転生して白髪オッドアイ女神みたいな姿に生まれ変わった俺の王道異世界冒険譚

Wisely

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仲間との邂逅編

勇者メイ

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大学受験の前日にトラックに轢かれ死んでしまった、普通の高校3年生の俺、白石柊。精神体となって、光のトンネルをくぐり辿り着いた先は、なんと異世界だった!しかも俺の姿は、美少女へと変貌していたのだ。ってか自分で言うのも恥ずかしい。
魔女のアイルズ・トレシアと出会った俺は、彼女から"チェブリック"という名をもらったがしっくり来ず、自ら"メイ"という名を考案し、チェブリックを姓とした。よって、俺は白石柊改め、『メイ・チェブリック』へと生まれ変わったのである。




てか何度聴いてもこの声落ち着かないな……




─────────────────────

「ギャアー!!」
「何者だ!?」
「あれは…!」
「エーテルドラゴン…!」

トレシアが口にしたのは、『エーテルドラゴン』という謎の名前。

「エーテルドラゴン?」
「あそこに森が見えるでしょ?あの森はエーテル森林と言って、ここよりもっと狂暴なモンスターが出没する危険地帯なの。そこに生息する固有種で、あそこを牛耳る存在こそが、エーテルドラゴンよ」

トレシアがそう説明する間にも、ドラゴンは咆哮を上げて威嚇してくる。

「でも、何故ここまで降りてきたの!?」
「グアー!!」

雄叫びを上げたエーテルドラゴンの放った熱線から、間一髪避けた俺とトレシア。俺たちがいたそこは黒焦げになってしまっている。

「あの熱線を食らったらひとたまりもないわ!あなたは離れてて!」

俺は言われるがまま遠ざかる。するとトレシアは脇腹に携えていた魔法の杖を手に構えた。

光速雷ソニックサンダー!」

トレシアがそう叫んだ瞬間、目にも留まらぬ速さで、雷がドラゴンの翼に落ちた。

「グオー!!」

効いてる!というかすげえ、本物の魔法だ。テレビで見た事あるけど、こんな間近に見た奴俺だけなんじゃないかと思う。
実はこう見えて、魔法が好きだったりした俺。賢者の石とか死の秘宝はきっちり網羅してたりして。

「グアー!」

エーテルドラゴンも、負けじと熱線を吐く。

魔導防御メイジディフェンド!」

そう叫ぶとトレシアの周りに不思議なバリアが張り巡らされ、熱線を弾く。
その様子に俺は思わず感嘆した。しかし、トレシアが優勢だった戦況は、一気に傾くこととなる。

「グアアッ!!」
「きゃあ!」

!?

一体何が起こったのだ。そう考えてる間にも、トレシアは一気に追い詰められていく。エーテルドラゴンは、雷により翼を損傷したため、空からの攻撃は不可能。熱線に至っても、バリアで簡単に防げるはずだ。しかし、今のこの光景は何事か。バリアを張る暇もないほど、トレシアは目の前の攻撃をいなすのに必死である。

「トレシア!!…なんだ?」

俺はとある一つの違和感に気づいた。それは、『再生』である。よく見ると、ボロボロになっていたはずの翼は綺麗さっぱり傷が癒えている。つまりエーテルドラゴンは、再生能力を備えているということが推測できるのだ。だが、トレシアがこの特性を把握していないとも思えなかった。
そんな事を考えてると、トレシアが地べたに膝をつけ、彼女の肺がなんとか酸素を取り入れようとしているために呼吸が浅くなっている。

「トレシア、一体何が起こったんだ?」
「私にも、何が何だか…」

なるほど。上から4番目の成績を誇る魔女さえも、奴の特性は知り得なかったという訳か。しかし、トレシアは恐らくモンスターと沢山戦ってきているのだろうが、この特性については知らなかった。エーテルドラゴンが降りてくるということは、それほど稀有な状況であることを物語っている。

「あいつの翼の傷が癒えてる。もしかしなくても、再生能力を持ってると思う」
「再生能力?」

手の内を知られたエーテルドラゴンは、その鋭く危険な牙をのぞかせ、こちらを威嚇してくる。このままでは熱線攻撃を受けてしまう。何とかして対抗策を練らなければ。そうして俺の頭脳は回り始めた。…その時、俺の中で何かが目覚めたような感覚に襲われ、俺の意識は深淵へと落ちていった。

「……」
「メイ?」

トレシアがそんな俺を見て名を呼ぶ。すると俺の体は勝手に動き始めた。突如トレシアの前に立ち塞がり、虚ろな目で相手を見つめている。その目は、両眼ともに左眼と同様の梔子くちなし色へと変化していた。

「グゥ…」

俺の体は右腕を前に差し出し、その人差し指を2回、クイックイッと動かした。挑発である。

「グオオー!!」

エーテルドラゴンは熱線を吐くが、それは左の掌を以て相殺される。炎を完全に消し去った俺の顔は、穏やかに不敵な笑みを浮かべている。

「あなた、何をしたの…?」

トレシアの問いかけにも、黙り込んで何も反応しないまま。本当にどうしちまったんだ俺の体。

衝撃インパクト
「グゥアァー!!!」

俺の口から言葉が勝手に発される。そして力が抜けてへなっていた右の掌が力強く開かれ、そこから謎の衝撃波が放たれた。それを受けたエーテルドラゴンは、荒々しい断末魔をあげながら粒子となって霧散してしまった。予め伝えることとして、全て、俺の本来の意思とは反した行動であることをお忘れなく。

「エーテルドラゴンが、消えた……」
「……」
「メイ、あなたは一体、何者なの…?」

やっと俺本来の意識が表に出てきた。ったく、勝手に俺を操った奴を見つけたら説教してやろうと思う。

「メイ?メイなのね!」
「おお、そうだよ」

トレシアはホッとした顔でこちらを見ている。よっぽど俺が心配だったのか、ドラゴンにビビったかどっちかだが、この場合は前者であろう。

「それにしても、今の攻撃は何なの?」
「いや、それが俺にもさっぱりなんだよ。でも、突然俺の中で何かが目覚めたような感覚がしたのは鮮明に覚えてる」

こう言ってはみたものの、本当にそれだけしか分からない。一体何の前触れでこのような事が起きたのか。真相は闇の中である。

「まあ、俺もこれがあれば戦えるのかな…?」
「あなたの様子から察するに、あれはあまりにも突然の事だったのでしょ?ならば、この先も再び起こることは間違いなさそうね。これが最初で最後というのも考えにくい」

これがあればぶっちゃけ魔王すら滅ぼせそうだが、いかんせん自分の意思で発動できないのがネックなんだよな。まあでも、これを自由に使えてしまうと面白くない気がするので、時の運に身を委ねることにしたのだった。

「さて、ドラゴンも倒せたし…って、どこに行こう?」

俺はどこかに行く予定を立てたものの、この世界の土地勘などあるはずがないので、いきなり壁にぶち当たった。

「まず、あなたの装備を揃えましょう。その格好じゃモンスターに食い殺されて終わりよ。この近くにいい武器を揃えてる国があるわ。それと、もしあなたに戦う意志があるのなら、武具も一緒にね」

装備か。今のこの格好は動きやすいからいいけれども、かえってモンスターの格好の的になっている。俺はどこに行くのか尋ねてみた。その回答は、

「民主国家、ウェルゼシアよ」








"民主国家ウェルゼシア"。
トレシアが言うには、大陸最大の民主主義国家で、この草原を抜けた先にあるという。なんでも工業が盛んであり、東側に望む海を貿易港として、大陸各国に工業製品等を輸出しているという。
日本で言う愛知県とかにあてはまるのか。しかし、どんな国なのだろう。俺の心は少しばかりか弾んでいた。

「はぁ、はぁ、遠くないですか?」

だが俺のHPは半分を切っていた。俺は勉強には自信があったものの、運動に関しては中の下くらいの体力なので、こんな広大な草原で疲れない訳が無いのだ。

「何言ってるの、もうあと少しなんだから。それに、ここは大陸で考えたら狭い方よ」

なんて事を言うんだこの女は。少しは俺の体を労わってくれ。というか大陸で考えちゃいかんだろ。そりゃあ狭いよ!
心の中で文句を言っていると、俺たちは目的地に到着していた。

「着いたわ」

そう、ウェルゼシアの検問口である。門番が2人、厳重警備体制をとっているが、その奥には果てしなく続く市街地が確認できる。よく見ると煙突や、煙が立ち昇っている。工業国とは聞いたが、まさかここまでとは。俺は目の前の景色に目を奪われ、トレシアが先を急いだことに気づかなかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」



検問を抜けた後、俺たちは馬車に乗り、首都・カディフールまで向かった。どうやら装備屋はそこにあるという。到着し、歩きながら辺りをキョロキョロ確認する。市街地はとても近代感溢れる、モダンな街並み。家はレンガ造りになっている。やはり工業で火を用いるので、住宅が燃えないように造ってあるのだ。こうした知恵を見つけるのも楽しい。

「私が贔屓にしてる装具屋があるの。そこに行きましょう」

トレシアが案内してくれたのは、表札に『GOLAND』と大きく描かれた店だった。店内に入ると、店主が暖かく出迎えてくれた。

「おお、トレシアちゃん!おや、そちらは?」
「連れのメイです」

トレシアに紹介されるなり、俺は軽くお辞儀して挨拶をした。店主は俺のことも大歓迎な様子で、

「この店は好きに使ってくれたまえよ」

と言った。俺まだ1回しか来てないのに常連みたいな扱い方されていいのだろうか。
まあこの心配は杞憂だろうと割り切った俺は、早速装備を見始めた。この店はラインナップが豊富で、どれを買おうか甲乙つけ難い節はある。すると、俺の目にとんでもなくお得な物が入ってきた。

「女神のローブと剣と盾セット、2000ダルク……」

なんと女性用の装備と剣と盾の、3つがワンセットになっている。これ程お得な物はないだろう。だが俺は2000ダルクが日本円で何円か分からない。訊いてみると、『なかなかのお高めだよ!』と言っていたので、大体2万円くらいと仮定する。
しかしここで大きな問題にぶち当たる。俺はこの世界の通貨を持っていないのだ。無一文で転生してきたということで、どうしたものかと考え、俺が出した答えは。

「トレシアごめん、俺お金無いんだ、2000ダルクってある?」

金の借入である。正直貸してくれないかもしれないが、そうなりゃ俺が悪人になって万引k…いや、それは何があっても駄目だな。

「いいわよ。はい、2000ダルク」

なんと普通に貸してくれた。トレシアも金がなくて渋るかなぁと思ったのだが、この展開には一本取られた気分である。

「おっちゃん、これ下さい」
「はいよ。2000ダルク、確かに頂戴したよ」

俺はトレシアから貰った2000ダルクと引き換えに、3点セットを購入した。早速着てみる。思えばこの世界に来て初めての着替えだ。男の時とは勝手が違うので苦戦した。まあ、どんな事に苦戦したのかはご想像にお任せする。

「おお、なかなか似合ってるじゃない」

トレシアに言われたので、俺も姿見を見てみた。するとどうだろう。ローブと剣と盾を装備した美少女が映っているではないか。ちょっと『キャピ☆』みたいなポーズをとって悩殺させようとも思ったが、賢明にやめることにした。

「ありがとうおっちゃん。これでモンスターと戦えるな」
「ええ」

こうして戦う力を手に入れた俺。もう満足したので店を出ようと思ったその時。

キャー!!

女性の悲鳴が響き渡った。それを聞いた瞬間に、俺とトレシアは同時に店の戸を開く。するとそこで目にしたのは、

「ひったくりよー!!誰か捕まえてー!!」

ひったくり犯が足早に逃げる様子だった。俺は追いかけようとしたが、そのスピード。ボルトよりも速いんじゃないかと疑ってしまうほどの俊足だったので、傍観してしまった。すると、

「ヘッ」

ひったくり犯が盗んだバッグを自らの背後に放り投げた。地面に落ちたバッグからは、中身が散乱してしまっている。

「あいつ、ひったくる割には返してくれるんだな」

そう言いながら俺はバッグを拾い、中身を戻した。そしてそれを手に持ち、女性に返そうと思ったその時、

「そこを動くな!!」

野太い男の声が聞こえた。見れば鎧には王宮のものと思われし紋章が刻まれている。あの人たちは王宮戦士と見て間違いない。どうやらひったくり犯を捕まえに来たようだ。

「ああ、ひったくり犯はあそこ…って、いねえ!!」

周囲の目を盗み、ひったくり犯は逐電していた。やられた、と思った。そして次の瞬間、俺が予想だにしなかった展開が襲う。

「てめえがひったくり犯だな!今すぐとっ捕まえてやるから覚悟しておけ!」

そう指を差されて言われたので、俺はその指の先を目で追う。すると、人差し指は完全に俺の方向を指していた。

「え、俺なの?」

さあどうなることやら。



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