さんを変人と思っても好きなら良い。
お互いケンカして罵り合っているわけだ。
しかし相手の悪口も、同じ発想って益々相性ピッタリ。
道場でも口喧嘩してたのか?
『変人でも剣道は強くなるみたいね』
『ほう……構えが変人だと何度やっても勝てない』
『変人が何かほざいているわ』
『負け惜しみも変人らしい』
想像すると超笑えるんだけど。
岩田をアシストしたい。
綾部さんと寄りを戻せるよう全力で。
二時限目が終わり、僕はまたも男子から質問攻撃され身動きが取れなかった。
進学入試&就職活動で午前しか授業はない。
岩田を急かし教室を出て靴を履き替えた。
岩田と会話がしたかった。
しかし――。
「一組、遅かったわね」
綺麗なソプラノ――いやいや、嫌味ったらしい声がした。
僕の下駄箱に寄りかかり携帯を弄る綾部さんが、ぱっつん前髪を揺らした。
待ちぶせか……。
「あら岩田くん。何の真似かしら」
露骨だ。刺がある。
「帰る所だが」
岩田はポーカーフェイスで呟く。
「悪いけど、山柿くんは私と帰ると決まっているの」
決めた覚えはないが、綾部さんが同意しろって目で睨むので、気づかない振りしたが。
「だって彼氏ですから!」
訊いてもないのに、胸を張って言ってくれやがった。
僕が綾部さんの彼氏か監視されているから、一緒に帰るべきだが……。
「俺も同じだが……」
横から岩田の低音ボイスがし、剣道の眼光を綾部さんに向けた。
そうだろうと無言の圧力。こっちのイケメンも同意しろと目が言っている。
「……、……」
マジで困ったぞ……。
綾部さんと岩田、二人の双眸に挟まれた僕は、
「えっとぉぉ……じゃ、仲良く三人で帰ろっかなぁ~。いいねぇえっ!! ふはははははは」
――笑うしかなかった。
「「誰がコイツなんかと!」」
ひぃいいぃぃぃっっ!!!
びりびりと空気が震えた。
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