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☆なんかモテている
しおりを挟む「えーっ! じゃあ愛里ちゃんと月光さんが坂本氷魔さんのおちんちんを触りたかったってこと?? イタズラされてたんじゃないってこと」
「そだよ。頼んで見せて貰ったんだよ♪」
事実だけど、頼まれて見せる僕も僕だ。
羽沢くんは口をあんぐり開けた。
「……、……なんで?」
「いろいろあってねー。それに進化を知るせっかくのチャンスだったしね」
「はあ……な、なるほど……」
納得していないが、愛里に合わせるのがベストだと考えたのだ。
小学生にしてこの配慮。流石だ、ブラック羽沢くん。
「分かってるよね。誰にも喋らないのよ」
「うん。分かってるよ」
ああ……。小学生にまで借りを作ってしまった僕。うーん。
◆
◆
赤とんぼが似合う季節になった。K大学のキャンパスももみじが彩る。
「きゃ――っ! 坂本氷魔よ。こっわ~いっ♪」
「フランケンそっくり~」
「こっちに来ないでぇ~っ!」
女子大生が黄色い声を上げた。
そう黄色い声だ。イケメン俳優にきゃーきゃー騒ぐときに出すアレだ。
「きゃ――っ♪ こっち見た~~っ! こわぃぃ!」
言葉とは逆に喜んでいるようだけど、本当に怖いんだろうか。
「あっち向いた!」
落ち着いて廊下も歩けない。
僕の出演したサスペンスドラマが放送されてからというもの、僕に対する女の子の態度が急変した。
それは電車に乗っていたり、道を歩いていても同じだった。
女の子たちは僕を見つけると、キモいとか怖いとか言いながらも近寄ってくるし、いろいろ話し掛けてくる。サングラスをしなくても、怖がったり見下した感じじゃなくズバリ好意的なのだ。
といっても、まだ半径1メートル以内に踏み込んでくる強者は居ないけど。それでも人生始まって以来の快挙。テレビの力って凄いなあ。
とにかく、人の顔色を気にせず素顔で堂々と歩ける心地よさはたまらない。
叫ばれない、怖がられない、無視されない、三ない反応をされないだけでも嬉しい。
「やーっ。山柿くぅーん。ねねね、山柿くぅ~~~ん。今夜コンパがあるんだけどねー」
僕を遠巻きで見ているキャンパスの女子たちを縫って、イケメン男子が馴れ馴れしく接近してきた。
入学して早々に入った《触れ合いサークル》ほぼコンパで異性をゲットするのが目的の上級生だ。
「いや、悪いですけど不参加で……」
「ええええええっ!! それは残念だなーっ」
僕が怖顔なものだからコンパの相手女子に敬遠される。だから僕はコンパに誘われなくなりこのサークルと疎遠になっていた。
あれほど、僕に退部して欲しいオーラを出しまくっていたのに。どうだこの変わり様は。
「それでですね、僕、ドラマの収録があって忙しくて、だから《触れ合いサークル》を辞めたいんですけど」
「いや、それは困るよー。エースが抜けられると戦力ガタ落ちじゃん」
誰がエースだよ。
「それに、ほら、山柿くん目当てで、たくさんの女の子が食事をしたいって。話しがしたいって」
サークルの先輩が携帯メールを見せてくれた。
ざっと見ただけでも、20組のコンパ希望が記されている。すべて僕が参加することが条件なのを匂わせていた。
「女の子がお前を待っているんだぞ。ご指名なんだぞ」
「は、はあ……」
俳優坂本氷魔として人気があるとは聞いていたけど、僕をエサに女の子を集めることが出来るってだけで驚きだ。
「この子なんか、キャンキョンのモデルだぞ。この爆乳の子はコンパニオン。このスレンダーな子はキャビンアテンダントだぞ」
僕の名前を出してS級女子とのコンパを取り決めよう、あわよくば芸能関係の女の子をゲットしようなどと考えているわけだ。
「それに、この子を見てみろよ。この前のコンパで知り合ったんだけど、どうどう、超可愛いくねーか。個人的にお前とお付き合いしたいんだって。お前の事が好きで好きで、ぜひ会わせてくれって頼まれたよー、ホント」
顔だけの写メを見せてくれた。
先輩が羨ましいぜ、と言うだけあり、アイドルみたいに可愛い。女子高生だろう。
「どうどうどう? これでも辞める気なのかーっ」
先輩が耳打で『実はなこの女の子……、ヤルだけでもOKなんだって。Hだけでもして欲しいんだってよ! ネットで見たお前のアレが頭から離れないそうだ』とニヤニヤしながら言った。
うーん。
そんな事を平気で先輩に言ってしまうこの女子高生が、誰にでも簡単に身体を許す汚い女に見えた。
愛里や優花ちゃん。何も知らない小学生が、僕のアレをアレしたのとはワケが違う。
やっぱり僕は心が純粋な女性が、清く可憐な女の子が良いな。
「なに浮気する気っ?」
突然、横からにゅーっと伸びた手が携帯電話を掴んだ。
「山柿くんにはセナ姉さんがいるじゃないのっ!」
綾部さんだった。
写メを見て「こんなアホ女、セナ姉さんに勝てるわけないじゃない」と鼻で笑い飛ばした。
どこで意気投合したのか知らんが、最近綾部さんはセナさんとラインをやったり、飲みに行ったりと仲が良い。
《岩田告白計画》も僕が何にも行動していないから、セナさんにアイデアを貰ったそうだ。
『流石はセナ姉さんね。素晴らしい作戦ばかりよ』
セナさんらしいH系のアイデアばかりだけど、綾部さんは前向きなのだ。意外に上手くいっているようで、何も知らない岩田が『見ろこれ、綾部がこんなメールしてきた』という添付動画は、綾部さんの過激なハイレグビキニ姿だ。お嬢様がハイレグビキニ?
しかも剣道場でだ。打ち込みをしている。
何でわざわざ練習を水着で?
『……意外と巨乳だ』
理由はこれだった。
竹刀を振るたびに、ぶるんぶるんなのだ。ぼよんぼよんなのだ。
『くだらん、実にくだらん』
と岩田は不満げだが、満更でないことを僕は知っている。
岩田が隠れ巨乳好きと知っているセナさんならではのエロ作戦。綾部さんをここまで大胆にさせた話術も見事だ。
『綾部のヤツ……俺を誘惑しようとしている……。無駄だ』
言い捨てたわりには、何回も再生している。ちゃっかり保存フォルダーに入れているし。
岩田の脳内に綾部さんのぶるんぶるんが定着するのは時間の問題だろう。
因みに現在岩田の携帯待ち受け画像はセナさんと愛里のツーショットだ。
「あっと、これはこれは、綾部トモコさん。カレシちょっと借りてるよ」
綾部さんは入学早々、僕の彼女だと爆弾発言をした。
以来僕と綾部さんは公認の美女と野獣カップル。
学生たちの間では、綾部さんはゲテモノ食いの女で、僕が匠なH技で綾部さんの身体を落した。流石はA∨でバイトしているだけある、と認識されているのだ。
「……山柿くんを誘惑するのは止めてくれないかしら? 迷惑よ」
「やだな。我がサークルは人との触れ合いがモットーです。活動の話しをしていただけですよ」
「どうせエロ活動でしょ」
「エロも重要な触れ合いです。でも、大丈夫綾部さん。カレシは取られたりしませんから。山柿くんはそんな男じゃありません。なあっ!」
なあっ、て先輩に肩を組まれた。
先輩とは数回コンパで一緒しただけで、僕の何を知っているのだ。軽さが嫌だな~。
「……さっきからカレシって言っているけど、山柿くんの正式な彼女は柏樹セナさんですから」
「えっ! 綾部さんは彼女じゃなかった? 自分で宣言したよね、確か」
「あー、そうね……。そうよ。よく知っているわね」
「そりゃもちろん!」
綾部さん、すっかり忘れていたわけね。
「だけど……一応彼女ではあるのだけど……次点かな。セナ姉さんの……、補佐みたいな」
無理やり過ぎるでしょ綾部さん! 彼女の補佐ってなんなんだよ。聞いたことないぞ。
「えーっ!! それってセフレってやつ?」
先輩は呆れるどころか、感心しているし。
「ご想像にお任せするわ」
綾部さん否定してっ!
『すげーなお前。離れられないってヤツ?』(ヒソヒソ)
『違う違うっ、絶対に違うっ!』(ヒソヒソ)
「本命の彼女のセナ姉さんって……、……柏樹セナって……A∨女優でいますよね。同姓同名かな」
「そのA∨女優のセナさんよ!」
先輩が絶句した。
僕をまじまじと見る。
「……お前、……お前……」
「な、なんだよ」
「A∨女優すら虜にしてんの?」
「アホかっ!」
「確かに並外れた大きさのアレだけど……。そっかー。あれくらいあれば、プロでも落ちるんだ」
「落としてない、落としてない!」
「まさか、山柿くん。セナ姉さんとそんな関係だったのっ??」
綾部さんまで、どうした。
セナさんから聞いて知っているでしょうに!
「なあ、今度女の子連れていくから技術指導してくんない?」
チェリー君の僕にかっ?
「いやいやいや。そんなんじゃないから、僕!」
「まあまあ、謙遜してー」
「いやいや、ほんとにー」
「お二人とも女性を前にしてエロ話しは失礼じゃない? はい携帯を返すわ」
軽蔑している綾部さんは、僕の脇をガシッとホールドしてから僕をズルズル連行するのだった。
「おーい、山柿くぅーん。コンパの件、よろしくね~」
「だから、不参加ですってーっ!」
◆
「山柿くん。ちょっと人気が出たくらいでニヤニヤしないのっ!」
「ニヤニヤしてないですって」
「分かりにくいのよ山柿くんの顔はっ!」
「はあ、すいません……」
ぱっつん前髪を揺らす美少女の視線は厳しい。
「あの……、どこまで行くんでしょうか?」
「何処か静かな場所で、話したいことがあるのだけど……」
周囲の女子大生たちが僕らを嘲笑しているし。
『山柿くんが、いい男に見えるのは不思議よねー』(ヒソヒソ)
『あんまり怖く見えないわ。外国人にいてそうよね』(ヒソヒソ)
『ってことは、綾部さんには先見の明があったというわけね』(ヒソヒソ)
『でも凄い顔してこっち見ているわ。ヒステリーよあの顔。彼氏が浮気しそうなんで不安なんだわ』(ヒソヒソ)
『けっこう独占欲強いのね』(ヒソヒソ)
「ちょっと、そこの人っ!! 私は不安なんかじゃないわ!」
立ち止まって綾部さんが鬼のような顔をしている。
『ンまあー。地獄耳なんだわ』(ヒソヒソ)
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