一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆愛里にだけマックス君のはずが……

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 岩田は語った。

 愛里と付き合えるのは、愛里の価値観を共感し合える人間にしか無理――。

 ピカソの絵が素晴らしいと感じる人間でなければ、ピカソの絵を買っても楽しめない。
 僕には愛里が分からないから上手くいかない、そう言われたも同じ。
 胸に突き刺さった。
 長い間愛里と一緒に暮らしてきた兄だからこそ言える言葉だ。 
 そして続けて、
 
 ――愛里の感覚に一番近い男は、羽沢くん――。

 岩田家の近くのコンビニの息子。愛里と同級生のハーフのイケメン。サスペンスドラマに急遽共演することになったあの子だ。
 愛里が好きで、セミの抜け殻集めもセミ部屋の作成も快く引き受けたという。絵の才能があり、部屋に取り付けるセミの抜け殻の配置も羽沢くんが独自に考え、愛里に提案して二人が納得した上で作業をしたという。

「普通の子供だったら、愛里部屋に入った途端、気持ち悪がって二度と愛里に会いに来ないんだけどな」

 岩田は笑った。
 そりゃそうだろう。
 愛里の感性を分かってくれて、支援までしてくれる小学生は居ない。居るはずない。
 
 僕はブラック羽沢に負けている。
 年齢も顔も感覚も。
 せめてもの救いは、愛里がブラック羽沢を嫌っている風なこと。
 撮影現場、カメラが回っていない二人を見るにそう思える。
 羽沢くんが嬉しそうに『あいり~ん♪』と叫びながら駆け寄ってゆき、愛里が突っぱねて暴言を吐く。
 そんな漫才のようなコンボを何度も目撃した。スタッフたちも微笑んでいたな。

「喧嘩するほど仲が良いとも言う」

 ご機嫌で語る岩田の頭の中には、将来愛里と羽沢くんが結ばれるシーンが構築されているのだ。 
 それに愛里だって中学生になれば、多感な時期を迎えれば、自分の感覚について不安に感じるだろう。戸惑うだろう。どうしてあたしの感覚は皆んなと違うのと。 
 そんな愛里をサポートし続けてくれる羽沢くんは、天使か王子様に映ることだろう。

 僕は、僕は、僕には何が出来る?
 愛里に何をしてあげられる。
 愛里を変わっていると思いながらも、『大丈夫だよ』とか『凄いね』とか自分と愛里を誤魔化しながら、ご機嫌をとりながら側にいるのか? 
 根本的な問題は何一つ解決されない、無限地獄だ。

「おい! 落ち込むなって。俺はお前の想いを完全否定しているわけじゃない。ただ、お前の選ぼうとしているのは茨の道。かなり険しいぞと言っている」

「今なら引き返せると言いたいのか?」

「山柿、お前は触れ合いサークルに入ったよな」

「勝手に入部届けを出したの岩田だろ」

「はっきり断れば直ぐに退部できたのは、お前だって分かってただろう? 
 だがそれをしなかった。
 つまりあれは、愛里を忘れるつもり、想いを断ち切るつもりだったわけじゃなのか?」

 すべてお見通しだったわけだ。

「山柿の考えは正しいと思う。いま直ぐ決める必要はない。ゆっくり考えてみるんだな」
 
 ◆

 ◆

 考えてみるんだな、と言われたが、僕の気持ちは変わらない。 
 岩田に言われて少し心が揺らいだけど、僕はやっぱり愛里とともに生きて、愛里と共に死ぬ。
 言われて逆によかったかもしれない。自分の心を再認識できた。決意が強くなった気がする。 

 
 そんな中、サスペンスドラマのスタッフ役者の初顔合わせで、愛里の携帯画像がネットにアップされる事件が起きた。犯人は月光優花という小学5年生の美少女だった。
 優花ちゃんの将来を考え、誰にも言わず僕と愛里だけの秘密にすることにしたが、
 ――あたしも罰を受けたいです――、
 と言い出した月光優花ちゃんが個室に行き、パンツを脱ぎ、スカートの前を持ってたくし上げたときの恥ずかしげな表情と、むき出しの下半身を視界に入れた瞬間、僕の身体に電流が走ったのだった。 
 僕の息子が、S級レベルのA∨女優の裸ですらピクリともしなかったバカ息子が、あっさりと、実に素直にマックス君になってしまった。

 愛里にだけしか反応しなかった我が息子。
 これこそ僕が愛里だけを求めている証じゃないかっ! 
 セナさんでも、どんな美女の裸でもない。僕の心に響くのは愛里だけなんだーっ、などと自分が誇らしげでもあったのに。岩田の言葉に対抗する現象だったのに。
 優花ちゃんでマックス君……。トホホホ。

 これじゃあ、これじゃあ、まるで、僕は6回生の先輩と同じ、ロリコンみたいじゃないか。
 いや、先輩は女だったら誰だってOKなわけだから、むしろ愛里と優花ちゃん小学生二人にだけ反応する僕のほうが……。

 待て待て、そうじゃない!
 
 月光優花ちゃん(小学5年生)は、トキメキTVのオーデションを最終選考まで残っただけあって、かなり可愛いかったからでは? 
 小学生に反応したのではなく、ロリータエッチの期待とかじゃなく、愛くるしさにマックス君になったのではないだろうか?
 なんか、論理が破綻している気もするが……、とにかく僕はロリコンじゃない。フィギュアや幼女写真は好きだけど、断じてロリコンではない。ロリコンであるわけがない。
 
 それより、その後、僕のマックス君を、何も知らない愛里と月光優花ちゃんが先を争うようにペロペロちゅぱちゅぱしてしまって……、
 僕は悶絶しながらも、内心ちゃっかり喜んでしまって、止めようともしなかった。
 あれから1ヶ月も経つのだけど、いまだ二人の親に打ち明けて謝罪をしていない。これが大問題。
 言い訳じみているけれど、月光優花ちゃんが頻繁にメールや電話をしてくるようになった。
 

『あんな大っきいの衝撃でした。どきどきでした。氷魔お兄ちゃん大好き』 
『ダメだよ優花ちゃん。僕はまだキミの両親にも謝罪していない。ほんとうに悪いことをした』
『アノことは、ママにも誰にも内緒にして下さい。でないとあたし恥ずかしいの。お願いします。絶対に秘密にしてください。
 そして、もしよかったら、今度は愛里ちゃん抜きで、またシテくれませんか? もっと凄いの、あたし、いろいろ知りたいの』

 
 もちろん、きっぱりと断っておいたが、優花ちゃんはサスペンスドラマの収録で会うと必ず近寄ってきて、愛里がいない隙をみては、こっそり手を握ったり抱きついたり下半身を触ろうとする。最近はエスカレートして、僕の手を自分のスカートの中へ入れようとするし、脱ぎたてのパンツを渡されたこともあった。

「氷魔お兄ちゃんは、愛里ちゃんとお付き合いしているの?」

 僕と二人っきりになると、甘え言葉になる優花ちゃん。眼がハートマークなのだ。

「……僕は、愛里ちゃんのファンなだけ。愛里ちゃんを支える熱狂的なファンの一人だよ……」

「本当? 本当にお付き合いしていないの」

「……そうだよ」

 愛里とのことは秘密だ。監督との約束でもある。

「よかったー。だったら優花だけのパパになって欲しいの」

「パパ……?」

 パパに脱ぎたてのパンツを手渡したり、パパの息子を触ったりはしないだろう、と思ったが。

「普通のパパじゃなくてね。別のパパなの。
 あたしがママでね、氷魔お兄ちゃんがパパなの。いいでしょ?」

「あーっ、おままごとか。もうそんな年じゃないでしょ。はははは」

「違うよー。おままごとじゃなくて、ほんとうにしたい……。氷魔お兄ちゃん、愛してるの。もっともっと、いたずらして欲しいの、優花に……」

 収録の休憩時間になると、僕だけにパンツが見えるようスカートを持ち上げる。
 あっさり反応してしまう僕の息子が面白いのか、なんとか僕を人気のない場所に連れていこうとするから困った。

「愛里ちゃんにだけは、絶対に秘密だからね」

 二度とあんなエッチな事をする気は毛頭ないのに、毅然とした態度で断っているのに、それでも、どんどんエロく過激になっていく月光優花ちゃん。僕はドキドキワクワクしてしまって、そんな自分が情けなくて恥ずかしい。 
 ダメだダメだ! この子をエッチな子にさせてはいけない。食い止めなければ。

「優花ちゃん、ダメだよ。キミは、もっと自分を大切にしないといけないよ」
 
「氷魔お兄ちゃんは、優花だけの王子さまなの。だからいつでも、優花になにをしてもOKなの」  

 そう言って、もう癖になっている行動――。何も穿いていないスカートの中を見せて、おねだりするのだった。
 
 もちろん、おねだりは拒否した。
 言っておくが、つっけんどんな言い方はしていない。優しく傷つかないよう断っておいた。

 ◆

 ◆

 収録の開いた時間に一人で休憩していると、セナさんからメール着信があった。

《いま、電話してもOK?》

 僕が収録中かもしれないので、いきなりの電話はしてこない。

《OKですよ》と返信した。即電話がかかった。

『元気してた? 最近会えないねえ~』

 セナさんとはもう1ヶ月になるか、秋のドラマの第一話の収録を最後に会っていない。
 僕が多忙になったのもあるけど、セナさん自身も仕事が増えたからだ。
 ラブメールや『今度会ったら、絶対子作りしようね』などと冗談電話は毎日かかってくるけど。

「そうですね……」

『声に張りがないわよ。建成の話し……まだ引きずっているの?』

「ええ、まあ」

 実は悩んでいた。
 ――愛里とともに生きて、愛里と共に死ぬ。
 格好良く決意したつもりだったけど、愛里と一緒にいるとき、合わせようと意識している自分に気付いた。
 蜘蛛や頭蓋骨ドクロの絵を描いて『可愛いでしょ~♪』と見せてくる愛里に、微笑んで『そうだねー』とウソの返事をする僕。
 見せかけの同意だ。その後『僕やミッチェルさん以外には見せたらダメだからね』と必ず付け加える。
 良いんだろうか、これで。
 正直に否定してあげたほうが良いんじゃ。

『アンタ、不安なんじゃないの?』

「まあね」

『愛里ちゃんに好かれているのは今の時期だけ。愛里ちゃんが小学生だから、まだ異性のことも分かっていない子供だから好きになっているだけなんだって。思春期を過ぎたらもう相手にされないんだって、アンタが一番自覚しているんじゃないの?』

 そう……。
 それはいつも、今までもずっと僕に付きまとっている不安だ。
 
『だからさ。愛里ちゃんのことはきっぱり諦めて、ウチに乗り換えなさいって!』

 僕は笑って誤魔化した。

「こ、こんにちは……」

 背後から子供の声がした。振り返ると羽沢くんが直ぐ側で立っている。
 セナさんに一言謝って電話を切る。

「こんにちは。どうしたのかな?」

 青い瞳の男の子は見るからに硬直していて、そうとう僕にビビっている。
 そもそも羽沢くんが話しかけてきたことはない。
 羽沢くんと会話したのは、スーパーで注意した……、『愛里と手を繋ぐな』と厳しく言った、たぶんそれくらいだ。
 その後、逃げるようにスーパーを出ていったな。僕を嫌っているはずだから、この収録でも近寄って来なかった。

「あの……僕、見たんです」

 見た。何を?
 
「掃除道具の部屋で……、あいりんと月光さんを……その……。いい、いけない事だと思います」

 見られていたのかっ!

「あいりんが何も知らないからって、……無理やりあんなことをさせるなんて。
 それに、スタッフがいないときに、月光さんのスカートの中に手を入れているのも知っています」

 おいおいおいおい。この子勘違いしているぞっ!!

「違うんだって、あのなあ……」

「そ、それ以上近寄らないでくださいっ!! 僕は男ですからっ!」

 羽沢くんは自身の身体を抱き、後ずさった。疑いの眼だ
 僕が男の子にもイタズラする変態だと思っていやがる。

「二度と、僕の友だちにイタズラしないって誓って下さいっ!」

「うーん。困ったなあ……勘違いなんだって」

「ウソだーっ! ウソ言っているっ!」

「あのね、お兄ちゃんはな、愛里ちゃんや優花ちゃんに――」

「だから、近寄らないでって!」

「あー、はいはい……」

 うーん。
 ほんと、困ったぞ。
 だけど周囲には誰もいない。
 ここはちゃんと羽沢くんに、いかに愛里と優花ちゃんがエロ積極的だという事実を知ってもらうしかない。
 羽沢くんだってセミ部屋を見ていて、愛里の感性だって理解しているわけで、説明すれば納得してくれるはずだ。

 しかし――。

 突如、羽沢くんはズボンと一緒にパンツをずり下げ、竹の子の里が生えているだけの状態で言ったのだった。

「イタズラしないって、誓って下さいっ!」
 
「はあ?」

「さもないと、大声で叫びます。人を呼びます。
 坂本氷魔さんが無理やり僕のおちんちんを触ろうとしたって!」

 えええ――――――――っっ!!

「僕があいりんを守るんだ。
 絶対に守るんだから――っ!」

 小さなイケメンはフルチンのまま両拳を握りしめた。

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