一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆スタジオ潜入その2

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「そ、それはどういった、要件でしょうか……?」

 決死の覚悟で訊ねたら、セナさんにプッと笑われた。

「あのねぇ~。そう硬くならないで」

 硬いのはあんたのおちんちんだけでいいからさー、と笑うセナさんに、突っ込むこともせず、いやいや、突っ込んだりはしないぞ、止めることもせずだ。などと引きつって苦笑する僕。

「簡単なことよ。試しにウチと付き合ってみない? それが交換条件」

「はいっ?」

 一気に語尾が上がってしまった。
 余りにも軽い言いようだったので真実味がないが、告白されたのか、もしかして……? 
 男女が付き合う……つまりカップルになるという事だ。
 さてはからかっているのだろう、と疑いたくなるが、静かに微笑んでくる瞳は真剣そのもの。
 冗談を言っているようには思えない。
 いや、マジに受け取るほうがおかしいのかもしれない。
 セナさんにとっての恋愛行為は、お茶に誘った程度の軽さなのだろう。
 芸能人はそういう人種なのかもしれない。

 セナさんは色っぽい表情のまま、いや……、はにかんでいるようだが。

「えっ。なになに、驚いた? ヤダそんな顔しないのっ! 別にそんな深刻にならないでよ。試しに、試しにって言ったでしょ。まあウチは確かにあんたを始めて見た時、ビビッときたんだけどね、……ここが」

『ここが――』とセナさんが親指でつんつんしたのは、前で腕組みをし、より一層強調された自身の左胸。ぼよーんと良い形に膨らんだ物体に、僕は思わずゴクリと固唾を飲んでしまった。別に巨乳が好きというわけではない。どちらかと言えば愛里のようなペッタンコの胸のほうが俄然好みなのだが……。
 ――試しに。
 試しに、と言ったセナさんの言葉が、情けないことに僕のチェリー君の性をむくむくさせてしまい、セナさんと付き合った後の行為までしっかり想像させてしまっていた。
 熱い。
 顔が熱い。

「いいわぁ~、その表情。今にも襲いかかってきそうな、獣の顔だわ。好きよ」
 
 いけないいけない、と咄嗟に俯いた。 
 怖いじゃなくて、獣のような顔をしていたのか僕は。巨乳のパツパツキャミソール姿をまじまじと見てしまっていたからだ。
 どんな顔だ獣って? 鏡があったら見てみたい。

「ウチは根がドMだから」
 
 さあ、顔をよく見せて。
 とセナさんが白い指で僕の顎を持ち上げる。すると僅か数センチ先に迫るセナさんの白い顔。美人だ……。

「ほら見て。ストーカーがこっちを向いているわ」

 綾部さんはついてきていたのだ。

「キスしようか? どう? 見せつけてやろうよ」

 大きな目を細めて妖艶(ようえん)に微笑んでいる。

「いや、それは、ちょっと。付き合ってもないし……」

「真面目ねー。まっ、いっかー。嫌いじゃないよウチそんなとこも」

 セナさんは身体を揺らしながら笑った。

「じゃー、早く返事を聞かせてー。ウチがあんたの彼女になった瞬間、速攻でベロチューだかんねー」

 愛里を忘れようと、男性ばかりに囲まれた大学生活をなんとかしようと、彼女を作ろうとコンパに足繁く通った挙句、全く誰からも相手にされなかったこの僕と、本当に付き合って欲しいだって? このもの凄い美女がか? 
 たとえ試しにとはいえ他に言い寄って来る男はいくらでもいるだろう、なんで僕なんだ。こんな顔の僕なんだ。もしやあれか、『酷い顔の男性のほうが断然良い』って性癖? ええい、どうだっていいそんなの!
 この場で『OK』すれば、もう彼女が出来てしまうのか。セナさんを大学の友人に紹介したら、どんなに羨ましがられるだろうか。
 
 だけど………………、
 
「いや、あの、僕。悪いけど……」

 おいおい、何言ってるんだ僕は。

「実は、高校の時から……」

 こんな奇特な美女は何処探したって居ないんだぞ。勿体ない。

「好きなコがいるんで……」

 一生ないぞこんな幸運。バチが当たる。絶対に。そう頭の中では語っているのに。

「そういうのはちょっと……。ごめん!」

 言ってしまった。言い切ってしまった。
 告白されて速断るとか、岩田と同類じゃないかっ!

「え…………? そ、そうなんだ……。試しにで良いのに超意外」

 セナさんは驚いていた。言葉のトーンは落ち、残念そうに瞳を瞬かせ苦笑いした。

「いるんだね~、あんたみたいな男……」

 セナさんが男からの告白を断ることはあっても、セナさん自身が告白して振られた事など無かったはず。
 
「どストライクなのになあ~、あんたの顔」

「ごめんな……」

 バカな男で……。

「もー、謝るんじゃないよー! だけど顔に似合わず、クソ真面目ーっ! しゃーない。いいよいいよ。スタジオに案内してあげる」

「えっ! いいの?」

 ふん、と鼻息を鳴らしてセナさんは笑った。

「任せて!」

 スマホを取り出すと耳にあてた。
 このセナさんは仕事がらイケイケに見えるが、根は良いコなのかもしれない。
 勿体ない事をしてしまったのだろうか、僕は……。
 とひとり脳内反省しつつ電話を終えるのを待った。
「手回し終ったよ~」とかで、僕はセナさんの斜め後ろを付いてスタジオの入口をくぐった。

 警備員の立つ横、受付で入構証を貰ったセナさんが僕の事を『駆け出しのお笑い芸人です。監督に来るように言われているから』と説明すると、僅かの確認待ちの後あっさりとOKが出て、僕は渡された指定の用紙にセナさんに言われるまま記入した。
 ふっふーんと自慢そうなセナさんから、入構証をありがたく両手で受け取り首にかける。

「んじゃ、行こうか、阪本氷魔くん」

「はい」

 胸付近で揺れる入構証に書いた名で呼ばれ、行き交うスタッフに、にこやかに挨拶をするセナの後、僕も続ける。
 すると、
  
「な、何やってるのよ、山柿くん!」

 後ろから声が飛んできた。警備員の後ろ、入構証がないからビルに入れない綾部さんが叫んだのだった。
 
「今日はねーっ! 今日は愛里ちゃんの収録日だから、あなたを誘うつもりだったのにっ! 岩田くんも、反対していた岩田くんもそのつもりだったの。本当に何やってるのよーっ!」

「えええっ!」

 じゃあ、じゃあ、あの岩田や綾部さんからの誘いのメールは全部そうだったのかっ?
 僕はバカみたいに早朝から張り込んでいる必要はなかったってわけ?
 何もせずにただ岩田の誘いを受けてれば自動的に愛里と面会できたと?

 あわわわわわわ……。

 さあゆくわよ、とセナに再び腕組みされ、引きずられるようにロビーを奥へ奥へと進んでゆくのだった。


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