一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆行ってきまーす

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 手作りの唐揚げをご馳走してくれた愛里と綾部さんが帰宅してから、少しして母さんが買い物から帰ってきた。

「そういえばさっき、商店街で愛里ちゃん見たわよ」

 えっ。
 母さん、見てたのか。

「青い目の可愛らしい男の子と一緒に歩いていたのよ。しかもよぉ。じゃじゃ~ん!! なんと手を繋いでいたのよぉ~」

 なんだ、その場面かよ。
 自分の息子が小学生の女の子の暴言でショックを受けてしまって、幽霊のようにとぼとぼ帰宅する姿でなくてなりよりだった。

「ふたり楽しそうだったわ~。やっぱり小学生は小学生なのね~」

「…………なんだよ。……僕をじっと見て」

「ううん。実はね。母さんちょっとだけ期待しちゃってたのよ……。あの愛里ちゃんともしかしたら、なんてね」

「なに考えてんだよーっ! あるわけないだろー。ふははははは……」

「ちょっと大丈夫、聖? いつもと顔が変よ」

「そうか?」

 流石は親子。僕の分かりにくい表情でもちゃんと理解できている。笑って見せたつもりだったが、動揺が顔に出たみたいだ。

「あっそうそう……、それでね、これ見てよ、これ。あら……、どこに収めたかしら……」

 実はもうだいぶ前から、愛里が唐揚げを持って来た時も僕はしっかり動揺していた。

『全然なんとも思ってないんですからっ! 勘違いしないでくれないっ!! もう近寄らないでっ!!』
 
 あの時僕に言ったのは間違いはない。
 だけど少しして僕の大好物の唐揚げを持ってきてくれた。
 初めて作ったとしか思えない品で、愛里の優しさ、始めて岩田家で食べたクッキーみたいにおもてなしの心を感じた。
 揚げる時間を考えても、酷い事を言った後に取り掛かったはずだ。僕を傷つけたお詫びなら、わざわざ不慣れな油料理をする必要は無いわけなのに。
 だから益々分からなくなって、何であんな事を愛里が言ったのか?
 丁度綾部さんがいたから、訊ねそこなってしまって、でも発言するというのは、心にそう思い続けているからこそだろう。

 愛里と仲良くなれたと思っていたが、やっぱり僕と愛里とでは、年齢もそうだけど、分かり合えない深い深い溝が横たわっているのか……。

 うおおおおおおっっ!!

 なんか、夕飯どきになって腹が痛くなってきたんだけど……。
 うーん……。
 やっぱ半生はまずかったか。ふははは。
 

「あったわよ聖! これこれこれよっ!!」

 息子の悩みを知らない母さんは、呑気にそして嬉しそうに紙切れを掲げた。

「韓国5日間――有名ロケ地めぐりの旅?」

「そうなのよーっ! 当たっちゃったのよ。福引きで母さん」

「へーそりゃ凄い。おねでとう」

 息子がズタズタの心境だった時に、この人は商店街の福引所でガラガラコロンをやってたわけね。
 
「で、いつ行くの?」

「来週の木曜日よ。お父さんと二人っきりで、あぁ、新婚旅行以来よ海外なんて……」

「へーっ。…………っと待った。来週の木曜日って、僕の受験前日じゃないか」

「そうよ。偶然ねぇ。お父さんにはもう電話で話したんだけど、溜まってる有給休暇を」

 偶然の一言で終わらして、さっさと旅行の段取りに入ってるよこの人。
 まあ、別に受験会場の大阪まで付いて来て貰うつもりなんか全然ないんだけど、来て貰っても逆に困るくらいなんだけど。
 息子が高校三年間の集大成で望む大学受験をだな、別にお百度参りをして欲しいなんて思いはしないが、遠い韓国でキャーキャー『あっこれがヨン様の場所、ああっこれが』などと大騒ぎをしているかと思うと、ちょっとなぁ……。
 



 その日から僕は学校を休む事にした。
 腹痛は翌日のお昼には治っていたのだが、もういい加減に受験だけに集中したくて。最近というか、愛里と出会ってから僕の心と生活が乱れに乱れて、全然勉強ができていなかったからだ。
 K大学に落ちてしまったら、この三年間なにをしていたか、まったく無駄になっちまう。
 綾部さんからメールが届いたが、事情の返信をしたら、『私も明日から休もうかしら』で返信が帰ってきた。 
 自宅から一歩も出ずに、部屋のカーテンも引いたまま、それこそ愛里の事すら忘れる気で勉強に打ち込んだ。


 そして、受験前日。

「行ってきまーす!」

 家の玄関の鍵をかけた親父の隣り、母さんが「受験頑張るのよ。じゃあねぇ~」とボストンバッグに受験道具と着替えを詰め込んだ僕に笑顔で言って、さっさと親父と一緒に同じ韓国ツアーが当選した町内の人と共にバスに乗り込み行ってしまった。

「いい気なもんだ」

 僕は岩田との待ち合わせ場所の呉地駅へ向かった。
 
 
 
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