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☆発覚してあわわわ
しおりを挟む自宅の2階のトイレの中で、下半身裸の愛里をハグしている僕は……、マックス君にしてしまっている僕は……、何をどう言い訳しても、少女に淫行している変態だ。
「や、山柿お兄ちゃんは悪くないのーっ!」
愛里はかばってくれるが、「分かったよ、分かったから」となだめるセナさんの僕を見る眼差しは、《両親の不在を利用し、言葉巧みに愛里を自宅に連れ込んで、寄りによってトイレでコトに及ぶとは……。そこまで腐ったロリコンだったか……》落胆と軽蔑が入り混じった哀れみだ。
大きく息を吸ってから、般若のように怒り狂った。
しかし、一番荒れると思われていた岩田が、意外に沈黙しているのだった。
日本刀があれば斬りかかってもおかしくない状況。セナさんが先に騒ぎ出してしまって、逆に覚めてしまったというのもあるだろうが、岩田の目上の人を立てる性格によるものだろう。
僕と愛里は引き離され岩田家に連行された。
岩田家の豪華なリビングには、高級ソファーにもたれ掛かった元トップモデルが、お盆の休暇をとっている。
「監督ーっ! 最悪ですよコイツ」
セナさんがさっき見た事情をぎゃーぎゃー説明している最中、僕は高級ペルシャ絨毯に額を擦りつけ、土下座をしていた。
最初に愛里とああなった時に土下座して謝るつもりだったのを結局今やっている。
それも同じトイレでの破廉恥行為というまったく学習していない最悪のケース。
「すすす、すいませんっ!」
何度謝っただろうか。
監督には驚きや怒りはない。ティーカップを傾けながら、淡々と事実を飲み込んでいる感じ、まるで台本の説明でも受けているようだ。
全てを言い終わったセナさんが、僕にむしゃくしゃした気持ちをぶつけてきた。
「あんたら! 放っとけばいつの間にか引っ付いている」
あんたら――、と僕と愛里を一括りしてくれたことが、この期に及んでも嬉しかったし、それに続けて、放っとくといつの間にか引っ付く……、と言われ堪らなく嬉しかった。
僕だけでなく愛里自身も意思で僕に近づいている、つまり僕と愛里が好き同士だと第三者のセナさんでも感じているわけだ。
無言を続けている岩田が不思議だったけど、岩田もセナさんと同じ考えだからこそ、沈黙しているのではないか。
そうなのか。そうだったのか。僕たちはそう思われているのか。
叱責されている状況に陥りながらも、犯罪者確定な僕なのに嬉しかった。
「えっ……!」
「まあ……!」
愛里もそうなのだろう、僕と似たような声を漏らした。
愛里はほんのり赤くなって、たぶん似たようになっている僕を見た。
「なに二人して照れてんのよっ! 異常よ異常。なんでトイレでしてんのっ!
愛里ちゃんも、どこが良いのこんなヤツのっ! 超怖い顔よ。ヤクザよヤクザ! むっつりスケベよ!
幼女にしか反応しない残念な男なのよ!」
えらい言われようじゃないか。その残念男を彼氏にしたがっているのは誰だよ。
「なにっ!」
セナさんが首だけぎぎぎぎと動かし、烈火の形相で僕を睨んだ。
誰にも聞こえないようにボヤいたつもりだったのに、なんちゅー地獄耳だろうか。
「う……うん……それでもいいかも……。そのほうがいい……かも……」
恥じらっているのだろう、愛里が蚊の鳴くような小さな声で言った。
嬉しい。超嬉しい……。
セナさんは理解できないって顔で愛里を見下ろし、それから僕をまた睨んだ。
「未成年への淫行だよ。理解しているの坂本! たとえ愛里ちゃんが許したとしても、親である監督が許さないから。ねえ監督ーっ」
僕と愛里、そして憤懣やるかたないセナさんが監督に注目すると、監督が「……私か?」と薄く笑ってカップをソーサーに戻した。
「……うむ。そうだな……坂本の節操の無さには正直驚かされたよ。セナの言う事はもっともだと思うな」
大阪のスタジオでやらかした時と全く同じだ。
まるで他人事。僕としては有りがたいことだけど、自分の娘が心配じゃないのか……?
「私が告発すれば淫行だろうが、しかし、とうの愛ちゃんは嫌がっていないようだし、……そうだな……セナは不満だろうが私としは坂本次第だな」
「「へ?」」
途端セナさんが拍子抜けした顔をした。
「それって……どういう意味……」
僕しだい……。
僕次第ってことは、僕の今後の行動で決まるってわけ? 条件付きで許してくれるってこと?
希望の光が差してきて、途端に気持ちが軽くなる。
監督はいつもと変わらない端正な顔で僕たちを見ている。
「おかしいですよ、監督~っ!」
「まあ、セナよ。落ち着け」
「は……、はい……」
納得がいかないセナさん。その通り。監督はおかしい。
娘を汚された母親の言動じゃない。僕を叱責して当たり前なのに。
「うむ。その前に、愛ちゃん」
言われて愛里がひょいと顔を向ける。
「後で坂本を連れて行くから、愛ちゃんは自分の部屋で待っているように」
監督が淡々と言うと、愛里の顔がとびっきりの笑みになった。
「いいの? 本当にあたしのお部屋に来るの! 来てくれるのっ!」
「ああ、そうだ」
「いっやった――っ!!」
愛里がぴょんぴょん飛び上がり「じゃ、手直してきますーっ」と急いでリビングから出て行ってしまった。
僕が部屋を訪れるだけで、あの喜びよう。
なんて可愛い……。
今から部屋を簡単に掃除するのだろうか。始めて入る愛里の部屋に、僕はメルヘンチックな妄想をした。
「さて、坂本氷魔よ。キミが愛ちゃんを好きなのは知っている。うちの愛ちゃんに近づきたいと四苦八苦しているようだしな。
しかし、セナの話しからすると、かなり度が過ぎるようだな」
「は……はあ」
「本気で愛ちゃんを応援しているだけならいいが、これらの行動はキミのロリータ、幼女趣味の延長でしかなく、幼女をどうにかしたい願望を単に愛ちゃんに向けているだけなのかどうか。
……私が危惧しているのは、そういうことだ」
「そりゃー監督ーっ。こいつ童貞ですよ。どうにかしたいだけに決まっているじゃないですかー。頭ン中はあのことだらけですって!」
セナさんが僕を指さし、吹き出し笑いながら言った。
「ほう……。そうなのか?」
「ちち、違いますっ!!! 全力で愛里ちゃんを応援しているだけです! 今回の件も偶然が重なっただけで――」
「どうだかー。坂本くんは根っからのロリコン、小さい子にしか欲情しない超ド変態だって思うんだけどねー。
今回の件も巧妙に仕込まれた作戦だったのかも。
たまたまウチたちが見つけたから良かったけど、もしあのままだったら……、……こ、怖いわ。怖いわ。
愛里ちゃんの貞操がああああ――――っ!!」
「そそ、そんなことはしない! するわけがないっ! それに僕は絶対にロリコンじゃない!」
「声が震えてるわよ」
「ほう。セナは坂本の私生活からその類を感じるのか?」
「え? いや……坂本くんの寮と実家の部屋を見ましたが、ロリコンぽい痕跡は……無かったですけど……」
セナさんが悔しそうにした。
よしっ!
自宅にフィギュアや幼女写真集を隠していてよかった。
もっとも、あれは健全な癒やし効果を求めてだ。エッチ用途じゃなく、落ち込んだ時に、愛でる、心の浄化、オアシス、回復薬だけど、セナさんに発見されていたら、終わりだった。危ないところだった。
「……でもホテルでですよー、このウチが全裸でどうそ食べてちょうだいポーズをしているのにですよ。コイツはなーんもせずに逃げ出すんですよー。あり得ないでしょー普通!!」
「セナよ、それは何回も聞いた」
「そ、そうでしたっけ……。まあ、とにかく、コイツはどっかにロリグッズを隠し持っているに違いないですって!」
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