SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
4 / 182
1章

キキン王国の魚屋さん

しおりを挟む
 キキン王国。

 ここがそう呼ばれ、俺のいるのがキキン王国の首都と分かった。
 さっそく衣類を売る店を発見。
 好きな服はなかったけど、一般人と似た服を買って着ましたよ。

 魚屋さんはどこかな。
 この世界もいちおう商店が集まった通りはあるけど、スーパーみたいに商店が集合した店舗はなく、肉屋さん、惣菜屋さん、花屋さん、と個々が独立してお店を開いているね。
 
 ついに魚屋さんを発見したよ。
 横幅奥行きとも10メーター程度(30坪)の小さな店舗だな。
 
 この世界独特の魚が品揃えされていると思ったんだけど、普通のアジやイワシ、サバといった日本で見慣れた魚を中心に売られていた。
 もちろん見たことがないカラフルな魚もあるけど、魚の姿は俺の知る魚の形をしていた。

 だけど、どうなのこれ。
 見た瞬間、唖然としたね。

 魚をザルに盛って売るのも、バラ売りも、袋に入れて売るのも、全部そのまま板の上に置いている。
 魚が陽の光を浴びているんだけど……。

 冷やさないわけ?
 いくら今日獲れても、鮮度が直ぐにガタ落ちだよ。

 ほら、この鯛なんか、カリカリに干からびて、相当擦らないと鱗が取れない。
 氷を作る技術が無い国かもしれないけど。

 ――あるじゃん!
 
 奥の調理場で店主がかき氷を食っていましたよ。
 その隣りには招き猫みたいなモンスターがいて、

「にゃ~ん♪」

 店主が魚を放り投げると猫がパクッとひと呑みし、少ししてお腹の穴から、ガリガリガリガリと音を立てて氷を出している。

 製氷猫? 
 これって、モンスターと人間の共生ってことかな。
 世界が異なれば魚屋さんの仕事も変わるんだなあ、などと感心していると、若奥さんが来店した。

「へい、ガリガリ、らっしゃい! ガリガリ」

 店主さんよ、かき氷を置いて接客して欲しいなあ。

 お客さんは、さっそく希望の魚を触って鮮度チエックしているね。
 そうそう、魚の頭を持ち垂らした状態で揺らす。
 ブラブラ揺れると最高の鮮度。

 知ってるね、この若奥さん。
 30センチの鯛を店主に渡したよ。 
 
「子供が食べるので、なるべく骨なしでお願いします」
 
「へい! 了解ですっ!」

 さて、この世界の魚屋さんの調理技術を見せてもらおうかな。
 ちなみに俺は、魚屋歴20年の中堅だったよ。

 笑顔で威勢よく調理を始めたのはグッドだけど、その包丁はなに?

 小刀だろそれ。
 普通は出刃包丁か、せめて薄刃包丁だろう。
 しかもサビだらけ、所々刃こぼれしている。

 店主は3枚おろしにしているみたいだけど、グチャグチャに身が割れ、刺し身でも食べれそうな鯛が、雑巾のように仕上がってゆくのには、思わず顔を背けたね。

 店主は平然と出来上がったらしい鯛を袋に入れ、お客さんに渡しているよ。

 こいつ魚屋か?
 どこで教わった?
 わざとか?
 いや、ならもっと悪い! 
 くそったれがッ!

 おっと、興奮してしまったね。
 いけない、いけない。
 
「……鯛が泣いている」

「なにッ?」

 店主が鬼のような顔をして俺に向いた。 
 思わず口に出てしまった。いけないいけない。

「鯛が泣いているたあ、どういうわけだ! お前さっきからジロジロ見やがって、買わねえならさっさと消えろッ!」

 店主が乱暴にまな板の錆びた小刀を握った。
 若奥さんは完全にビビッてしまい小さくなっている。

「……凄いな、この世界……」

 こんな店が生き残れるとは、開いた口がふさがらないね。
 日本だったら、とっくの昔に廃業しているよ。

「お客さんは、骨無しを希望しただろ?」

「そうだ!」

「で、それか? その有り様か? わざわざミンチにしたのか。てか骨はしっかり残っているぞ、その鯛に」

「あたり前だ。完全に取るなんざあ、不可能だろ!」

「不可能?」

 この世界の魚屋さん全てが、そう考えているとは思えない。
 思いたくない。

 多くの魚屋さんが、この世界の魚屋さんが美味しい魚を、その美味しさのままお客さんに渡したい、食べてもらいたい、そう願っているはず。

 それは異世界だろうと何処だろうと、魚屋で飯を食っている者なら変わらない。変わってはいけないんだよ。

「そりゃ、お前のテクニックと知識がないだけだろ!」

 鯛の身がボロボロになっても、平気でいられるこの店主に問題があるんだ。
 
「……ほう……」

 苛立ちを隠せない店主は、鯛を1匹掴んでまな板の上に乗せた。
 買ったお客さんは、ビクビクしながら様子を伺っているよ。

「ヤッてみせろよ、クソが! そこまで言うなら、お前が骨なし魚にしてみろよ! ミンチじゃなくな!」

  

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...