一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆⑥スタジオで収録

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 第⑥スタジオで打ち合わせ。
 うさぎの着ぐるみの中に入っている僕は、スーハースーハー呼吸していた。
 なぜなら、愛里の右手に見覚えのある異物があったからだ。
 折りたたんでいるせいか、タオルハンカチぽく見えるけど、紛れも無くあれは僕のおちんちんカバーだ。
 僕個人の私物ではなく、A∨撮影用の着ぐるみの曝け出された股間部分を覆うカバー、さっきまでおちんちんをすっぽり被せていたキャップ。
 愛里がどうして衣装部屋から持って来たのか? 気に入ったからか、慌てたようだったのでうっかりなのか、どっちにしても普通に持っている。
 
「そろそろ、本番入りますー!」

 スタッフの1人が叫んだ。
 あっ、ADらしき男が愛里からタオルハンカチを受け取っている。持ったまま収録は出来ないからだ。どうする気だ?
 そのまま後ろの荷物置き場の棚に置いたぞ。
 貴重品じゃないと思っているのだろう。普通の人だったらそうだが、僕にとっては名誉がかかった最重要アイテムだ。

「うさぎさーん。位置が違うぞー」

 うさぎは僕のことだ。
 スタッフから、愛里の後方に立ってリズムに合わせて揺れてください、と命じられていたのだが、今すぐカバーを取りに向かいたい。誰にも知られないよう取り戻したい!
 ⑥スタに入るときにセナさんや監督さんに会ったが、いい記念になるぞと激励された。 
 まだおちんちんカバーに気づいていない証拠だ。愛里もまだキノコの一件を話してない。
 
「うさぎさーん。聞いてますかー。……おい! うさぎーっ!」

 怒鳴られたので、しぶしぶ配置につく。
 収録が始まった。
 撮影スタッフの視線とカメラが中央のステージで歌う愛里に向けられる。
 愛里の背中にあるキラキラ輝いている羽根が、ぴよこぴょこ可愛く揺れている。妖精みたいに可愛い。
 僕は愛里の後ろで適当に身体を揺らしつつ、意識は100パーセントカバーに注いでいたらあっという間に歌の収録は終わった。 
 引き続き、愛里は別の打ち合わせと収録だ。僕はまだ出番があるようで、着ぐるみのまま待機を命じられた。

 今がチャンス! 
 さり気なく荷物置き場にゆく、分からないようそっとカバーを持つ。
 上手くいった。みんなステージに向いているぞ。
 そのまま……。あ。
 着ぐるみに無いぞポケットが。あるわけないか。
 どうする。どう隠す?
 このまま⑥スタを出たいが、注意されそうだ。
 トイレを我慢できないことにするか? だったら着ぐるみを脱いで行けと言われそうだ。
 目立つな。目立つのは避けたい。
 仕方がないな。

 セナさんが機材の後ろで様子を見ていたので、持っている真っ赤なバックの中に入れてもらうようお願いした。 
 
「はっ? 何言ってんの」

 嫌な顔をされた。

「どうして坂本くんのおちんちんケースを、ウチのバッグに入れないといけないのよ」

「いやー。そうですよね、やっぱり。ははは」

 匂いがつくかもしれないわな。おしゃれなバックだし。

「限定ブランド品なのよ。手に入れるのに大変だったんだから。てか何でケース持ってんのよ?」

「えっ?」

「衣装部屋で無くしたんじゃなかったの?」

「えっえっ!」

 墓穴を掘ってしまったかっ。
 
「いや、その……、無くしたつもりだったんですけど、うっかり持っていたみたいで……」

「坂本くんがうっかり? 手には持ってなかったでしょう。ポケットの中なの? だったらその着ぐるみの私服の中じゃないの」

 セナさんが疑惑を持ち出したぞ。
 こ、困った。
 
「なんかあるみたいね」

「ま、まあ」

「仕方がないわねー。持っててあげるわよ。それでいい?」

「いや、手に持つのはちょっと」

 愛里に発見されて終わってしまう。

「出来れば見えないようにして欲しいんですけど……」

「ふーん……」

 セナさんが薄目でニタリと笑った。

「はーん。つまり『隠せ』そう言いたいわけね」

「ええ、まあ」

「怪しいわね。すっごく……。だけどいいわ。ウチのバッグに入れてあげる。
 坂本くんはウチに入れてくれないくせに、ウチは入れてあげる。なんて優しいんでしょうウチは」

「すす、すいません……」

「一生恩に着てね」

 にこやかにセナさんはケースを受け取り、バッグの中へ入れてくれた。
 やれやれ。

「これで貸しは入構証の手配とケースの隠蔽だねー。大きいわよこの貸し」

「ははは」

「言っとくけど、ウチへの返しが遅いと増えるからねー複利で」
 
 セナさんは笑う。
 優しいのか、冗談なのかよくわからんな。

 やがて、収録は少しの休憩を挟むことになった。
 愛里がさっきのADの所に行った。ADは荷物置き場でおろおろしているぞ、あっ、愛里に謝っている。
 2人で苦笑いしていて、話しは終わったようだ。
 愛里は残念そうに肩を落とし、こっちに何故か歩いてくる。
 
「やあ。歌上手だったよ」

「ありがとうセナお姉ちゃん」

 2人は知り合いなのか! 
 監督つながりってわけか。

「それでね、お姉ちゃん。あたしさっき衣装――」

「わああああああっ!!」

 いきなり愛里が核心に触れたから、大声で叫んでしまった。
 2人きょとんと僕を見ている。

「どうしちゃったの、突然?」

「びっくりしたー」

 愛里が衣装部屋にやってきたことも、あの出来事も知られてはならない。誰にも。

「そうそう。紹介するね。このうさぎちゃんに入っている人は、お姉ちゃんの彼氏の坂本くん」

 えっ? 彼氏って……。

「ほら、顔出しなさい」

「え?」

「愛里ちゃんのファンなんでしょ? ほら愛里ちゃんも挨拶しているじゃない。うさぎの頭を取って」

 いや、それはマズい。こんな形で再会はしたくない。
 セナさんに小声で、『僕はこの怖い顔でしょ。あいりんが怯えないだろうか』と不安感をだした。
 なるほど、と思ったのだろう、セナさんは頷く。

「あー、そうだった、そうだった。このうさぎの頭は簡単に取れないようになってたんだー、そうだったー」

 セナさんのわざとらしい言葉を、愛里はすっかり信じたようで、「大変ですね……。暑くないですかー?」と心配すらしてくれた。

「大丈夫だよ。ありがとう」

「よかったーっ! お仕事がんばってください」

 かーっ! 
 なんて良い子なんだ! 
 僕は改めて愛里の優しさと賢さと純真さに感動を覚えた。
 
 ◆

「あっ。ママ……」

 僕とセナさんと愛里が⑥スタ内で休憩をしていると、岩田監督が入ってきた。

「愛ちゃん。どうして他所に行っていたの? 探したのよ。スタッフの仕事を増やしちゃダメでしょう」

「ごめんなさい。ママ」

「まあ、いいわ。それでセナ。次回の打ち合わせをしたいんだが」

「はい! 監督」

「別室を用意しているから行くぞ。
 ……そうそう、坂本くん。私は離れるが、娘を頼むぞ。この子は好奇心が旺盛で、ふらふらビル内何処かへ探検に行ったりするからな。じっとここに居させるように」

 そうなんだ。知らなかった愛里の性格。

「はい。お任せください」

「愛ちゃんも分かったね」

「はい、ママ」

 セナさんがうさぎの着ぐるみ越しだが、口を近づけ囁いた。

「くれぐれも、愛里ちゃんを襲わないように」

 するわきゃねーだろ!
 
 ◆

 監督がセナさんを連れて行き、残された僕たちは⑥スタ内にある長椅子に座った。
 黙ったまま時間だけが経過する。愛里は脚をぷらんぷらん揺らし俯いているだけ、そろそろ飽きそうな感じだ。
 何か楽しい会話をして馴染んだ頃合いに、姑息だけど、衣装部屋のキノコの一件を黙っていなければいけないと愛里が思うように誘導する。
 難易度めちゃ高いが、やらねば僕の人生が終わってしまう。
 さて何を話せばいいだろうか。困っていると、
 
「あのう……」

 愛里から言ってきた。

「お姉ちゃんの彼氏さんに相談するのはどうかと思うんですけど、あたし困っているんです」

 ぽつぽつ語る愛里はとても弱々しくて、だから余計に可愛い。

 内容はこうだ。
 衣装部屋からつい持ち出したキノコロボットのカバーを、後で戻そうと思っていたんだけど、失くしてしまってどうしょうかと悩んでいる。
 ママに言ったら怒られそうで、お姉ちゃんに相談しようと思ったら、ママが連れて行っちゃった。と言う。

「そうかー。あいりん。僕に任せて!」

「名案があるんですか?」

「カバーは無くなっても別に控えがあるから大丈夫。僕が後でロボットに返しておくよ」

「ええ――っ! そうなんですか」

 愛里はぱっと笑顔になった。瞳を輝かせて僕を見上げ、神様ありがとう、みたいに両手を握り締めているぞ。

「だからね。誰にも言わなくても大丈夫。いや、むしろ言わないほうが、心配されなくて良いと思うよ」

「そ、そうですよねー。はい。誰にも言わないことにします」

 よ、良かったー!
 上手く行ったぞ。

「それにあたし別の意味で言い難かったんです。……そのあの、ロボちゃんにいたずらもしちゃってるから」

「いたずら?」

 もしや、あれか?
 にぎにぎごしごしぺろぺろ――絶妙な刺激行為だろうか。
 
「どんなことなの?」

 知ってて訊ねてみた。困ったように顔を赤らめているので、つい。

「うん。いろいろしちゃったんだレバーに。でも不思議なんだよー。触っていると、あたし気持ち良くなって。ぞぞぞーってなっちゃったの」

「ぞぞぞー?」

「うん。お背中がぞぞぞーって、身体全部がぞぞぞーって、すごくいい気持ちなの」

 本能ってすげー。この歳でも快感があったりするんだ。

「舐めたら止まらなくて。でもかじらなくてよかったー」

「……か、かじる……」

 かじるつもりだったのかっ!
 無知って激怖――――――っ! 
 正しい性教育が必要だぞ監督さん。

「壊れてないかなー、あのロボちゃん。べとべとに濡らしちゃったままだからー。錆びたりしないよね」

 本気で心配しちゃっている。可愛い。

「大丈夫だと思うよ。そこんとこのメンテナイスも僕が見ておくからね。安心して」

「あ、ああ、ありがとう。うさぎさん。優しいですねー。セナお姉ちゃんがうらやましいなー」

 誰にも僕の素性を明かさないまま、ビルを出るのが懸命だな。
 監督にお前があの山柿聖だったのか、なんて知られたら最悪かもしれん。
 当初の予定からは随分離れてしまった。
 
 だけど、だけど。
 ⑥スタジオ観覧用の窓から中を覗いている見覚えのある顔――。

「あっ! 兄さんだ。……ムッ! 彼女さんもいる……」

 岩田と綾部さんだった。
 うーん。

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