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1章
決断
しおりを挟む「軍服は借りた?」
「……そうです。今から返しに行こうかと」
呆れているよ。アハートさん。
不自然だよなあ。
「……わ、わかりました」
え?
「ヒジカタさまには、弟が剣の作成でお世話になっていますし、そう思うことにしますわ」
「あ、ありがとうアハートさん!」
「二度となさらないでください」
「も、もちろんです」
「それに、先ほどの……、わ、わいせつ行為も、私の胸でとどめておきますので……」
胸でとどめる。
つい、大っきな胸に眼がいってしまい、『どこを観察なさっているのですかッ!』と反対のほっぺもビンタされたよ。
「いいから、早く内区から出てください」
◆
その日の深夜。
『未知の生物だって、お兄ちゃん?!』
『手首を切断し、心臓を一突き……。見えたか』
『ううん、ぜんぜん』
『俺もだ。目前の同胞が、どう殺されたのか……。倒れたから起こすと死んでいた』
アハートさんに『出てください』と言われたけど、帰ると見せかけ別人に変身し監視したよ。
でも、建物から誰も出てこない。
普通なら、仲間を殺した犯人を探さないか?
少なくても、俺の仕業だとはバレてないはず。
アハートさんが殺った? ……いや、人間技じゃないから。
でも、現場にいたのはアハートさん。
心配だったから、尾行していて、気がついたらロダン家(アハートさんの自宅)――現在は居間の天井裏に潜伏していたよ。
ストーカーって言わないでよね。
ファーストとアリシアに化けたサキュバット2匹が会話をしている。
アハートさんは自分の部屋でスヤスヤ熟睡中だよ。
『見えない速度で動く生物の仕業ってわけ?』
『そうとしか説明がつかない』
『ありえないなあ。あたしの知るモンスターには、いないよ』
『だから未知の生物だって言っただろ。アハートと会話をしていた、そいが犯人だ。人間に化け、潜伏してやがる』
『でもねえ。……あ! たしか洞窟の先輩たちが、速いスライムを7匹見かけたって』
『速いスライム?』
『見えないほどじゃないけど、スライムにしては異常に動きが俊敏だって』
『この世界。未知の生物が数多く存在するらしい。あのヒジカタも「体内で物を加工する」能力のモンスターだ』
『製氷猫の系統じゃないの』
『そうかもな。どうせ共存でしか生きれない種だろう。俊敏スライムの件は、ツェーンで訊くか』
ツェーン?
そうだった。
明日、自衛軍がツェーン迷宮に挑む日だ。
……うん。
これ以上被害を出さないため。
殺された185名の弔い。
害虫駆除にちょうどいいかもね。
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