1 / 2
石碑の女神と魔の君主
しおりを挟む
その人は美しい緋色の髪を靡かせていた。
燃え盛る炎の煽られ、金色の豊かな光沢が彼女の髪を飾り立てる。
美しい瞳が、俺を見下ろしていた。
俺と彼女とが起した戦果の炎が、澄んだ緑の瞳をこの上無く美しく輝かせる。
何度彼女の涙を拭っただろうか、この指で。
何度彼女に触れただろうか、この唇で。
何度、何度、何度。
彼女と俺が共に過ごした日々を、思い出を、反芻する。
今は彼女に届く指も唇もないけれど、どうか彼女のために祈らせて欲しい。彼女が幸せであるように。
見上げた先にある緑色の瞳が涙を溢した。彼女の眼差しに似て清い剣の切っ先が、俺の心臓へと振り下ろされる。
瞬間、俺の意識はそこで途切れた。
※
石碑は静かにそこに佇んでいた。
刻まれているのは、この土地の歴史だ。
10年前に起こった大最悪により土地は腐り、木々は枯れた。
原因となった男…後に魔の君主と呼ばれた者を打ち倒した一人の女神は、その戦いの末に命を使い果たし、この場で倒れたのだった。
その女神を讃える石碑に、みんなが花を手向けて祈りを捧げる。
「女神様、ありがとうございました」
「女神様、どうぞ見守っていてください」
「女神様」「女神様」「女神様」
皆が彼女を崇拝していた。
10年前に生まれたばかりだった子供達は、今も元気に笑い合っては、まるで姉に接するように石碑に抱きつき、時にはよじ登っては両親にこっぴどく叱られていた。
石碑が静かに見守るなか、移ろう季節とともに人々は成長し、文化は発展を遂げていく。
そして時は流れ、石碑の周囲の建物は素朴な木から煉瓦へと代わり、人々は信仰も、石碑の存在を忘れ去られていった。
それでも、石碑はぽつねんと、時間を止めたまま佇んでいた。風雨にさらされ風化した文字は今は読むこともできず、苔むした石がそこにあった。
動けない石碑に、意思が宿ったのはその頃からだった。
燃え盛る炎の煽られ、金色の豊かな光沢が彼女の髪を飾り立てる。
美しい瞳が、俺を見下ろしていた。
俺と彼女とが起した戦果の炎が、澄んだ緑の瞳をこの上無く美しく輝かせる。
何度彼女の涙を拭っただろうか、この指で。
何度彼女に触れただろうか、この唇で。
何度、何度、何度。
彼女と俺が共に過ごした日々を、思い出を、反芻する。
今は彼女に届く指も唇もないけれど、どうか彼女のために祈らせて欲しい。彼女が幸せであるように。
見上げた先にある緑色の瞳が涙を溢した。彼女の眼差しに似て清い剣の切っ先が、俺の心臓へと振り下ろされる。
瞬間、俺の意識はそこで途切れた。
※
石碑は静かにそこに佇んでいた。
刻まれているのは、この土地の歴史だ。
10年前に起こった大最悪により土地は腐り、木々は枯れた。
原因となった男…後に魔の君主と呼ばれた者を打ち倒した一人の女神は、その戦いの末に命を使い果たし、この場で倒れたのだった。
その女神を讃える石碑に、みんなが花を手向けて祈りを捧げる。
「女神様、ありがとうございました」
「女神様、どうぞ見守っていてください」
「女神様」「女神様」「女神様」
皆が彼女を崇拝していた。
10年前に生まれたばかりだった子供達は、今も元気に笑い合っては、まるで姉に接するように石碑に抱きつき、時にはよじ登っては両親にこっぴどく叱られていた。
石碑が静かに見守るなか、移ろう季節とともに人々は成長し、文化は発展を遂げていく。
そして時は流れ、石碑の周囲の建物は素朴な木から煉瓦へと代わり、人々は信仰も、石碑の存在を忘れ去られていった。
それでも、石碑はぽつねんと、時間を止めたまま佇んでいた。風雨にさらされ風化した文字は今は読むこともできず、苔むした石がそこにあった。
動けない石碑に、意思が宿ったのはその頃からだった。
0
あなたにおすすめの小説
美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
駄犬の話
毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。
不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。
もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。
※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる