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☆マークⅢのまま収録
しおりを挟む翌朝。
今日はサスペンスドラマ第5話目の収録予定日だ。
ミッチェルさんは、もう目覚めているころだろう。
愛里の様子を電話で訊ねたら、まだ監督を避けているという。
つまり別人格のマークⅢのままだということ。
試しにミッチェルさんが僕の画像を見せたら急に嫌な顔をして『意地悪止めて下さい』と怒られたそうだ。
元に戻っているかと期待したんだけど現実は甘かった。
『愛里チャンは監督カラ『おはよう』と言われてもデスネ、小さく『……おはよう……ございます……』と目を伏せ仕方なく返すダケデ、朝食も、監督が出かけた後にワタクシと一緒に食べマシタヨ』
一方監督は一人で普段と変わりなく朝食をとり、娘の話題は無し。
まさか、このまま愛里に仕事をさせるのだろうか。
不思議に思ったミッチェルさんが『愛里チャンを治療に専念させるのデスか?』と訊ねたところ、
『ああ、考えてはいるが、今は無いな』
と軽く返事をしただけ。一足先にスタジオに向かったという。
監督がさっぱり理解できない。
昨日医師に、『愛里には心穏やかな普通の生活をさせるべき。治療は時間がかかり、診察とカウンセリングは定期的に行うこと』と言われたばかりじゃないか。
愛里マークⅡがスタンガンで気絶して消えた後に今の人格マークⅢが出たと考えれば、もう丸々30時間以上も交代人格マークⅢが愛里を支配していることになる。
監督は分かっているのか?
自体は深刻だ。早く専門医に治療を始めてもらうべきだ。
それにマークⅢのあの性格だったら、撮影スタッフにいつもの愛里じゃないって、おかしいって噂になる。
今日のロケでスタッフにミキちゃん役(現在愛里が演じている役)の交代を告げ、愛里の長期休暇を発表をするべきだ。
元々ミキちゃんは殺された姉に悲しむ視聴者のお涙頂戴キャラで、それはもう4話までに十分すぎるほどのシーンが撮られている。
この5話目で『ミキちゃんも犯人に殺害された』とキャラに言わせ退場させたって、シナリオ上ではなんら問題はないじゃないか。
◆
◆
5話目の撮影がロケ地で始まろうとしていた。
下校中のミキちゃん(愛里)を犯人(僕)が言葉巧みに車内に連れ込み、ガムテープで拘束するシーンだ。
監督は折りたたみの椅子に座って各スタッフに指示をだしていた。
「監督……大事な話しがあるのですが……」
監督は僕を見もせずスタッフと会話している。
いや、手の平を僕に向けたので、待てのサインだ。
スタッフが気を利かせて会話を止めてくれた。重々しい空気が流れた。
「なんだ坂本。二日酔いで頭が痛いのか? それともあいりんを本当にレイプしたいのか?」
僕のロリコン疑惑をネタにした監督は、ドッと笑ったスタッフに満足気だ。
下半身すっぽんぽんの小学生(愛里)を、ゾウさん鼻を元気にさせた僕が抱っこしているショットがネットに公開され、僕はロリコンの烙印を押された。つい最近は、月光優花ちゃんが記者に『坂本さまに、愛を貰っちゃったの』と爆弾発言をして、益々ロリコン疑惑は加速している。
だから、だからどうした――。
僕だけは一言も話さず騒ぎが静まるのを待った。
やがてヘラヘラしていた役者さんたちが、僕の意気込みを悟ったのだろう口を閉じて注目した。
監督。
僕が何を言いたいのか――もう分かっていますよね。
「坂本よ」
「はい……」
「どうなるか承知の上だろうな」
監督が秋空を見上げる。
週刊誌の記者がいるこの大勢の場で――。
愛里を、愛里の長期休暇をお願いすればどうなるのか。
あいりんは病気なのか? ドラマの収録はどうなる? トキメキTVは? ブレイク中なのにわざわざ?
僕の一言ですべてがひっくり返る。終わってしまう。
もちろん、そのつもりだったのだけど、僕が終止符を打っていいのか。
肉親でもない赤の他人の僕が――。
皆んなから刺さる視線が痛い。まるで怖顔を批判されているみたいだ。
「これから撮影だ。忙しくなる。昼休憩の時ではダメか? 込み入った話しなら、人払いもするぞ」
監督が少しだけ歯を見せて笑った。
動揺を見抜かれている。
助け舟に乗らないのか、と言われと同じ。
「返事もできないのか、坂本。よほど深刻な話しのようだな。よしよし。今夜個人的に悩みを聞いてやろう」
周囲がざわつき始めた。
収録が始まる。周囲がバタバタ動き、僕も配置につかざるおえない。
僕って、なんてダメな男なんだろうか……。
綾部さんはあんなに強くて信念があるのに、結局なにも言えないじゃないか僕は。
今夜こそ今夜こそだ。
スタッフの間では、僕がロリコン騒ぎで相当悩んでいる――、そう噂された。
◆
◆
収録中、愛里マークⅢはミキちゃん役をこなせるだろうか。これも不安の一つだった。
いままでの愛里だと(ここでいう愛里は本来の愛里のこと)マークⅡが発動している時の記憶はなかった。
それはつまり愛里が体験した記憶と別人格(交代人格)が体験した記憶は別々だということ。同じ身体が経験したことであっても人格が違うと共有はしないということだ。
交代人格がやらかした破壊行為を愛里が覚えてないのと同じように、交代人格もまた愛里(本来の愛里)の経験したことを知らないはずだ。
と考えれば、マークⅢは愛里の知識やスキルは持っていない。眠っていたと同じなのだから。
いきなり出てきた人格に何ができるというのだ。
演技の経験はゼロだし、台本を覚えているわけないだろうし、そもそもスタッフとは初顔合わせになるはず。
緊張のあまりタジタジしてボロが出るんじゃないだろうか。
まあ、それくらいで終わってくれれば、むしろ良い。
心配なのは、緊張からくる人格交代の加速だ。心穏やかにするべきが真逆じゃないか。
愛里の症状がひどくなりはしないだろうか。
愛里の様子を見守っていたら、意外なことに、実に見事にミキちゃん役を演じ切った。
それどころか、犯人役の僕が身体に触れても台本通りの演技をしたし、打ち合わせの時もスタッフに笑顔を振りまき、嫌いなはずの監督にも『ママー♪』と甘えていて、誰が見ても今まで通りの元気な愛里だった。
どうなっている? もしかして収録の最中にマークⅢが引っ込んで、元の愛里に戻ったのか?
僕は愛里の監視役のミッチェルさんにこっそり訊ねた。
ミッチェルさん曰く、午前中愛里は誰にでもニコニコだったという。
しかし、楽屋裏とか、とにかくスタッフがいないところ、人の目が無い場所で監督と一緒なると露骨に嫌な顔をし、ふてくされた態度になるというのだ。
マークⅢに訊ねたら、『ママと兄さんと山柿さんは大嫌いだけど、お仕事きっちりするよ。皆んなに迷惑かけたくないの』と言ったそうだ。
驚いた。
この愛里みたいな妖精は、マークⅢのままってことになる。さっき演技したのは別人格なんだ。
でも、どうしてできた。完全に本物の愛里(基本人格)の演技をコピーし、しかも、スタッフを知ってたような対応をだ。
普通は無理だ。別人格なのだから。
スタッフの記憶も実際の演技も、すべて本物の愛里(基本人格)が体験したのだから。
これは僕の推測だけど……、もしかしたら、マークⅢは本物の愛里(基本人格)越しにずっと状況を見ていたのではないだろうか。
愛里の内面から、心の奥底から、愛里の五感を通して愛里の経験したことを、愛里と同じように擬似体験していたからできた。
いつからなのか……、愛里がトキメキTVを始めた頃から、いやもっと前なのかもしれない……。
そう考えれば今日のマークⅢの見事な演技も説明がつくし、始めて会うスタッフに物怖じしないのも頷ける。
僕を嫌うのも、あのトイレ事件からの諸々の出来事を愛里の中から客観的に見ていた。
普通の感性を持った人格ならば、僕を嫌って当たり前だろう。
そして、もう一つ。
母親を愛している風を装いながら、人の目が無いと態度を変えるのは、自分が交代人格だとスタッフに知られたくない、隠しておきたいということ。知られるとマークⅢにとってマズいのだ。
本当にマズいのかどうかは分からないけど、少なくともマークⅢは悪い展開になると考えているということになる。
愛里が他人からどう見られるか、多重人格者、それとも変人? とにかく愛里の置かれる立場、自分が宿っている身体(愛里)の環境の良し悪しが、そのまま自分にも影響すると考えているのだ。
だからマークⅢは、嫌いな母親でも我慢して愛想よくした。
我慢。
そう僕がもう一つ意外だと感じたのは、この我慢だ。
当初、僕はマークⅢを嫌いな者は嫌い、好きな者は好き、2~3歳児がストレートな表現をするアレと同じ程度の精神年齢だと、マークⅡが怒りにまかせて暴走するのと同じだと捉えていた。
なにせ愛里から出てきたばかりの人格なわけで、今まで対人関係を経験していないのだから。
だけど実際は違った。
マークⅢは大嫌いな母親に愛想よくする苦痛と、多重人格をさらけ出した後の状態とを天秤にかけ、ちゃんと損得を考えた上で前者を、我慢を選んだのだ。
嫌いな人間でも我慢する。
子供が親に諭されて、しぶしぶ勉強する我慢とはわけが違う。
マークⅢは単にマークⅡの大人しいバージョンではない。そんなシンプルなものじゃなく、愛里と同年代の、もしかしたら愛里より年上の精神年齢に近い。
でもどうして別人格でありながら、こんなにしっかりしているんだ?
おかしいだろう。
だってマークⅢが愛里の疑似体験をしていたと仮定しても、今まで実際に会話したり、行動していたのは今までの愛里だ。
愛里自身が思い、考え、動いた経験からコミニュケーションは培われ、そこで精神も性格も鍛えられて成長していくわけで、だけど、どうしてだろう。傍から見ていただけの別人格が、こんなに高い精神年齢になるとはとても思えなかった。
午前中の収録が終わり、昼休み。
愛里は支給されたお弁当をミッチェルさんとニコニコ食べていた。岩田監督も近くにいる。
スタッフの前だとマークⅢはいつも通りの愛里を振る舞うわけで、だったら、いまここで僕が側に行っても嫌がらないだろう。
心を開いてはくれないだろうけど、マークⅢと話しができるじゃないか。
監督や岩田、そして僕を嫌っている理由が分かるかもしれない。
よし。
弁当を持って愛里の側まで行った。
しかし――、しかし理想通りにはいかない。愛里は露骨に顔を曇らせた。
僕は例外のようだ。
やがてゆっくりと立ち上がり、離れていくのかと思ったら何故か近寄ってくる。
「…………」
小さな声だった。誰にも聞こえないように呟き、食べかけの弁当を持ってトコトコ逃げてしまった。
僕は一歩も動けない。
ミッチェルさんが気の毒そうな顔を僕に向けただけで、直ぐに愛里を追った。交代人格をひとりにはできない。
スタッフがクスクスクスと嘲笑している。
僕が――、ロリコン疑惑のフランケンが、愛里(ロリータ)にフラレたショックで呆然と立ち尽くしているぞ。フラレて当たり前だろうが。なんて思われているのだろうが、実際のところ、僕はそんな次元で呆然としているのではなかった。
そもそも呆然ではなくて、ゾッとしていた。言った時の愛里の一瞬の表情に、背中が凍りついていたのだ。
フッと広角を吊り上げ、上目づかいでじっとりと笑う。
恐怖映画でよくあるシーン。長い黒髪の女性が、少し歯を覗かせ、怨念めいた笑みを浮かべる、あれと同じだった。
わざわざ側までやってきたのは、表情をスタッフに見られないよう、僕にだけ意図的に伝えるためだ。
さっき何を言ったのか――。
「愛里は戻らないよ」
小学生の愛里の顔をした悪魔が、ほくそ笑んだ。
僕の表情の変化を見て楽しんだのだ。
自分のセリフで大男が狼狽するさまが面白かったのだ。
◆
◆
「おい!」
「……」
「おい、坂本氷魔!」
袖を強く引っ張られ、見たらブラック羽沢くんだった。
はやく愛里を治療させないと――、そんなことばかり考えていて分からなかった。
「坂本氷魔さん、だろ? 呼び捨ては良くないぞ、羽沢くん。お兄さんは年上なんだから」
しかしこの子、口を尖らして、なにが気に入らないんだ?
「あいりんにしただろ、何か。坂本氷魔」
いつのどれを指しているんだろうか。
数えるほどあることが、既にマズイんだが。
それに今日は愛里を追いかけては突っぱねられる、おなじみのコントがない。
マークⅢだからだ。羽沢くんなりに感じ取った?
「どうかしたか」
「あいりんが変だ。僕を突き飛ばさないし、いつもみたいに叩かないぞ、ムチで」
「ムチ? 愛里がか」
そんな場面見たこと無いぞ。
「あくしょんばいおれんすの練習だ。知らないのか?」
「知るわけないだろ!」
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「変だな。勇者って坂本氷魔の事だろ」
「だから呼び捨て止めろって」
「あいりん、勇者に教わったって言ってたぞ」
「え……?」
教えた覚えはないけど。それ以前に僕はSMプレイ知らないし。
「愛里ちゃんはなんて言ってたんだ?」
マークⅢだったら、どう返事するんだ?
「叩いたりしないよって。僕みたいなカッコイイ男の子はって。おかしいだろ。僕を褒めてんだぞ、あいりんが。だから何かしただろ、坂本氷魔」
マークⅢは羽沢くんを素敵に思えるんだ。
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