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★スーパーにて
しおりを挟む夕方。
夕食の準備でスーパーに立ち寄ったら、丁度山柿さまを発見。腹痛も回復されたようですし、なんてラッキーなのでしょう。
そう思っていたら、羽沢くんが登場したのでした。
最悪です……。
「岩田さんは、月、水、金曜日は殆どこのスーパーで買い物をするよね。あっ、昨日は木曜日なのに買い物してたね。買った物は鶏肉と唐揚げ粉、それに玉子だったかな。……、……あれ? なんでって顔してるけど、そんなに不思議かなあ。好きな女の子の行動くらい把握していて当然と思わないかな?」
ブラック気持悪いです。とことん気持悪いです。これが美咲の言うストーカーというのでしょうね。
ドラクエの戦士、僧侶、魔法使いとはわけが違います。遊び人のほうがまだマシ。勝手に遊んでいるだけだから。
だけどこのブラックの攻撃はどうでしょうか。
元々気持悪い生き物は大好きですが、こういった心を殺られるような、嫌ゃ~な気持ち悪さは初めてで、とても耐えられません。
「さっ、岩田さんおいでよ。手を繋げないなら、腕を組めばいいじゃない」
「止めてっ!」
伸びてきた手をはたき落としました。
ブラックが、あれっ? って眉が歪んで……、だけど。
「もーっ、岩田さんってツンデレ? いいよそれでも。僕……嫌いじゃないから」
直ぐに不気味な笑みを湛えました。
「なんなの、あんたって」
「あんたって言ってくれるんだ。嬉しいなあ。さあ、一緒に買い物しようよ。何買うの? 手伝ってあげるから」
そう言ってブラックは辺りを見回し、だけどある所でぐにゃりと口を歪めました。
それって、つまり――。
「へーっ。変態フランケンじゃないか。何でこんな所に……。受験の気晴らしか? ……あぁ、そうか。岩田さんは、あれを見る為にここに居たんだ。そうか、山の上公園の時もそうだったけど、岩田さんはフランケンを観察するのが趣味なんだ。へーっ。変わってるぅー」
変わっているのはアンタですって。
あたしの事はいい。でもあたしの勇者さまを侮辱した意味での変態呼ばわりは許せません。
我慢してても肩に力が入ります。お腹の中に焼けた鉄でも入っている感じ。
ダメだと分かってても、右の拳がグググッと握り込められて。
このまま、ニヤニヤしているこいつをぶん殴ったら、どんなにスッキリするでしょうか。
「へー。岩田さんが変態フランケン趣味ね。どこがイイんだろうね、あれの」
固く握った拳をそのまま大きく振りかぶりました。
あぁ……。ごめんなさい、ママ、そして兄さん。もうレディには成れそうにありませんっ!
そして思い切って――――。
「フランケン……? 誰のことだ」
「!」
響いたのは重低音の声。
そしてあたしの耳にはっきりと聞こえるドラクエのオープニングBGM。
そうです、勇者さま登場です。
ズオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――ッッ。
見上げるブラックの倍近くある巨体が、ずうううんっ! ずうううんっ! ずうううんっ! と小学三年生男子に接近しています。
あたしは咄嗟に別の棚のコースに移動して、見つからないよう、顔だけ出して様子を伺いました。
ブラックと二人っきりでいるシーンなんか見せられないですって。
また勘違いされたら困るもん。
「ひいいぃぃぃぃ――っ!!」
ブラックは近寄られただけで絶叫してしまって、あぁ情けない……。
でもそれだけ勇者さまが立派過ぎるわけです。うんうん。
ブラックの腹回りほどある両足が止まり、
「お前か? フランケンと言ったのは……」
大きなゴツゴツした黒いお顔が、ぬっとブラックを捉えました。ターゲット確保です。
ブラックは叫ばないムンクみたいな顔になっていて、膝をガクガクさせています。
やーいやーい、バチが当たったーっ。
「あら、この子たしか羽沢さんとこの長男の耕司くんじゃないの」
近くにおばさまもいたのを、すっかり忘れていました。
「ほら。聖(さとし)も知っているでしょ。同じ町内の、今度一緒に韓国旅行へ行く羽沢さんよ。この子はそこの長男の耕司くん」
「えっ……。あ、はい」
「おい君。フランケンとは僕の事か?」
泣きそうな羽沢くん「いえいえいえいえいえっ!!」と高速で顔を左右に振ってます。
「じゃ誰の事だ?」
ギロリと鋭いカミソリのように細い両目が光ます。
「え、あ、そ、う、い、え……」
うふふふふ。言えるわけありません。ざまーみろです♪
「フランケンスナック! そう、新発売のフランケンスナックを探していたんだった。あれ、どこかなぁ~」
白々し過ぎますって、そんな幼稚な誤魔化しを真に受ける人なんて、いるわけがな――。
「へー、珍しい商品名だなあ。そいつは知らなかった。菓子コーナーはあのあたりだぞ」
――って、ここにいました。いちゃいましたぁ~、勇者さまぁ~~っ! 素直過ぎ、正直過ぎっ、勇者さま過ぎですって。
「ありがとうございまーすっ!」
絶対に内心で舌でも出しているブラックは、軽やかなステップでこの場を去ろうとするじゃないですかーっ。
ううう……悔しいっ!
「そうそう、この子。たしか愛里ちゃんと手を繋いでいた」
「なにっ!!」
おばさまからの問題発言に、山柿さまの眉が寄りました。
「ちょっと止まれっ!!」
途端に、かちっと停止したブラックは、首だけ動かして冷や汗たらり。
「なななな、なんでしょうか……?」
「愛里と手を繋いだって、本当か?」
「あ、はい。そ、そうですが……、な、に、か?」
「そうか、君があの時の子供か……。そうだったのか」
あの時? どの時でしょうか?
勇者さまはブラックを知っているようです。
ああ、そうか。昨日ブラックと手を繋いでいるあたしを見たんです。
……それに朝の山の上公園。羽沢くんに連れられてゆくあたしも見ている。
「いつも繋いでいるのか? 手を」
「あ、……はい」
嘘です。二度ほどだけですって。騙されないで。
「何故そんな事をする。まさか、付き合っているわけじゃなよな」
「あ、はい。一応……」
それも嘘です。
あああ、うううう、どうしょう。飛び出して違うって言うべきでしょうかっ!
このままじゃ勘違いっ。
持っていたお財布をガジガジ噛みました。
「なにぃいい?? その歳でかぁ? 良いのか、おい。小学生が付き合うとか、おかしいだろ。おかし過ぎるだろう。そうだろう少年……。いや耕司くんだったな」
「えっ、あ……」
羽沢くんの視線は宙を舞い、両手はわたわた上下左右に動いていて、緊張してます。
ビビってます。
もっと言ってやって下さいっ。
「あらそうかしら。いーじゃない。初々しくて母さん好きよ」
ダメです、おばさまっ。助け舟だしちゃ。
「母さん、ダメに決まっているだろ。そうだろう耕司くん」
ナイスです勇者さま。ブラックはこっくんするしかなく、タジタジです。やーいやーい!
「じゃあ約束しろ。愛里に近寄らないと、手を繋いだりしないと。
いいかよく聞け。付き合うなど、絶対にダメだからなっ!」
「まあ」とおばさまが口に手を添え驚き、あたしもお口をあんぐりして両目をぱちぱち。
不思議と恥ずかしくて。ドキドキして。
『俺の愛里に手を出すな』――的なこのワイルド感はナニ。
勇者さまに守られているというか、保護されているというか、支配されているというか、私物化されているというか。
「ちょっと、どうしちゃったのよ聖。あんたがそんな事言うなんてっ!」
「関係ないだろ、母さん。単に小学三年で付き合うのが早いと言っているだけだ」
「それにしちゃーなんだかねぇ~。ふーん」
そうです。そこまでして言って下さるとは……やっぱり……、
愛でしょうか……あたしへの。
そしてあたしの気持も分かっている。
だったら良いのですが、そうあって欲しいのですが……。
「ちょっと聖。えらい愛里ちゃんを心配しているようだけど、アンタもしかして」
それそれっ!
おばさまっ!! 聞きたかったの、ナイス質問ですっ!
勇者さまは、やれやれといった顔でため息を漏らします。
「馬鹿な。親友の妹だからだろ母さん。
こういったコトはちゃんとしておかないとだな、昨今の子どもたちの性意識はね、母さんが思っている以上に進んでいるんだよ。もし万が一何か起きたら大変だろ」
「はいはい。分かりました。わっかりましたあー。
愛里ちゃんも慕ってくれているわけだしね。さあ私は買い物買い物」
「そうだそうだ」
なんだ……やっぱり……。ぐすん。
親友の妹として可愛がられているだけなんだ。
愛情とか無しで優しくしてくれているだけなんだ。
そうですよ……、張り裂けそうなあたしの気持なんか、慕っているくらいにしか思われてないんだから……。
そんなのずっと前から分かっているんだから……。知っていたんだから……。
彼女さんがいると知った時から、ちゃんと。
だから平気なんだもん、あたし。全然平気なんだもん。
「あの……。僕もういいでしょうか……」
「おっと待て! 約束はどうした? 約束せずに逃げる気か」
「いえいえ、そんなこと……。はい。約束します」
小声でぼそぼそ言ったブラックに、勇者さまが襲いかかるように怖顔をぐい~っと近づけます。
「本当か……?」と念を押すと、ブラックは又もや高速で頷いて口をカクカクさえていました。
「はっきり大きな声で言え!」
「ややや、約束しますっ!」
「何をだ!」
「い、岩田さんに近寄りません」
「それだけじゃないだろ!」
「あ……、二度と手を繋ぎません。付き合ったりしませんっ!!」
目をうるうるさせて、ブラックは半泣きです。
「よし。行っていいぞ」
勇者さまの声に、羽沢くんは逃げるように店内から消えて行きました。
なな、なんという徹底ぶり。あそこまで念を押さすなんて。
……か、かっこい……。
やがて、レジへ向かわれる山柿さまとおばさま。
あたしもゴキブリになったみたいに食品棚の死角をシャカシャカ渡り追尾しました。
ざわめく店内。活気ある夕暮れのタイムサービス放送が飛び交い。レジは忙しそう。
終わりました。もう大丈夫。これからブラックはあたしに付き纏わなくなりそうです。
よかったよかった……。
よかったんだけど、嬉しいんだけど……。
なんだか少し憂鬱。
おばさまが会計を済ませ、次の勇者さまが個人的に買われた品をレジで精算している時、ポケットから出されたお財布から、何かが――。
「落ちましたよ」
「あっ、すいません」
おばさま風のレジ係りに知らされ、勇者さまは屈みこんで拾い上げました。
「まあ、素敵。器用ですね。ご自分で折られたの?」
折られた……?
不思議な会話が聞こえてきました。
テキパキと精算業務をこなしながら、流石は高年齢のレジ係。
勇者さまの怖顔に笑みまでつくって対応しています。
「いえ、これは、貰ったものです。お守りみたいなモンです」
パッ、とたまたま持ち上げた勇者さまの右手には、昨日出来損ない唐揚げと一緒に渡した、セミの折り紙。
うそ。
お守りって……。
あたしが渡した折り紙が、お守りって。
あたしがムカデさんをお財布に入れているみたいに、山柿さまも折り紙を入れてくれているのです。
同じように大切にしてくれているのです。
昨日は全然、なんとも思ってなさそうだったのに。
「へーっ。可愛いお守り。いいですね。彼女さんかな」
ふふふっ、と笑ったレジ係りの人に、勇者さまが返事をしたのですが。
うーん、うーん、そこ、聞こえない~っ!!
店内のマイク放送が大きいのと、ぼそぼそ濁ってて。肝心なとこっ! 全然聞こえないっ。
身体をくねくねさせたのですが、聞こえないものは聞こえません。
ついに買い物を終えた山柿さまとおばさまは、店内から出てゆかれました。
さっきの会話が気になってしかたがありません。
レジ係りのおばさまに訊ねようと、勇者さまと同じレジに並び順番を待ちます。
ようやくあたしの番になりました。
「いらっしゃいませーっ。きのこの里が一点。カレーが一点。じゃがいもが一点……」
淡々こなすレジ業務を眺めながら。
さて、どう訊ねようかしら。うーんうーん。言い難いです。
ドラクエの村とかのお店キャラには、話すを一発クリックで情報ゲットなのですが、相手は生身の人間です。
『すいません、すいません。あの……、ちょっとお時間いいですか?
さっきの勇者みたいな貫禄のある男の人と話しをされてましたが、どんな内容でしたか?』なんて、小学生が聞き込みをするのは不自然ですから。
「お会計1035円になります!」
「は、はい……」
精算が早すぎて聞くに聞けません。
あたしがもっと買い物をして時間を稼がないといけなかったわけです。
「ポイントカードはお持ちですか? はい。ありがとうございます。はい。またおこし下さいませーっ」
速攻で会計が終わってしまいました。
もう一度お買い物をして、このレジに並び直す手も有りますが、止めときましょう。残金は1000円ほどしかないし、無駄使いはダメですから。
お店の外に出ると、冷たい風が足元を舞いました。どこかでカラスが気持ち悪い輪唱みたいに鳴いていて、鉛色の雲がどんよりと空を覆っています。
それでも、なんだか、あたしの心は透き通った青空みたい。
ぺったんこの胸に手を添えると、どっどっどっと心臓がいつもより元気そうにしています。
『愛里に近寄らない、手を繋いだりしない、付き合うなど、絶対にダメだからなっ!』
むふふふふ。
思い返したのは何回目でしょうか。ついニヤニヤしてしまいます。
「ダメだぁ~、ダメだぁ~、絶対にダメだぁ~♪」
口ずさみ、スキップしながら家に帰りました。
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